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金利が与える為替(円安・円高)への影響とは?金利の基礎・日米金利差について解説
金利が与える為替(円安・円高)への影響とは?金利の基礎・日米金利差について解説

金利が与える為替(円安・円高)への影響とは?金利の基礎・日米金利差について解説

2024/04/16に公開
提供元:Money Canvas

日銀は、2024年3月19日の金融政策決定会合において、マイナス金利政策の解除を決めたと発表しました。*1

ニュース等で見聞きすることも多い「金利」という用語ですが、そもそも金利は誰が決め、なぜ変動するのでしょうか。

金利と為替相場は深く関係していますが、どのように影響しているか理解していないという方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、金利とは何を指すのか、また、金利はどのように変動し、為替相場にどのように影響するのかなど、金利の基礎について解説します。


金利とは?

金利とは、借りた金額に対してどれくらいの割合で利息(利子)が発生するのかを表すもので、各金融機関が日銀(日本銀行)の金融政策に基づいて決定しています。*2

金利は、銀行への預金や債券の購入、ローンによる借入など様々な場面で見聞きすることが多い単語です。

例えば、銀行にお金を預けると、預金者は銀行にお金を貸すことになるため、利息を受け取れます。また、国や企業等が発行する債券(国債・社債等)を購入すると、発行した団体へお金を貸すことになるため、預金と同様に利息の受け取りが可能です。

一方で、住宅ローンやカードローン、教育ローンなど、お金を借りると借入者は利息を支払うことになります。


日銀の金融政策と金利の関係

日銀とは、お札(日本銀行券)の発行や物価の安定、金融システムの安定などの役割を担う日本の中央銀行です。*3

※日銀の役割と政策についてはこちらのコラムで詳しく解説しています。

日銀は、金融市場に出回るお金の量を調整することで、物価を安定させる役割も果たしており、これを金融政策と言います(図1)。*4


日本銀行の金融政策

図1 日本銀行の金融政策 (出所「わたしたちの生活と金融の働き」金融庁)p.11


好況の時には、景気の過熱を抑えるため、日銀は金利を上げて市場に出回るお金を減らす金融引き締めを実施します。*2

これにより、金融機関は以前より高い金利で資金を調達しなければならないため、企業や個人へ貸し出す金利を引き上げるようになります。その結果、経済活動が抑制されるようになり、景気の過熱を抑制することにつながります。

一方で、不況の際に日銀が金利を下げて、市場に出回るお金を増やす施策を、金融緩和と言います。

金融機関は低金利で資金を調達できるようになるため、企業や個人への貸し出す際に、金利を引き下げることができるようになります。その結果、企業や個人はお金を借りやすくなるため、経済活動がより活発になり、景気の向上につながります。


金融機関の金利決定に影響を与える「資金の需要と供給のバランス」とは?

各金融機関が日銀の金融政策に基づいて金利を決定していますが、その決定には、資金の需要と供給のバランスも深く関連しています。*5

資金の需給バランスが変化する要因には、主として景気・物価・為替の3つが挙げられます。*5


①景気による金利変化

好況になると、消費者の購買意欲が増大し、需要の増大に合わせて企業の設備投資意欲が増加することが見込まれるため、資金需要が高まります。その結果、金利も上がると考えられます(図2)。*5


景気による金利変化

図2 景気による金利変化の背景 (出所「景気・物価・為替と金利の関係」全国銀行協会)


一方で、不況によって個人消費が減退すれば、企業は生産を控え、資金需要が低下し、金利は下がるとされています。


②物価による金利変化

物価の上昇が起こるときは、お金の価値が下がっている状態であると言えます。この時、消費者はお金を持つよりも物を持つ方に価値を見出せるため、購買意欲が高まると考えられます。そのため、資金需要は高まる一方で貯蓄などの資金供給は減り、金利が上昇すると考えられます(図3)。*5


物価による金利変化

図3 物価による金利変化の背景 (出所「景気・物価・為替と金利の関係」全国銀行協会)


また、先述したように、物価上昇の際には日銀が金融引き締めを実施することで、金利上昇に動きます。


③為替相場による金利変化

為替相場とは、例えば、「円」と米ドルのように、異なる通貨が交換(売買)される際の交換比率を指します。*5, *6

例えば、円安ドル高が予想される場合、ドルで預金したり資産運用をしたりする人が増加します。その一方で、円建ての預金の解約等が増えれば、円の資金供給が減るため、円の金利は上昇すると考えられます(図4)。*5


為替相場による金利変化

図4 為替相場による金利変化の背景 (出所「景気・物価・為替と金利の関係」全国銀行協会)


