ビジネスの能力は、成果を元に評価されなければならない。
多くの人はそう考えるでしょう。
しかし、成果はわかりにくく、多くの人は印象で評価を下すため、ささいな日常の言動や行動が原因で「イマイチな能力の人」と見なされてしまうことがあります。
そういう人はいわば「損」をしているわけです。
マーケティングが下手、とも言えますが。
それ故に、本来は実力があるのに、実力に見合った評価を受けていない、と思う人は、もしかしたら「イマイチな能力だ」と見なされる言動や行動をとっているかもしれません。
では、どうすればいいのでしょうか。
まずは 「どのような言動・行動がイマイチだとみなされるか?」を理解せねばなりません。
それは、大きく以下の4つに分類されます。
1つ目は「レスポンスが遅い」こと。
相手の信頼構築に直結し、怠ると信頼を損なう原因となります。
2つ目は「主体性の欠如」です。言い訳や指示待ち、消極性がこれに該当し、問答無用でチームの士気を下げる要因となります。
3つ目は「わかりにくい物言い」です。意思伝達能力の不足がコミュニケーションの障害となります。
そして最後の4つ目は「高すぎる自己評価」です。客観性の欠如や謙虚さの不足が、他者との協力を難しくします。
ビジネスにおいて、迅速なレスポンスは信頼関係の基盤です。
レスポンスが遅いと、相手に対して「この人は信頼できない」と思われる可能性が高まります。
特にメールやメッセージの返信が遅いと、相手はあなたがその仕事に対して真剣でないと感じるかもしれません。これが続くと、重要なプロジェクトから外されてしまうリスクもあります。
「メールへの返信が遅いくらいで悪い評価になるのはおかしくない?」
と思う方もいるかもしれません。
しかし、自分の身になって考えてください。
ショッピングサイトへの問い合わせや、携帯電話のトラブルなどで、問い合わせをしたとき、レスポンスが悪いのはイヤですよね?
1日待たされたら、苦情を言ったり、悪い評判をネットに書き込んだりする人もいますよね?
そういうことです。
「レスの早い人」は助かります。
どんな返事も遅いより、早いほうがいい。
つまり「レスが早いだけで高評価を受けることができる」
という素地が、仕事には含まれているのです。
これは圧倒的な事実なので、文句を言っても仕方ありません。
「レスが遅いこと」自体はよほどのことがない限り、非難されません。
でも、 「メールへのレスが早い人の評価は高い」ことで、相対的に「レスが遅い人」の評価は低下します。
世の中全体で、レスポンスの早さを競っているようなものですから、総体的にレスの早い人が評価という意味では得をするのは、避けようがありません。
したがって、具体的な改善策としては、以下の方法があります。
メールへのレスが早いほうが評価されるという文化がある場合、メールやメッセージを受け取ったら、すぐに返信する習慣をつけましょう。
たとえ詳細な回答ができなくても、「確認しました。後ほど詳細をお送りします」といった簡単な返信をするだけでも、相手に安心感を与えます。
場合によっては、メールクライアントやメッセージアプリには、自動返信機能が備わっていることが多いです。これを活用して、受信したメールに対して自動的に「受信しました。後ほどご連絡いたします」と返信する設定を行う選択肢もあります。
すべてのレスに同じ優先順位をつけるのではなく、重要度や緊急度に応じて優先順位を設定しましょう。これにより迅速に対応できるようになります。
特に、年配によくいる「レスは早いほうがいい信者」への対応だけでも早くやっておくことは、処世術として有効です。
とはいえ、全てのメールに即レスというわけにはいきません。
仕事は、ひとたび中断されると効率が著しく落ちるからです。
そのような場合、休憩などの直前に、メールやメッセージをチェックする時間を設けることで、迅速な対応が可能になります。
例えば、毎朝9時と正午、午後3時には必ずメールを確認する時間を設けると、すくなくとも重要なメッセージに3時間以内に素早く対応することが可能です。
主体性とは、辞書を引くと
「行動する際、自分の意志や判断に基づいていて自覚的であること」と書かれています。
しかし、自分の意志で動く、というだけであれば、どんな行動も自分の意志ですから主体的であると言ってもおかしくはありません。
ですから、ここでは「仕事における主体性」について述べる必要があります。
では仕事における主体性とは何でしょうか。
それは一言で言えば、 「責任感」とよんでも良いかもしれません。
少なくとも自分が担当している仕事においては「私が最も責任がある」という姿勢と考え方を有していることです。
ミスをした、トラブルがあった、クレームが来た。
こうした事象に対して、「私が中心となって解決を試みる」という姿勢が重要となります。
逆に、その対局にあるのが「言い訳がましい」態度です。
主体性の欠如は、ビジネスにおいて大きな問題となります。
言い訳がましい人物は、責任感の欠如を示し、信頼を損なう原因となります。
言い訳をすることで、一時的には自分を守ることができるかもしれませんが、長期的には信頼を失い、チーム内での評価も低下します。
しかしこういう疑問も残ります。
「言い訳しているつもりはない、事実を伝えているだけ」であると。
それを言い訳と捉えられることは、心外である、と。
仰る通りです。
上司が理由のわからないことで怒っている。
こちらとしては悪いことをした記憶もないし、実際に起きたことを話すと
「言い訳するな」
と怒られる。なんだかわけがわからない。
そんなとき、
「ダメ上司に呆れたよ」
