会社員が働くうえでのうれしいご褒美、それは夏と冬のボーナスです。
会社のために一生懸命働いた人にとっては、とても心待ちにしている大切なお金でしょう。
ただ、これから転職を考えている人にとっては、「ボーナス前に退職するともらえない?」などの心配を抱えているかもしれません。
本記事では会社員のボーナス平均額や主な使い道、退職後のボーナス支給事情などについて解説します。
2024年の春闘では、インフレの影響による生活費の上昇などを理由に労働組合が賃上げやボーナスの増額を強く要求する動きがみられました。
企業側も、優秀な人材の確保や従業員のモチベーション向上を図るため、ボーナスの増額に前向きな姿勢を示し、4月16日までに回答があった企業の賃上げ率を集計すると5%超という結果となりました。
これは1991年以来33年ぶりとなる水準です。*1
特に大手企業を中心に高い賃上げ水準の回答が相次ぎました。
労働者一人当たりの平均賞与額は、2023年冬は395,647円、2024年夏は414,515円となりました。
2024年夏のボーナスは、ボーナス支給額を算定する際に基準となるベース給与引き上げの動きも影響し、3年連続で増加しています。
産業別にみても2024年の夏季賞与は2023年の年末賞与と比較して、一部の業界をのぞきおおむね増加していることがわかります。
出典)厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和6年9月分結果速報等 ≪特別集計≫令和6年夏季賞与(一人平均) 」「毎月勤労統計調査 令和6年2月分結果速報等《特別集計》令和5年年末賞与(一人平均)」を基に作成
年度ごとの平均賞与額を見てみると、2022年以降、ボーナスは上昇基調にあります。
出典)厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和元年~6年夏季賞与の結果」「毎月勤労統計調査 令和元年~5年年末賞与の結果」を基に作成
ボーナスをふやす理由としては、企業の業績回復や従業員のモチベーション維持、物価高騰による従業員の経済的負担の軽減などを挙げています。*2
三菱UFJリサーチ&コンサルティングによると、2024年冬のボーナスは、企業業績の改善と人手不足の深刻化を背景に、夏に続いて増加の見通しを立てており、支給額は前年比+2.5%と予想しています。
経済活動の回復とともに人手不足は深刻となっているため、来年以降も人員確保のためのボーナス増加の流れは続く一方で、十分な引き上げを行えない企業もふえてくる可能性があるとしています。*3
待ちに待ったボーナスを手にしたら、何に使おうかと心を弾ませることでしょう。
ここでは、ボーナスの主な使い道について解説します。
株式会社ロイヤリティマーケテイングが実施した調査によると、ボーナスの使い道で最も多かったのは「貯蓄・預金」でした。4位の財形貯蓄を含むと全体の4割弱はボーナスの使い道として貯蓄を選択しています。
会社員の場合、まとまった金額が入る主な機会はボーナスであるため、手堅く貯蓄に励む人が多いようです。
2位は「旅行」、3位は「食品」、4位は「外食」となっており、少しの贅沢気分を味わうために使う人もみられます。
特徴的な部分としては、6位「投資信託」、8位「株式」がランクインしている点です。2024年から新NISAが開始されたこともあり、貯蓄に留まらず投資への関心が高まっているのかもしれません。
出典)株式会社ロイヤリティマーケティング「第61回 Ponta消費意識調査 2024年10月発表【冬のボーナスの使い道ランキング】Pontaリサーチ調べ」を基に作成
〇こちらの記事では、ボーナスをためるコツや30代40代におすすめなボーナスの使い道について解説しています。
家庭の事情や突然の解雇など、自分では調整できない予期せぬ事情により、ボーナス前に退職せざるを得ない場合があります。
そのようなケースでは、ボーナスをもらえないのではないかと不安になるかもしれません。
ここでは、退職後のボーナス事情について解説します。
原則として、企業は賞与支給日に在籍していない社員には、ボーナスを支払う義務はありません。
賞与は基本的に就業規則で取り決める事項であるため、就業規則に「賞与支給日に在籍しない者には賞与を支給しない」と記載されている場合は、支給しないことが認められています。したがって、ボーナスについての取り扱いは、就業規則でどのように明記されているのかを確認することが必要です。*4
以下のケースに該当する場合は、原則、ボーナスが支給される可能性が高いといえます。
年俸制の支払い方法は、年間に支払う総額を月割りなどで振り分けるのが一般的です。
一例として、年俸を14分割してそのうちの12回分は毎月の給与、残りの2回分をボーナス支給に支払うと取り決めている場合、会社は退職者に対し支払い義務が発生します。就業規則で別途支給基準が設けられているときも同様です。
たとえば、12月末まで在籍する従業員に対しては、12月10日に賞与を支給するなどと就業規則で決めているケースが当てはまります。該当する場合はボーナスを退職者に支給しなければなりません。
会社の都合で解雇された場合の退職も会社は退職者に対し、支払い義務が発生する場合があります。形式は「自らの退職」であるとしても、会社の都合でやむを得ず退職になった場合、会社は退職者に対し賞与を日割りして支払う義務があるとされるからです。*4
正社員の場合、給与であれば在籍していた期間は原則支給されますが、ボーナスの場合は就業規則で定められている基準に従うことになります。したがって、支給要件が「ボーナス支給日に在籍していること」と規定されている場合は支給されません。
ボーナス支給日に近い日程で転職を考えている方は、会社の就業規則を確認してから退職するのをおすすめします。
本コラムは執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
出典
*1 NHK「春闘2024 高水準の賃上げどう波及?実質賃金は23か月連続でマイナス続く」2024.4.19
*2 帝国データバンク「2024年夏季賞与の動向アンケート」
*3 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「2024年冬のボーナス見通し」
*4 独立行政法人中小企業基盤整備機構「賞与支給日に在籍しない従業員の賞与は払わなければいけませんか?」