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なぜ節約できない?大切なのは面倒くさいのコントロール
なぜ節約できない?大切なのは面倒くさいのコントロール

なぜ節約できない?大切なのは面倒くさいのコントロール

2023/10/22に公開
提供元:雨宮紫苑

よーし、節約するぞ!


そう意気込んだものの、長続きしない。「ちょっとくらいいいや」と気付いたらうやむやになっている。期待したほど貯金が増えずにやる気喪失。


これは、だれもが経験したことがあるんじゃないだろうか(わたしは何度も経験済みだ)。


なんで節約ってこうもうまくいかないんだろう。


改めて考えると、わたしは「節約で大切なこと」を誤解していたかもしれない、と気が付いた。


「出費を減らす」ことはもちろん大事だけど、一番必要なのは、「ラクしようとしないこと」なのだ。


節約で結果を出すポイントは「雑費の削減」

多くの節約術では、節約の第一歩として、家賃や光熱費などの固定費を減らすことを勧めている。もちろん、固定費削減に異存はない。やったほうがいいに決まっている。


しかし固定費の節約はライフスタイルの変更を余儀なくされることも多く、ハードルが高い。


極端な話、「節約のために駅から遠い家にわざわざ引っ越せるか?」と聞かれれば、高確率で答えは「ノー」だろう。わたしには無理だ。


車の維持費を減らすために車を売り、カーシェアリングで生活する……なんていうのも不可能ではないが、実際に実行するのは難しい。


固定費を減らせば節約にはなるとはいえ、「まずやってみよう!」というノリでできないことも多いのだ。


では、節約を思い立ったらどの出費を減らせばいいのか?

そこでわたしは、「細かな雑費の削減」をお勧めしたい。


実際に家計簿をつけてみると、「こんなに外食したっけ?」「いつもよりカード利用額が多いけどなんでだろう?」と首をひねることは少なくない。


普段意識していないからこそ、少し気を付けるだけで、1万円や2万円なんてすぐに浮く。だからお勧めなのだ。


逆に、これができなければ節約はうまくいかない。固定費削減には限界があるし、固定費を減らしたぶん日常生活で出費していたら、なんの意味もないのだから。


なぜパソコンを修理せず、高い新品を買ったのか

しかしこの「雑費削減」、いうのは簡単だがやってみるとなかなか大変である。

なぜなら出費の理由が、「面倒くさい」だからだ。


歩くのが面倒くさいからタクシーを使う。

料理が面倒くさいからコンビニでお弁当を買う。

解約が面倒くさいから、サブスクをそのまま放置する。


日常の出費の多くは、このように「面倒くさい」という感情に起因している。「お金を使ってラクしよう」と考えるから、出費してしまうのだ。


わたし自身、ちょうど先日、「お金を使ってラクをしよう」という経験をした。


ある日突然MacBook Proが壊れ、修理が必要になったときのこと。さっそくAppleの契約店に行くと、なんと修理には600ユーロ近くかかるという。日本円にしたら、約9万5000円だ(1ユーロ=157円計算)。


さすがに高すぎると個人修理店に行ったところ、300ユーロ程度で修理できる見込みとのこと。半額でやってもらえるなんてありがたい。


結果、わたしはどうしたか?

はい、修理せずに新しいノートパソコンを買いました。


いやね、個人修理店は街のはずれの坂道の上にあって、めちゃくちゃ遠いんですよ……。駐車場がないから車では行けないし、ノートパソコンを背負って歩くのは疲れるし……。


しかもその日はアルバイトしかいなくて、別日にもう一度持ち込んで改めて値段の相談、それでOKなら修理をする、でも他の部分が故障していたら追加の修理が必要になるかもしれない、などと言われまして。


うん、面倒くさいね!! もう新しいやつ買っちゃお!!


ということで、新しいノートパソコンを買うことにした。

出費の理由なんて、だいたいこんなものである。

面倒くさいことをお金で解決することで成り立つビジネス

世の中は、「面倒くさいことをお金で解決する」という仕組みで成り立っている。つまり、自分の時間や他人の労力をお金で買うことができるのだ。


家具を注文する際に有料の組み立てオプションをつけたり、その気になれば自力でやれないこともない確定申告を税理士に頼んだり、探せばもっと安いものがありそうだけど店員に勧められるままちょっと高いスーツを買ったり……。