ということもできます。
もちろん、部下の話をちゃんと聞かない上司は、ダメな上司である可能性が高いです。
しかし、その話と「言い訳をしている」と思われてしまうこととは別の話です。
本質的に、 ある発言を「言い訳」と捉えるかどうかの決定権は、言葉の受け手にあります。
あくまで印象の問題ですから、相手が「言い訳」と思ったら、それは言い訳なのです。
理不尽ですが、しかたありません。
その職場で良い評価を得たければ、「言い訳をしない人だ」と印象付ける必要があります。
相手の認識が、コミュニケーションの核であることは今も昔も同じです。
では「言い訳」なのか「真っ当な報告」なのか、その分かれ目となる、相手に与える印象は何から生じるのでしょうか。
それが冒頭に出た「主体性」です。
したがって、面倒な仕事であるほど「自分ごと」と捉えて、自分から積極的に行動することを心がけましょう。
具体的には、何かしらのトラブルが発生した時には、上司やチームメンバーに、積極的に解決策を提示し、率先して解決に動くことが効果的です。
解決策の進行状況を定期的に確認し、次に必要なステップを自分で考える習慣をつけなければなりません。
また、自分の行動に対してフィードバックを求めることで、周囲からは「主体的」であるように見えます。
繰り返しになりますが、それにはまず、自分の責任を広範囲に認めることが重要です。その上で、具体的な解決策を提案し、実行に移すのです。
話がわかりにくいと、「イマイチな人」とみなされます。
文章がわかりにくくても「イマイチな人」とみなされます。
言語能力は、読み・書き、そして聞いて話す能力の総体を指しますが、これは結局「思考力」と同義とみなされがちです。
ですから、「わかりにくい」人は、頭が悪いと思われてしまうのです。
では、そう思われないために、どうすればいいでしょうか?
話したり、書いたりする練習を積めばよいのでしょうか。
実は、言語能力の中で「話のわかりやすさ」に最も効くのが、聞く力です。
聞く力が不足していると、相手の意図を正確に理解できず、誤解やミスコミュニケーションが発生しやすくなります。
「自分は話すのが苦手」と思っている人は多いのですが、「聞くのが苦手」という人は少ないのです。
しかし、良く観察すると、本当に苦手なのは「聞く」であることのほうが圧倒的に多いのです。
例えば、相手が話している内容に対して
「それはどういう意味ですか?」あるいは
「具体的にはどういうことですか?」
といった質問を投げかけることすら満足にできなければ、こちらの要求をわかりやすく伝えることはできないでしょう。
重要なポイントをメモに取らず、当を得ない質問をしたり、的はずれな回答をしたりすれば、ついには
「この人の話わけわからんな」
「要求が意味不明だな」
という状況が生まれるのです。
ですから、例えば、「私が理解したのはこういうことですが、合っていますか?」と尋ねるだけでもかなり違います。
また、読み書きにも同じことが言えます。
「書くのが苦手」という人は、実は「読むのが苦手」であることが多いです。
書く力は非常に重要ですが、優れた文章がかけないのは、圧倒的に他の優れた文章を読む量が少ないことから生じています。
ビジネス書や専門書、ブログ記事などを読みましょう。
文章の構成や表現方法、わかりやすい伝え方とは何かを学ぶことができます。
繰り返しになりますが、読み・書き、聞き、話す力は、本質的には、イコール、考える力です。
考える力を鍛えるためには、ディスカッションや論理的思考力、あるいはコミュニケーションが重要となりますが、それらはすべて、言葉をベースにした活動です。
ですから、「考える力」において、鍛えるべきは言語能力であり、読み・書き、聞き、話す力です。
わかりやすいメールが書けるようになれば、自ずと考える力も上がってくるのです。
そして最後が、最も致命的な事象である、「高すぎる自己評価」です。
なぜでしょうか。
実力と自己評価の違いが大きいことは、その人物の客観性の欠如を示すからです。
客観性が欠如している人物は、他者と強調できなくなるばかりか、自分の欠点や改善点を見逃しがちになり、成長の機会を逃すことになります。
「謙虚であれ」と説教するつもりはありませんが、人間は自分の実力を過大評価しがちな生き物です。
例えば、「90%のドライバーは、自分の運転技能は平均以上である」と考えているという心理学の実験結果は非常に有名で、これらは「楽観バイアス」と呼ばれています。
したがって他人と協調が必要とされる仕事では、バイアスの影響を取り除くために、必要以上に謙虚に振る舞う必要があります。
他者の助けやサポートに対して感謝の気持ちを持ちましょう。
定期的に自己反省を行い、自分の行動や言動を振り返りましょう。
他者の意見や視点を尊重しましょう。
そして、常に学び続ける姿勢を持つことで、謙虚さを保つことができます。
「ダニング=クルーガー効果」と呼ばれる、有名な現象があります。
これは、コーネル大学のデイヴィッド・ダニングとジャスティン・クルーガーが提唱した認知バイアスの一種で、「能力の低い人は、自分の能力を正確に査定できないが故に、自己の能力を過大評価する傾向にある」という知見です。
「あいつは……ダメだよね」
とみなされてしまう前に、自分の実力を正確に見極める努力をしましょう。
さもなくば、仕事で「イマイチな人」という評価を避けることはもっと難しくなります。
以上が、4つの「イマイチな能力だと思われしまう言動・行動」でした。
正直なところ、珍しい事を言っているわけではありません。
昔から語られてきたことは、相も変わらず有効だ、というだけです。