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「世界最大級の機関投資家」GPIFは何をしている?運用方針やポートフォリオは?
「世界最大級の機関投資家」GPIFは何をしている?運用方針やポートフォリオは?

「世界最大級の機関投資家」GPIFは何をしている?運用方針やポートフォリオは?

2023/07/13・提供元:Money Canvas

「世界最大級の機関投資家」と聞くと皆さんは何をイメージしますか?「知らないし私には関係ない」という声も聞こえてきそうです。実は皆さんの生活・将来に重要な「年金」に関係する機関がそれに該当しています。


私たちが毎月納めている公的年金の保険料は、ただ単に積み立てられたものが老齢年金などの形で戻ってくる、というわけではありません。国は滞りなく年金を支給するため、現役世代が納めている年金保険料の一部を株式や債権などで運用しています。

こうした年金の管理・運用をしているのが「GPIF(=年金積立金管理運用独立行政法人)」です。


今回は「世界最大級の機関投資家」でもあるGPIFとはどのような機関なのか、どうやって運用益をあげているかをご紹介します。



年金保険料と「GPIF」

公的年金には、一定以上の年齢になると支給される老齢年金、障害を負った時に支給される障害年金、そして一家の働き手が亡くなったときに家族に支給される遺族年金があります。いずれも大切なものです。


一方で少子高齢化によって年金保険料を支払う人の数は減っていきます。年金保険料を納めてきたのに自分の代になるともらえなくなる、そのような事態があってはいけません。

年金制度の存続のためには、安定的な財源が維持され続ける必要があります。

そこで日本の年金制度は、現役世代が納めた年金保険料のうち年金の支払いなどに充てられなかったものを「積立金」として確保し、足りない時に補えるような仕組みになっています。


このような積立金は、多くあればあるほど安心できる重要な「資産」といえます。

さらにこの積立金を「増やす」ことができれば、将来にわたり年金を支給し続けられる安定的な原資になります(図1)。


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図1 年金積立金のしくみ(出所:「年金財政における積立金の役割」GPIF)


そして、積立金を増やして将来の支払いに充てられるよう、積立金を投資などで運用しているのが「GPIF(=年金積立金管理運用独立行政法人)」です。


積立金の利用計画は100年設計

日本の年金制度は現役世代が納める保険料で、その時々の高齢者世代に年金を給付する「賦課方式」を採用しています。

その一方で、日本では少子高齢化が急速に進んでいるため、将来世代の負担が大きくなりすぎないような仕組みを持つ必要があります。

そのため、年金保険料のうち支払いに充てられなかったものを年金積立金として積み立てて、将来にわたって安定的に年金給付ができるよう財政運営がなされています。


GPIFはこの積立金を国内外の資本市場で運用して増やしています。

年金積立金の運用収益や元本は概ね100年の年金の財政計画のなかで、将来世代の年金給付を補うために使われます。年金財源全体のうち、積立金から賄われるのは1割程度です。(図2)。


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図2 公的年金財源の100年計画(出所:「機関投資家のESG投資」日本取引所グループ)


皆さんの重要な年金給付に充てられると考えると、積立金の運用は失敗を許されないため、GPIFの任務は非常に重要であるといえます。


積立金はいま何円ある?どれだけ増えた?

GPIFは、厚生労働大臣が定める「中期目標」に基づいて「中期計画」「年度計画」を作り、それらに沿って投資の内容や利益の目標を決めています。

実績は四半期ごとに公表されており、2022年12月末では下図のような金融商品で運用されています(図3)。


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図3 2022年12月段階での積立金運用状況(出所:「2022年度の運用状況」GPIF)


GPIFが運用している積立金の資産額は191兆円にのぼります(2022年12月末)*1。法人の大口投資家のことを「機関投資家」と呼びますが、GPIFは世界最大級の機関投資家ともされています*2。

そして、ここまでの運用実績は下のようになっています(図4)。


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図4 2001年以降の積立金運用実績(出所:「2022年度の運用状況」GPIF)


2001年以降、単年度でみれば収益がマイナスの年度はあるものの、現在のところ100兆円近い収益を上げています。


GPIFの「積立金運用方針」

さて、投資にはハイリスク・ハイリターンから、ローリスク・ローリターンまで様々なものがありますが、GPIFの令和5年度の運用計画では、「リターン・リスク等の特性が異なる複数の資産に分散投資することをリスク管理の基本」としています*3。


上の図3の通り、これまでも分散投資を基本としています。


また、「乖離許容度」も定められています(図5)。


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図5 GPIFポートフォリオの「乖離許容度」「年金積立金管理運用独立行政法人令和5年度計画」GPIFp3


これは、経済環境や市場環境の変化を踏まえたもので、分散の度合いを完全に固定するのではなく、必要に応じてここまでなら割合を変えても良い、という幅を設定しておくという考え方です。


また、市場の急激な変動が生じる可能性がある場合には専門のプロジェクトチームで検証し、投資割合を見直す仕組みになっています。

慎重かつ必要な時には機動的に対応できる体制となっているのです。


GPIFは「ESG投資」も行う機関

GPIFは、「EGS投資」の担い手でもあります。

ESGとは「環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)」の頭文字を合わせた言葉で、これらの領域の問題解決に積極的な企業へ投資をするのが「ESG投資」です(図6)。


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図6 ESGの考え方(出所:「ESG投資」GPIF)


GPIFは、ESG投資をする理由をこのように説明しています。


「GPIFのように投資額が大きく、世界の資本市場全体に幅広く分散して運用する投資家は「ユニバーサル・オーナー」と呼ばれます。また、GPIFが運用する年金積立金は、将来の現役世代の保険料負担を軽減するために使われるものです。

このように「ユニバーサル・オーナー」かつ「世代をまたぐ投資家」という特性を持つGPIFが、長期にわたって安定した収益を獲得するためには、投資先の個々の企業の価値が長期的に高まり、ひいては資本市場全体が持続的・安定的に成長することが重要です。

そして、資本市場は長期で見ると環境問題や社会問題の影響から逃れられないので、こうした問題が資本市場に与える負の影響を減らすことが、投資リターンを持続的に追求するうえでは不可欠といえます。」

<引用:「ESG投資」GPIF>


なお、GPIFのESG投資は国際的な指数に連動する形で行われており、2021年度末時点では12.1兆円が充てられています*4。


私たちの大切な年金保険料は、GPIFにより、様々なところで運用されていることがわかります。各期末の運用実績はGPIFのホームページで公表されていますので、時々チェックしてみるのも良いでしょう。



出典

*1 「2022年度の運用状況」GPIF

*2 「GPIFとは 世界最大級の機関投資家」日本経済新聞

*3 「年金積立金管理運用独立行政法人令和5年度計画」GPIF

*4 「ESG投資」GPIF

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