家事代行や退職代行、夏休みの宿題代行のような、代行系のビジネスもまさにその典型だ。


顧客の「面倒くさい」を代わりにやれば利益になるから、「ラクさせるため」のビジネスが無数にある。


「お金を払えばラクできる」ということはつまり、ラクしたいと思っている限り出費は減らない、ともいえる。


節約したいのになぜか出費が減らない……という人は、さまざまな場面で、「面倒くさいからお金を払ってラクしよう」としているんじゃないだろうか。


ちなみにわたしの出費は、「面倒くさいからちょっと外食」「面倒くさいからピザをデリバリー」のように、料理が面倒でお金で解決していることが多かった。いやだって、ラクしたいんだもの……。

範囲を決めて安くラクすることで自制する

「面倒くさい」という感情は誰しもが持っているし、できることならラクをしたいと考えるのは当然のこと。でもその感情をコントロールしないかぎり、出費は減らせない。


「ラクしたい」という気持ちを自制するにはどうしたらいいか?

わたしは主に、3つの方法があると思う。


ひとつめは、「範囲を決めて安くラクする」こと。


いくら節約しようと思っていても、平日は仕事が忙しくてなかなか料理ができないという人もいるだろう。


その人が節約のために毎日自炊しようと決意しても、おそらく長くは続かない。

「節約したい」という気持ちより、「ラクしたい」という気持ちが勝つ確率が高いからだ。


それならば、「週末に業務用スーパーで食材を大量に安く買っておく」のようにできるだけ安くラクする方法を考えたり、「仕事が20時までに終わらなかった日は外食OK」などのルールを決めたうえで、「この出費はしょうがない」と割り切ったほうがいい。


節約のために出費を減らすことは大事だが、続かなくては意味がない。

自分のライフスタイルや性格を踏まえて、「これはどうしても面倒くさい」という部分は、適度にラクしてしまえばいいのだ。


食事のための出費に目をつぶるなら、その他の出費をきちんと抑えてバランスをとればそれで十分。

目標設定して「ラクしたい」という気持ちにブレーキを

面倒くさいという気持ちに打ち勝つ方法の2つ目は、「節約の目標を決めること」だ。


普段生活しているなかで、「ちょっとラクしたいなぁ~」と思うことは多い。

そこで「お金を払って解決しよう」ではなく、「いやいや、節約するんだ!」と踏みとどまるために大事なのは、目標設定だ。


「いつか5キロ痩せたらいいなぁ~」よりも、「みんなと海に行く夏までにマイナス5キロ!」と決めたほうがダイエットがはかどるのと同じである。


1ヶ月で2万円貯金をしたいのなら、2週間で1万円貯金しなくてはいけない。1週間なら5000円だ。そうやって短いスパンで考えると、「今ここでお金を使ったら目標達成できなくなる」というブレーキがかかる。


逆に、目標を早く達成してしまえば、ちょっとした出費も許容範囲。

それくらいの気持ちのほうが、節約の意識が長く続くだろう。


目標管理が面倒くさいなら、毎週月曜日、一定金額の現金をおろせばいい。その現金だけで生活するようにすれば、おのずとお財布のなかの残金を気にするようになる。


わたしはこの方法で、一時期結構節約することができた。

節約をストレスではなく楽しいことだと捉えなおす

最後に大事なのが、「節約を楽しむ工夫をすること」。


食費を浮かすために、外食を控えて自炊するとしよう。


とはいえ、いつもは料理をしない人がいきなり自炊となると、どうしても面倒くさいと思ってしまう。ちょっと疲れた日の帰り道、吸い込まれるように定食屋に行ってしまうかもしれない。


でも、「有名な料理系YouTuberのカルボナーラレシピを食べ比べよう!」と考えたらどうだろう?


気が向いたときにいろんなカルボナーラを作って、自分の「推しレシピ」を見つけられたら、ちょっとは自炊が楽しくならないだろうか?


ルッコラやコリアンダーのように、あまり使わない食材を買ってみるのは?


パンにケチャップを塗ってベーコンとルッコラを乗せるだけでピザ風トーストになるし、コリアンダーを使った本格カレーを冷蔵して3日に分けて食べてもいい。


ただ面倒くさいことを我慢するだけでは、ストレスになってしまう。


でもそのなかに何か楽しみを見出すことができたら、それは「イヤなこと」から「ちょっと楽しみなこと」になる。そうすれば、「面倒くさい」という感情に勝つ確率がぐっと上がるはずだ。


このように、意識的に「面倒くさい」「ラクしたい」という気持ちをコントロールできるようになれば、しぜんと雑費が減って、貯金は増えていくだろう。



雨宮紫苑

ドイツ在住フリーライター。Yahoo!ニュースや東洋経済オンライン、現代ビジネス、ハフィントンポストなどに寄稿。
著書に『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)がある。



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