国内外の金利の変動は為替相場に影響を与える

為替相場が金利の変動要因となることを紹介しましたが、国内外の金利が変動することによって為替相場が変動することもあります。*7

基本的に、お金は金利が低い国や地域から、高いところに流れていきます。例えば、日本の金利が低く、米国の金利が高い場合、人々は金利が高い米国で預金や資産運用をしたいと考えるでしょう。その結果、円よりも米ドルの需要が高まるため、円の価値が下がり米ドルの価値が上がる円安ドル高となります。

為替は2つの通貨間のバランスで変動します。そのため、日銀の金融政策はもちろんのこと、米国のFRB(連邦準備制度理事会)やユーロ圏のECB(欧州中央銀行)など、主要国の中央銀行の動向をチェックすることが大切です。


円安ドル高を進行させる日米金利差

主要国の金融政策のなかでも特に注目されるのが、米国の利上げ等に関する動向です。米ドルは国際通貨のなかでも中心的な地位を占める基軸通貨であり、米ドルの利上げは、新興国や原油価格等、あらゆるものに影響します。*7

日本と米国の金利差を「日米金利差」と言い、金融政策の動向に敏感な2年債の利回りや長期金利の指標となる10年債の利回りなどの差を指しています。特に、2年金利差が対ドルの円相場に連動しやすいとされ、外国為替市場参加者の注目が高くなっています。*8


日米金利差拡大の要因としては、日銀が大規模な金融緩和を続けている一方で、FRBが急激な利上げを続けているためです。*8

日銀は、2013年1月に、「物価安定の目標」を消費者物価の前年比上昇率2%と設定して以降、その実現に向けて、金融政策を推進しています。*9

2013年4月に「量的・質的金融緩和」、2016年1月には「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入するなど、日銀は積極的に金利緩和を実施しました。

その一方で、FRBは、2022年3月から利上げを開始しています。金融引き締めによってインフレを抑え込もうとしましたが、収束の兆しが見えなかったため、6月から11月の会合まで4回連続で0.75%という大幅な利上げに踏み切りました。*10

その後、利上げ幅の縮小はありましたが、2023年6月の会合で利上げを見送るまで、FRBは10回連続で利上げを実施しました。

以上のような背景もあり、日米金利差が拡大するとともに、円安ドル高も進行しています。*8


日米金利差はこれからどうなる?

近年、拡大傾向にあった日米金利差ですが、変化の兆しも見られています。

例えば、冒頭でも紹介したように、日銀は、2024年3月19日まで開催された金融政策決定会合において、これまでの大規模な金融緩和策を変更することで決定しました。*11

具体的には、2016年1月の導入決定以来、金融緩和策の柱となってきた「マイナス金利政策」を解除するとしています。日銀による利上げは、2007年2月以来およそ17年ぶりです。

政策変更の理由として、日銀は賃金上昇に伴う2%の物価安定目標の実現が見通せる状況になったためと発表しています。

一方で、FRBは2024年1月31日の会合において、4会合連続で政策金利を据え置くことを決定しました。*10

FRBのパウエル議長は、これまでの急速な利上げにも関わらず、経済が堅調なことに自信を深めており、今後、金融政策の正常化を議論していく考えを示しています。

こうしたなかで、実際に日銀が利上げに転じ、FRBが利下げに転じれば、日米金利差の縮小が意識され、円高ドル安が進む可能性もあると言えるでしょう。*11


まとめ

今回は、金利の基礎や、日米金利差と為替相場の関係、今後の展望等について解説してきました。

金利は、経済活動や私たちの普段の生活に密接に関わっているため、その仕組みを理解しておくことは重要です。

今回のコラムを参考にしていただき、日銀やFRBの決定等から、金利や為替相場がどのように変動するか、予想しながらニュースを読み解いてみるのはいかがでしょうか。


本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意下さい。


出典
*1NHK「日銀 マイナス金利の解除を決断 好循環の実現は【経済コラム】」
*2三菱UFJ銀行「金利とは?利息の計算方法など仕組みや注意点をわかりやすく解説!」
*3日本証券業協会「日本銀行 : 日本銀行ってなにをしているの?」
*4金融庁「わたしたちの生活と金融の働き」p.11
*5全国銀行協会「景気・物価・為替と金利の関係」
*6日本銀行「為替相場(為替レート)とは何ですか?
*7三菱UFJ銀行「利上げと為替の関係とは?米ドルに注目すべき理由も解説」
*8日本経済新聞「日米金利差とは 円安・ドル高の一因に」
*9日本銀行「2%の『物価安定の目標』と『長短金利操作付き量的・質的金融緩和』」
*10NHK「米FRB 金融政策決定会合 4会合連続で政策金利『据え置き』決定」
*11NHK「【詳しく】日銀 マイナス金利政策を解除 異例の金融政策を転換」

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