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解雇されたらどうすべき?失業手当の受給・解雇無効の主張などの対処法を弁護士が解説
解雇されたらどうすべき?失業手当の受給・解雇無効の主張などの対処法を弁護士が解説

解雇されたらどうすべき?失業手当の受給・解雇無効の主張などの対処法を弁護士が解説

2024/03/24に公開
提供元:阿部由羅

理不尽な理由で解雇されたら、当面の生活資金を確保するため、雇用保険や任意で加入している失業保険の受給手続きを行いましょう。また、会社に対して不当解雇の無効を主張することも検討すべきです。


本記事では、会社から突然解雇された場合にとり得る対処法を解説します。


解雇されて無収入になってしまったら|生活資金を確保するための方法

解雇されて収入がなくなってしまったら、まずは当面の生活資金を確保する必要があります。

貯蓄があればそれを取り崩すことも考えられますが、雇用保険の基本手当を忘れずに受給しましょう。また、任意で失業保険に加入している場合は、保険金の受給を申請しましょう。


雇用保険の基本手当を受給する

雇用保険の基本手当は、求職活動中の方が受給できます。解雇後に次の就職先が見つかるまでの間は、ハローワークに申請を行って雇用保険の基本手当を受給し、生活費等の足しにしましょう。


雇用保険の基本手当の支給額は、原則として退職直前の賃金日割額の50~80%(60歳~64歳は45~80%)です。賃金が低い場合は高率に、賃金が高い場合は低率になります。


ただし年齢区分に応じて、以下の支給上限(日額)が設けられています。


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会社に解雇された場合、雇用保険の基本手当は、受給資格決定日(=ハローワークに離職票を提出した日)から7日間が経過すると受給できるようになります。


給付日数は、雇用保険の被保険者期間および年齢区分に応じて以下のとおりです。ただし、原則として離職日の翌日から1年間が経過すると、給付日数が残っていても基本手当が打ち切られるのでご注意ください。


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任意で加入している失業保険の保険金を受給する

解雇等による失業に備えて、任意で失業保険に加入している方は、保険会社に連絡して保険金の支払いを請求しましょう。


失業保険による保障内容は、加入している保険によって異なります。保険会社に問い合わせるか、または保険約款を確認して、支給要件や支給額などをチェックしましょう。

雇用保険の基本手当と併せて保険金を受給すれば、生活費等を相当程度カバーできます。

不当解雇について救済を受けるには|会社に対してできる請求

会社が労働者を解雇するためには、法律上の厳しい要件を満たさなければなりません。


特に安易な解雇を規制する「解雇権濫用の法理」は、非常に厳格に運用されています。

解雇権濫用の法理によって、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は無効です(労働契約法16条)。


不当解雇に当たると思われる場合には、会社に対して以下の主張を行って救済を求めましょう。

(1)解雇の無効・復職を主張する

(2)退職を受け入れる代わりに、有利な退職条件を求める


解雇の無効・復職を主張する

解雇権の濫用等によって解雇が無効である場合には、会社と労働者の間の雇用契約が存続するため、労働者は復職を求めることができます。また、解雇によって職場を離れていた期間については、賃金全額の支払いを請求可能です。


別の会社に転職するつもりがなく、解雇された会社への復帰を希望する場合には、解雇の無効を主張して争いましょう。


退職を受け入れる代わりに、有利な退職条件を求める

不当解雇された労働者は、本来であれば会社に在籍し続ける権利があります。


しかし、不当な取り扱いを受けた会社に居続けるのは気が進まないかもしれません。退職を受け入れるとしても、少しでも有利な条件で退職できるように会社と交渉しましょう。


たとえば、正規の金額よりも増額した退職金を支払う解決などがよく見られます。

会社が関連会社や取引先を豊富に有する場合は、転職先のあっせんを求めることなども考えられるでしょう。


なお、退職を受け入れてよいと考えている場合でも、有利な退職条件を会社から引き出すことを目的として、ひとまずは解雇無効と復職を主張するのが一般的です。

会社の態度を観察しながら、より有利な解決を目指して交渉の方針を決めましょう。

会社との解雇トラブルを解決する法的手続き

解雇に関するトラブルについて、会社との交渉がまとまらない場合は、法的手続きによって解決を図るほかありません。


解雇トラブルを解決するための法的手続きとしては、主に「労働審判*1」と「民事訴訟*2」があります。


労働審判

「労働審判」とは、労使紛争を迅速に解決することを目的とした法的手続きです。地方裁判所で行われます。


労働審判の手続きでは、裁判官1名と労働審判員2名で構成された「労働審判委員会」が、労使の主張を公平に聞き取ります。その上で、労使双方に対して調停(和解)による解決を提案し、調停が難しければ労働審判によって結論を示します。


労働審判の審理は原則として3回以内で終結するため、迅速な解決が期待できます。ただし、労働審判に対して異議が申し立てられると、自動的に訴訟へ移行する点にご注意ください。


民事訴訟

「民事訴訟」は、個人や法人の間で発生した紛争を解決することを目的とした法的手続きです。


不当解雇について争う民事訴訟では、労働者側が解雇の不当性を、会社側が解雇の正当性をそれぞれ主張します。

裁判所は、労使双方が提出する主張や証拠資料を踏まえて、解雇が有効であるか、それとも不当解雇として無効であるかを検討します。審理が熟した段階で、裁判所は判決を言い渡します。


民事訴訟については三審制が採用されており、第一審判決に対しては控訴、控訴審判決に対しては上告が認められています(上告は要件が厳しいため、受理されない場合も多いでしょう)。


判決が確定した場合、当事者は確定判決の内容に従わなければなりません。解雇を無効とする判決が確定すれば、労働者は会社に復職を求めることができます。

不当解雇に関する相談先

会社に不当解雇された場合には、以下のいずれかの窓口へ相談しましょう。


(1)総合労働相談コーナー*3

都道府県労働局や、各地域の労働基準監督署に設置されています。不当解雇を含む労働問題全般について、解決策等の一般的なアドバイスを受けられます。


(2)各都道府県の弁護士会*4

弁護士の自治組織です。不当解雇の無効等の主張に当たって、代理人として活動してもらう弁護士の紹介を受けられます。


(3)法テラス*5

市民と法専門家の距離を近づけるための活動を行っている公的機関です。収入と資産が一定水準以下の方に限り、弁護士の無料相談を受けられるほか、正式に依頼する際には立替払い制度を利用できます。


(4)弁護士が運営する法律事務所

インターネット検索や家族・知人の紹介などを通じて、ご自身で探した弁護士に直接連絡しても構いません。


いかがでしたか。万が一に備えて、日ごろから家計管理をしっかり行いましょう。


本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意下さい。


出典
*1、裁判所「労働審判手続」
*2、裁判所「民事訴訟」
*3、厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
*4、日本弁護士連合会「全国の弁護士会・弁護士会連合会」
*5、法テラス「地方事務所」



阿部 由羅
あべ ゆら

ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。


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