2020年のコロナ禍以降、本業とは別に副業をする人が増えています。
副業によって収入が増えれば、中長期的な資産形成に当たってプラスに働きます。本業とのバランスに注意しつつ、ご自身に合った副業へ積極的にチャレンジしてみましょう。
本記事では、お金を増やすための有力な選択肢である副業について、始める際に気を付けるべきことなどを解説します。
独立行政法人労働政策研究・研修機構は、厚生労働省の要請を受けて、2022年10月に「副業者の就労に関する調査」*1を行いました。
調査の対象とされたのは、モニター登録上の職種が「無職」の者を除く18歳から64歳の男女です。
同調査によれば、回答者のうち副業をしていると回答した割合は6.0%でした。
男性は5.1%、女性は7.4%となっており、全体の割合について性別による大きな差は見られません。ただし年齢別では、男性は30代の副業率が高いのに対して、女性は年齢が高いほど副業率が高くなるという違いがありました。
同調査における回答者の本業の就業形態は、正社員が38.1%でもっとも多く、次いでパート・アルバイトが28.4%でした。
フルタイムで働く正社員も、積極的に副業へ取り組む様子が窺えます。
一方、主な副業の就業形態は、パート・アルバイトが46.9%でもっとも多く、次いで自由業・フリーランス(独立)・個人請負が21.2%でした。
副業としては、シフトなどについて自由度が高いパート・アルバイトや、自宅でも作業ができるフリーランスなどが取り組みやすいようです。
同調査においては、副業をしている理由に新型コロナウイルス感染症の流行が影響しているとの回答が34.7%に上りました。コロナ禍をきっかけとして副業を始めた人が多いことが窺えます。
副業をすると、本業だけに取り組むよりも収入を増やすことができます。日々の生活に余裕が生じるほか、将来に備えた貯蓄に回せるお金も増えるでしょう。
また、本業では得られない経験を副業によって得られるケースもあります。
たとえば、本業とは全く違う業種の副業にチャレンジすれば、視野が広がってキャリアの選択肢が増えるかもしれません。
また、フリーランスとして自分で仕事を獲得する経験を積めば、本業における顧客対応や営業活動にもプラスに働くほか、将来的に独立を目指すこともできるでしょう。
副業をする際には、本業との兼ね合いや税務申告、情報の取り扱いなどに注意しなければなりません。
特に以下の各点については、十分注意しつつ副業に取り組みましょう。
本業の就業規則では、副業を禁止している例がよく見られます。前述の調査においても、本業の勤め先で副業が禁止されていると回答した割合が38.4%に上りました*5。
また、副業を認めるものの、許可制や届出制としている会社もあります。
副業を制限する就業規則の規定は、すべて有効とは限りませんが、無視すれば会社との間でトラブルに発展するリスクが高いでしょう。副業をする際には、あらかじめ本業の就業規則を確認しておきましょう。
会社から給与所得を得ている人の多くは、年末調整によって所得税額が確定して納税も完了するため、確定申告は必要ありません。
しかし、給与所得と退職所得以外の所得、および年末調整されなかった給与の合計額が20万円を超えた場合は、確定申告が必要となります*6。
したがって、副業で年間20万円以上稼いだ場合には、給与所得者であっても確定申告が必要です。
確定申告の期間は、原則として翌年の2月16日から3月15日までです。税務署での手続きのほか、マイナンバーカードを利用したオンラインでの確定申告も認められています。
期限に間に合うように、計画的に確定申告の準備を進めましょう。
2023年10月1日から、「インボイス制度」が施行されました。インボイス制度の下では、消費税の仕入税額控除を受けるために、原則として「適格請求書」などの保存が義務付けられます。
インボイス制度については、特にフリーランスなどへの影響が懸念されています。特に適格請求書を発行できない免税事業者*7は、取引先から値下げを要求されたり、取引を避けられたりするリスクがあります。
免税事業者であることが取引上不利となる場合には、課税事業者への移行を選択することも可能です*8。課税事業者に移行して税務署長の登録*9を受ければ、インボイス制度に基づく適格請求書を発行できるようになります。
フリーランスとして副業を行う場合は、免税事業者として活動するか、それとも課税事業者に移行して適格請求書を発行するかをよく検討しましょう。
副業に力を入れすぎると、本業と併せて心身に過度の負担がかかり、健康を害してしまうおそれがあります。
過労によって倒れてしまっては、休職によって収入が減るなど、本末転倒な結果となります。本業と副業のバランスをとり、労働時間や体調の管理などを適切に行いましょう。
副業を行う際には、本業と副業のそれぞれについて課された秘密保持義務を遵守することも大切です。
たとえば、本業で得た顧客情報を副業に流用することは厳禁であり、逆も同様です。秘密保持義務に違反して情報を漏洩させてしまうと、懲戒処分や契約打ち切り・損害賠償などのリスクを負うので十分ご注意ください。
副業のエピソードや、副業や投資の良い習慣について、あわせて読んでみてください。
ご自身の性格やスキルに合った副業を見つければ、収入の増加や経験の蓄積によって、人生の幅を広げることができるでしょう。
近年では人材紹介サイトが充実しているほか、クラウドソーシングやSNSも発達しているため、副業を見つけることが容易になっています。また、友人や親族から仕事を紹介してもらうことも、副業を探す際には有力な選択肢の一つです。
さまざまなルートで仕事を探せば、ご自身に合った副業に出会える可能性が高まります。
本業や生活に支障が出ない範囲内で、積極的に副業にチャレンジしてみましょう。
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今から考えたい!未来へのお金の増やし方本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
*1出典)独立行政法人労働政策研究・研修機構「副業者の就労に関する調査」
*2出典)独立行政法人労働政策研究・研修機構「副業者の就労に関する調査」p2
*3出典)独立行政法人労働政策研究・研修機構「副業者の就労に関する調査」p3-4
*4出典)独立行政法人労働政策研究・研修機構「副業者の就労に関する調査」p13
*5出典)独立行政法人労働政策研究・研修機構「副業者の就労に関する調査」p14
*6参考)国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」
*7参考)国税庁「No.6501 納税義務の免除」
*8参考)国税庁「消費税課税事業者選択届出手続」
*9参考)国税庁「適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)」