子育てに関する費用の中で負担が大きい教育費について、積み立てを始めた、学資保険に加入した、まさに検討中、など、多くの方が気にかけていると思います。
そこで本記事では、日本政策金融公庫の教育費負担の実態調査結果などに基づきながら、「高校から大学までの教育費負担」にスポットを当てて解説します。
必要な資金を用意する一助になれば幸いです。
日本の少子化が進行している原因の一つとして、「経済的負担の増加」を挙げる人も多いようです。
まずは、子どもを持つことに対する意識調査の結果について、みてみましょう。
下図1は内閣府が2015年に公表した「妻の年齢別にみた、理想の子供数を持たない理由」です。
図1)出典:内閣府「第1章 少子化をめぐる現状(5)」
「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」が全体の56.3%を占めており、30〜34歳では8割を超えました。
2010年の調査時よりやや減少しましたが、他の理由と比較するとかなり多いことが読み取れます。
理想的な子どもの数(下図2)は1987年をピークに減り始めており、2015年は2.32人と過去最低を更新しました。実際の子どもの数も1.68人で過去最低となっています。
1987年以降は右肩下がりが続き、理想の子ども数だけでなく実際に生まれている子どもの数も減少傾向です。
図2)出典:内閣府「第1章 少子化をめぐる現状(5)」
下図3は文部科学省が公表した2012年度における「教育費負担に関する国民の意識調査結果」です。参照すると、子育ての不安要因は「経済的負担の増加」がトップで71.7%と大多数を占めました。(下図3右)
下図3)出典:文部科学省「教育費負担」 P18
「経済的負担」が大きいと思われるものは「学校教育費(大学・短大・専門学校など)」が68.9%で、最多となっています。
「保育所・幼稚園など」は34.8%、「小・中学校、高校」は31.5%です。
高校までの教育費と比較すると、大学・短大・専門学校などの「高等教育費」を大きな負担と感じる割合は2倍以上となっています。これらのことから大学の教育費は、親にとって子育てに必要な費用のうち、負担が大きいことが分かります。
下図4は文部科学省が公表した「家計における教育費負担」のグラフです。
当然ですが、子どもが増えるごとに家計における教育費の占める割合も増加しています。
下図4)出典:文部科学省「教育費負担」 P17
大学生の子どもが2人いる家庭では、可処分所得の半分近く(約44%)を教育費が占めました。このケースでは、下宿費、住居費等の仕送り代は含んでいないので、大学などの進学のため一人暮らしをする場合は、さらに親の負担が大きく増えることになります。
子どもの年齢が上がるほど教育費は増えていきます。
ここでは実際に、高校・大学にかかる教育費について解説します。
入学時にかかる子ども1人当たりの費用は、高校が35.0万円、高専・専修・各種学校が50.2万円、短大が73.0万円、大学が81.1万円となりました。(下図5)
図5)出典:日本政策金融公庫「子ども1人当たりにかける教育費用(高校入学から大学卒業まで)は減少」P5
大学の受験費用が高いことは、意外なのではないでしょうか。
30.3万円と、学校納付金の40.3万円と10万円しか変わらない状況です。
学校納付金は入学金、寄付金、学校債など入学時に学校に支払った費用が含まれ、受験費用には受験料や受験のための交通費、宿泊費が該当します。*1
大学の入学費用で最も高いのは「私立・理系」の88.8万円です。
「国公立」は67.2万円で私立よりも負担が少ないとはいえ、決して楽な金額ではありません。
入学費用より負担が重いのが「年間の在学費用」です。
子ども1人当たりの1年間の在学費用は、高校が75.6万円、高専・専修・各種学校が116.9万円、短大が137.0万円、大学が149.9万円となりました。(下図6)
図6)出典:日本政策金融公庫「子ども1人当たりにかける教育費用(高校入学から大学卒業まで)は減少」P6
1年間の在学費用は「私立・理系」が最も高く183.2万円、「私立・文系」が152.0万円、「国公立」は103.5万円です。
私立では理系と文系で30万円ほど在学費用に違いがあり、子どもが私立の理系に進学した場合、親の負担はかなり大きいといえます。
