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社会保険に加入できるパート・アルバイトの範囲が拡大 法律改正で何が変わる?
社会保険に加入できるパート・アルバイトの範囲が拡大 法律改正で何が変わる?

社会保険に加入できるパート・アルバイトの範囲が拡大 法律改正で何が変わる?

2023/01/22に公開
提供元:Money Canvas

ワークスタイルの多様性に関心が集まってからは、正社員というポジションにこだわらず、短時間で複数の仕事を掛け持つ人が増えつつあります。


そんなパート・アルバイトの方々に朗報とも言えるニュースが報じられました。

今の生活を守るとともに、まだ見ぬ将来の蓄えにもつながる「社会保険」について、2022年10月より、新たに加入できる労働者の範囲が広がるというものです。


諸条件はありますが、どのように適用範囲が拡大したのか、また、社会保険がカバーする「医療保険」と「年金」についても確認してみましょう。



社会保険の適用拡大について

今回、パート・アルバイトといった短時間労働者も、社会保険に加入できるようになった背景には、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律*1」の成立・施行があります。


この法改正は、より多くの人が長期間にわたり多様な働き方を継続するために、社会や経済の変化を年金制度に反映し、老後の経済基盤の充実を図る目的で行われました。


労働者の社会保険加入要件は、原則として「労働時間」によって決まります。そのため、労働時間の短いパート・アルバイトの方は、社会保険に加入できない場合もあるのです。


そこで、このような短時間の仕事で生活を営む人の「あんしん」をサポートするためにも、社会保険の適用拡大という取り組みにつながりました。


では具体的に、どのような改正内容なのでしょうか?


適用拡大による社保加入要件

まず初めに、条件に当てはまる人全員が社会保険に加入できるわけではない…ということをご了承ください。

なぜなら、社会保険の適用拡大における大前提として、「勤務先の企業規模」が関係するからです。


この企業規模については段階的に拡大されていますが、今年(2022年)の10月からは「社会保険加入者が101人以上の企業」が対象となりました。


ちなみに、これまでは「社会保険加入者が501人以上の企業」のみが対象でした。そして2024年10月からは「社会保険加入者が51人以上の企業」にまで拡大されるため、さらに多くの企業が該当することとなります。


そして肝心の労働条件等については、次の通りです。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 月額賃金が8.8万円以上
  • 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
  • 学生ではない

これらの条件をすべて満たす場合、パート・アルバイトの方でも社会保険に加入できます。


なお、これまでの加入要件は、フルタイム労働者の4分の3以上の週所定労働時間が必要でした。つまり、フルタイム労働者の労働時間を週40時間とすると、週30時間以上の方が要件を満たすことになります。


しかし今回の適用拡大に伴い、残業を除いて週20時間以上の勤務シフトで、かつ、一か月の給与が8.8万円以上、さらに2ヶ月を超えて働く見込みのある学生以外の人は、社会保険に加入できるようになりました。


この「月額賃金8.8万円」については、交通費や残業代、ボーナスなどの臨時的な賃金は含みません。あくまで、固定的な賃金のみで8.8万円以上となるかどうかを判断します。


また、「2か月を超える雇用の見込みがある」という部分に関しては、仮に2か月以内の雇用契約を締結している場合でも、契約更新の可能性があれば該当します。

具体的には、雇用契約書や就業規則で「契約更新がされる旨」あるいは「契約更新される場合がある旨」の明示の有無によります。


このような「書面による確認」ができない場合でも、会社内で同様の雇用契約に基づいて働く人で、契約更新により当初の契約期間を超えて雇用された実績がある場合には、「2ヶ月を超える雇用の見込みがある」とみなされます。


「社会保険に未加入だけど、諸条件をクリアしている」という方は、確認も兼ねて勤務先へ相談してみるといいでしょう。


健康保険だけにある給付

社会保険に加入する場合、医療保険は健康保険になりますが、これは「あんしん」が増えることを意味します。


具体的には、国民健康保険にはない「2つの給付」が、強い味方となってくれるのです。


まず一つは「傷病手当金」です。

業務外の事由による怪我や病気の治療で、働くことができない期間については、ノーワークノーペイの原則により報酬は発生しません。

その間、有給休暇の取得ができればいいのですが、有休を使い果たしてしまったり、療養が長期化してしまったりすると、生活費に支障が出るでしょう。


そんなときに受け取ることができるのが、傷病手当金です。

普段の給与のおよそ3分の2にあたる金額が、最長で1年6か月支給されるため、安心して治療に専念できます。


近年、増加傾向にある疾病として「精神疾患」が挙げられます。外傷などの治療と違い、長期間の療養を必要とすることや、本人が無理をしがちなことからも、症状の軽減や寛解までには時間がかかります。


その点、生活費の心配をせずに療養ができる傷病手当金は、まさに頼れる存在といえます。


そしてもう一つは「出産手当金」です。


出産・育児のために会社を休む間、国から支給されるお金といえば「育児休業給付金」が有名。しかし、出産日から58日を経過した日が起算日となるため、それ以前については支給されません。


では、育児休業給付金を受け取るまでの間、さらには出産前も含めて会社を休んだ期間の生活費は、どうすればいいのでしょうか?


そんな不安を解消してくれるのが、出産手当金です。

出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産の予定日)の42日前から、出産の日の翌日から56日目までの期間について、会社から報酬が発生しない場合に支給されます。


出産準備は心身ともに大変な期間です。その間をカバーしてくれる出産手当金は、ママにとって心強い制度といえるでしょう。


なお、類似した名称で「出産育児一時金」がありますが、これは国民健康保険にもある給付で、出産の際に1児につき42万円が支給されます。

出産時に医療機関へ直接支払われることが多く、出産費用の負担軽減を図ることができます。


年金も充実

医療保険だけでなく、年金についても「あんしん」が増えます。

社会保険に加入すると、年金の種類は「厚生年金保険」となり、今までの国民年金に上乗せする形で、年金額が増額されます。


具体的に、年収200万円のアルバイトの人が、今回の適用拡大により厚生年金保険に加入した場合、老後にもらえる「老齢年金」の額にどのくらいの差が出るのでしょうか?


年収は変わらず、今後、厚生年金に15年間加入し続けたとすると、年金額は月額でおよそ13,000円(年額156,000円)増額されます。

気になる保険料額は、これまでの国民年金保険料が16,590円(2022年度)であるのに対し、厚生年金保険料はおよそ15,600円に抑えられます。


「なぜ保険料の負担が減るのに、年金額が増えるの?」このような疑問を持たれる方もいるでしょう。


保険料の自己負担が抑えられる理由は、厚生年金保険のみならず健康保険を含む社会保険料は、その半分を会社が負担してくれるからです。


さらに公的年金は、老齢年金のほかに障害年金と遺族年金があります。いずれも、国民年金に上乗せする形で一生涯受け取ることができるため、将来の「あんしん」を守ることができるのです。


充実した人生設計を!

安定したワーク・ライフ・バランスを実現するためにも、社会保険は重要な存在といえます。

労働時間の短いパート・アルバイトの方でも、企業規模によっては社会保険に加入できるようになった今、自身のライフプランを見直す良い機会かもしれません。


本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。



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