資産運用には、長期的な視点が大切。
これはよく言われることで、お金の勉強をしていたら何度も目にする主張だろう。5年、10年はもちろん、定年後まで見据えて資産運用するのが良いとされる。
理由は簡単で、長期的に運用すればリスクとリターンが安定しやすく、初心者でも利益を得られる可能性が高いからだ。
短期的な資産運用だと、タイミングや方法選びに多くの知識が必要になる。相応のテクニックがないと、なかなかうまくいかない。一方長期的運用ならば、大きなリスクを避けてリターンを望める方法を選びやすい。
つまり、「時間をかけたほうがお金が貯まる」がセオリー。
そしてそれは、数年、数十年単位の資産運用に限らず、日常生活でもいえる。
日常生活であっても、「時間をかけたほうがお金が貯まる」のだ。
わたしは少し前から、引越しを考えている。
夫が4月に休暇を取るので、休暇中に家を見に行って、5月か6月あたりに引っ越せたらいいなぁ……と、ぼんやり考えていた。真夏の引越しは暑いから、それまでには済ませたい。
ある日、ソファで寝転がってチョコを食べながら、「6月には引越ししたいね~」と夫に伝えたときのこと。夫はびっくりして、「無理じゃない!?」と言う。
その言葉にわたしもびっくり。なんで無理なの?
「退去の3か月前に大家に言わないといけないから、もう3月だし、6月中は厳しいと思うけど」
「えっ……」
そう、これを聞くまでわたしは、「3か月前に大家に引越しの連絡をしなきゃいけない」ということを知らなかったのである(契約によって期間は変わるが我が家は3か月だった)。
子どもの頃、父の仕事の都合で転勤が多かった。その時は転勤が決まったらすぐに父が現地に行き、1か月や2か月後にはわたしたちも引越していた記憶があったから、そんなルールを意識したことがなかったのだ。
おそらく実家の場合、引越しは仕事の都合なので、会社からそれなりの額の補助が出ていたのだろう。だからスピード重視でパパっと引越しをしていたのだと思う。
しかし今回は完全に自己都合の引越し。そんな補助、あるわけがない。
すぐに引越したければ、現在の家を借りた状態のまま次の家の賃貸契約を結び、二重家賃を支払うことになる。
そうか、かなり早めに行動しておかないと、引越しはすごくお金がかかるんだな……と学んだ一件だった。
引越しにかぎらず、「早めに行動したほうが安く済む」というのは、たいていどの場合にでも当てはまる。
例えば先日、夫が月曜日仕事で遠出するため、「日曜日に出発して前乗りしようかな」と話していたときのこと。
新幹線とホテルの値段を見るとそこまで高くないので、「早めに行って観光もいいかもしれない」と言っていた。
しかし夫は結局、ホテルなどの手配が面倒くさい、泊まりの準備が面倒くさいと言って、月曜日早起きすることを選択。
が、いざ土曜日になってみると、「早起きのほうが面倒くさい」と言い出し、やはり前乗りしたくなったらしい。
そこでもう一度新幹線とホテルを調べてみると、2週間ほど前に調べていた値段より、かなり高くなっていた。それはそうだ、前日なのだからほぼ正規料金に近い(便宜上「新幹線」と書いたが、あくまでドイツの話である)。
例としてJALのサイトを見てみると、明日(4月13日)羽田から大阪の伊丹まで行くなら15,010円~だが、5月13日であれば10,610円~になり、2か月先の6月13日だと9,510円~となる。*1
2か月前に飛行機の予約をしておけば、前日に予約するより6,000円近くも節約することが可能なのだ。3割引きよりももっと安く大阪に行ける。
「長期的な視点で資産運用すべき」というのはなにも、投資や貯蓄にかぎったことではない。
日常生活でもそれは同じで、基本的に早めに行動したほうが得をするようになっているのだ。
「お金で時間を買う」という考えがある。
コストパフォーマンスならぬタイムパフォーマンスが重視される現在、ビジネスを始め多くの場面でこの考えが浸透している。
タクシーや新幹線のような移動手段が代表的だが、身近な例でいえば、短時間で煮物を作れる圧力なべや、洗い物の時間を短縮してくれる食器洗浄機などもそうだ。
広告を見る時間をカットできるサブスクの有料サービスだってそうだし、化粧の時間を短縮できるまつ毛エクステだって、「時間を買う」のひとつのかたちと言える。
時間がかかるもの・ことをお金で解決する需要は高く、巷で「便利グッズ」と呼ばれるものの多くは、「それを買うことで時間を節約できる」というコンセプトで作られている。
きっと誰しもが、「ちょっと高いけどこっちのほうが楽だし早いから……」と出費した経験があるだろう。
今日は忙しくて料理する時間がないからコンビニ弁当で済ませよう、とか、家賃が1万円上がるけど通勤時間が30分短くなる家のほうがいいな、とか。
このような「お金を出して時間を節約する」という考えは、裏を返せば「時間を使えばお金を節約できる」ともいえる。
旅行は早めに予約すれば交通費もホテル代も安く済むし、家を10分早く出ればタクシーに乗らず地下鉄でも間に合う。掃除に時間をかければルンバは必要ないし、夕方から煮込み始めれば圧力なべだって必要ない。
おせちの予約だって早いほうが安いし、ホテルのランチだって予約で早割を使えるところもある。
お金で時間を買うことができる社会だからこそ、時間をかけたり早めに行動したりすることで、お金を節約することもできるのだ。
「いやいや、そんなの当たり前だろう。みんな知っている」と思うかもしれない。
でも早く行動していれば安く済んだのに、「まぁ別にいいや」と余計なお金を支払う場面は、日常生活で意外に多くあるんじゃないだろうか。
ちなみにわたしは、先日送るべき書類を忘れていて、料金を上乗せして速達で郵送したばかりだ。とあるゲームを買うつもりだったのに、事前予約を忘れて予約特典を受けられず、個別にアイテムを割高な値段で買ったこともあった。
ちょっと早く起きれば早朝の安い新幹線に乗れるのに、ゆっくり寝たいから少し高いお昼の便を選んだり、家電を買って配達してもらうとき、早く使いたいから割り増し料金を払ってでも翌日到着にしたり。
……少し考えただけで、これだけたくさんの心当たりがあるのだ。
みなさんもきっと、似たような感じではないだろうか。
資産運用は長期計画でやったほうがいい。これは基本的なセオリー。
そしてその考えは、日常生活にも当てはまる。
節約というのは、安いものを買ったり無駄遣いを減らして出費を抑えることだけを指すのではない。
数か月前に予約して早割を上手に使ったり、時間に余裕を持つことで安い方法を選んだりというように、「お金のやりくり」だけでなく「時間のやりくり」も含まれるのだ。
資産運用は、年単位のライフプランはもちろん、1か月先、1週間先、1日先、1時間先……と、日常生活でも早めに行動して時間に余裕をもつことで、より一層うまくいくはずだ。
*1 JAL「スペシャルセイバー」