国公立でも約100万円程度かかるため、4年間の在学費用は高額です。
入学費用と在学費用の合計金額は、子ども1人あたり942万円です。(下図7)
大学に進学すると毎年約150万円が加算されます(4年間の就学の場合)。
図7)出典:日本政策金融公庫「子ども1人当たりにかける教育費用(高校入学から大学卒業まで)は減少」P7
入学先別に分けると、「私立・理系」が1,083.4万円となっています。
高専・専修・各種学校、私立短大は、修業年限が2年ということもあり、大学より低い金額となっています。
さらに地方から上京するなど、進学のために子どもが一人暮らしをする場合はアパートの家賃や食費など仕送り代も必要です。
自宅外通学者への仕送り額は年間平均95万円で、例えば大学に4年間通わせた場合、在学費用の他にプラス380万円程度の費用負担増となります。*2
ここまで、教育費に関する負担をみてきました。
それでは、それら費用を準備するためにはどのような方法が考えられるでしょうか。
積立定期預金とは、毎月決まった日にお金を預ける預金サービスで、目的や予算に合わせて計画的に貯金できます。
積立定期預金は普通預金から自動振替で積み立てられるので、毎月決まった金額を着実に貯められるのがメリットです。
低金利の今、金利が高いとはいえませんが、リスクは低く確実性の高い方法と言えるでしょう。
満期までの金利は積み立てごとに確定し、積立期間が終了して据え置き期間を経過した日が満期日になります。*3
学資保険も教育資金を貯める選択肢の一つです。
毎月決まった金額の保険料を払込むことで、大学の教育資金等を計画的に準備できます。各社によりさまざまなプランがあるので、払込期間や保障内容など目的に合った商品を選びましょう。
ただし、保険料払込期間中に解約した場合は、払込保険料総額を下回る場合があるので注意が必要です。
契約者が亡くなった場合はその後の保険料が不要になることが一般的ですが、保障内容はそのまま継続されるので安心です。
貯蓄と併せながら、つみたてNISAを活用して教育資金を貯めるのもよいでしょう。なお「ジュニアNISA」は、2023年で投資可能期間が終了します。*4
つみたてNISAとは、特に少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度で、毎年40万円を上限として一定の投資信託が購入可能です。なお、非課税期間は20年間となっています。*5
通常、株式・投資信託の配当金には20.315%の税金がかかりますが、NISA口座で運用した利益には税金がかからないため、投資で得た利益をそのまま受け取れるのがメリットです。*6
つみたてNISAの活用例としては、以下のケースが挙げられます。(下図8)
図8)出典:金融庁「子どもの教育費を用意したい」
例えば、毎月2万円を預金(金利・年0.01%)だけで10年間貯めた場合の合計金額は240.1万円で、利息は1,000円しか受け取れません。
しかし、つみたてNISAで毎月2万円ずつ10年間積み立て、年利2%で運用できた場合、運用利益25.4万円がプラスされるので合計金額は265.4万円です。
しかも非課税なので税金が差し引かれず利益をそのまま受け取れます。
できるだけリスクを抑えながら手堅く増やしたい場合には、債券中心のバランス型投資信託がよいでしょう。
債券中心のバランス型投資信託は、株式中心のバランス型投資信託よりも期待するリターンは下がる一方で、リスクが抑えられます。*7
子どもがどのような進学先を選ぶのかは、その時になってみなければ分かりません。
親としては「私立・理系」に進学したとしても慌てないように備えておきたいものです。
子どもが幼い時から時間をかけて、無理なく必要な資金を準備しましょう。
*1 日本政策金融公庫「子ども1人当たりにかける教育費用(高校入学から大学卒業まで)は減少」 P4
*2 日本政策金融公庫「子ども1人当たりにかける教育費用(高校入学から大学卒業まで)は減少」P10
*3 一般社団法人 全国銀行協会「積立定期預金」
*4 金融庁「ジュニアNISAの概要」
*5 金融庁「つみたてNISAの概要」
*6 国税庁「株式・配当・利子と税」
*7 金融庁「子どもの教育費を用意したい」