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決算発表時の立ち回り方 村瀬智一の株式市場の歩き方(1)
決算発表時の立ち回り方 村瀬智一の株式市場の歩き方(1)

決算発表時の立ち回り方 村瀬智一の株式市場の歩き方(1)

2023/05/21に公開(最終更新:2024/03/04)
提供元:Money Canvas

かつての東京証券取引所には、手サインを使って売買の注文を出す「場立ち」と呼ばれる証券マンがいました。そんな時代から株式市場をウォッチしてきた村瀬智一氏。
個人投資家好みの中小型株や材料株に強い同氏が「有望銘柄」の発掘方法を指南します。連載第1回目は、企業決算と株価の動き方の傾向を解説していきます。


株価は、会社計画よりもコンセンサスを織り込む

株式投資では、企業の業績動向はもとより、その企業の手掛けているサービスや新たに開発した製品、重点施策など、さまざまな材料を手掛かりとして投資家の資金が集まり、株価が形成されます。その代表格となるのが「決算発表」です。
事前の会社計画に対して決算内容が超過達成となれば、これを評価した買いが集まることが見込まれます。

ただし、大企業などの代表的な銘柄や投資家に人気の高いグロース(成長)銘柄などは、証券会社や調査会社など第三者によって業績が予想されており、こちらが市場関係者におけるコンセンサス(市場予想)ということになります。

たとえば、企業側が今期の営業利益は100億円と予想したとします。一方で、複数の証券会社が150億円と予想していた場合、証券会社が予想を発表した時点で、市場参加者(投資家)は150億円を織り込み、株価に反映されていくことになります。

そのため、先ほどの例で言えば、実際の着地が110億円で会社計画(100億円)を上回り、新聞等に「最高益更新」という見出しが躍ったとしても、既にマーケットでは150億円を織り込んでいるため、反対に失望売りにつながることも少なくありません。いわゆる「織り込み済み」というわけです。

また、市場は欲張りですので、常にポジティブな材料を欲しがります。四半期毎の決算において、常にサプライズを期待してしまうため、計画通りの進捗だとしても、業績の上方修正を期待してしまう傾向があります。事業環境などを冷静に見れば上方修正の可能性は低い状況でも銘柄によっては期待感が膨らんでしまいます。ですので、進捗率の高い企業で通期業績の計画が据え置かれると、失望されて株価が下落するケースも珍しくありません。


ファンドは常に運用競争、イレギュラー な動きを狙う

一方で、業績悪化が警戒されているなかでも通期計画が据え置かれることで、市場はポジティブに評価することもあります。ただ、これは決算を評価した新規の買いというよりは、ショート筋(売り方)のカバーによるところが大きいと考えられます。


また、主力の大型株となれば、多くのファンドのポートフォリオに組み込まれています。加えて、ファンド勢は同業のファンドと運用成果を競っているという前提条件があります。たとえば、業績への警戒感などを背景にある企業の株価が弱いトレンドを形成していると、調整が長引くことによってファンド勢は保有するポジションを減らします。そのポジションを持っていることによって、運用成果で負けてしまうからです。反対に強いトレンドを継続している銘柄については、たとえ評価以上に買われていたとしても、強いトレンドが続くなかでは、その銘柄を組み入れていないことで同業のファンドとの競争で負けてしまうため、正直なところ、否応なしに買っているケースも少なくないでしょう。

当然、評価以上に買われているような銘柄は、その後ピークを打ち、トレンドが転換してきます。そうなると今度は、売りのバイアスが強まり、「売られ過ぎ」と見られる水準まで下押す局面もあります。ファンドはそのほとんどが機械で売買執行していると見られますので、その動きが重なると一方向にトレンドが出やすくなります。こういったイレギュラーな動きの反動を狙った投資スタンスを得意としている投資家もいます。

なお、ファンド勢の資金流入が限られている中小型株などでは、個人投資家主体の資金によって大きく変動する傾向があります。特に決算時期になると、日替わり的な物色に向かいやすくなります。そのため、たとえば第1四半期で良好な決算を発表し急伸した銘柄なども、数日経てば利益確定の売りが優勢となり、何事もなかったかのように、商いも細っていくという銘柄は少なくありません。ただし、決算好調の要因をおさえておけば、第2四半期を予想することができ、先回り的に参戦することも可能です。


PERやPBRが当てにならない今どきの相場

さて、投資を行ううえでテクニカル(バリエーション面、需給含め)に着目する方は多いはずです。テクニカル指標では、その時々において「うまくハマる」ものが出てきます。そして、そのテクニカル指標が上手く機能する銘柄が全体的に市場に増えてくる傾向がありますが、それはそのテクニカル指標に関心を持ち始めた市場参加者が増えてきたことが一因です。一方で、外部要因などの影響から機関投資家の商いが細り、市場参加者が限られてくる状況になると、個人投資家中心のなかで、よりテクニカルに反応を見せる傾向がうかがえます。

また、既に機能性が低下している指標などもあります。たとえば「PER(株価収益率)」や「PBR(株価純資産倍率)」がその一例でしょう。また、JPX400が組成されたときには、対象条件として挙げられた「ROE(自己資本利益率)」に多くの市場参加者が着目しました。

機能性が低下と前段で表現しましたが、そもそもPERやPBRについては割安を計る指標です。多くの銘柄が買われ、それでも買える銘柄を探るような状況下で有効性を本来発揮するものです。しかし、現状の市場では低PER、低PBRの銘柄とはいえども、調整が長期化している銘柄が多いのが現状です。資金があふれるほど潤沢にあれば問題ないでしょうが、世界的な金融引き締めのなかでキャパシティは低下しており、投資資金の大勢はそういった割安な銘柄の物色に割く余裕はないといったところでしょうか。

そのほか、テクニカルを投資に活用する際には、さまざまな指標を見ておく必要があります。投資家の多くは、これまで対象としていたテクニカル指標が崩れたとしても、都合の良い別のテクニカル指標を探して自分を落ち着かせます。これが損切りできない1つの要因となっている面があるのではないでしょうか?

また、強いトレンドを形成している銘柄において、過熱を冷ます調整を確認するうえでボリンジャーバンド(*1)などトレンド系のテクニカル指標は相性が良い反面、ストキャスティクス(*2)など逆張り指標を組み合わせてしまうと、下落過程での「売られ過ぎシグナル発生」によって売却をとどまらせ、結局は売れなくなってしまうことがあります。自分が期待していたテクニカルが機能しなくなった場合は、たとえその後に反転したとしても、それは運になりますので、きっぱり外しましょう。

そのほか、物色の手掛かり材料の1つとして「テーマ」があります。政府が打ち出す政策などには、「国策に売りなし」といった相場格言もある通り、テーマのメインどころになります。しかし、それ以外にも日々の生活の中でもさまざまな投資ヒントはあります。テーマ銘柄の発掘方法については、次回紹介させていただきます。


*1 ボリンジャーバンドは、移動平均線とその上下2本ずつの標準偏差からなる5本のラインで構成されるテクニカル分析です。ラインは上から+2σ(シグマ)、+1σ、移動平均線、-1σ、-2σとなっており、+2σと-2σの間に株価が収まる確率は、統計上95.45%とされています。


*2 ストキャスティクスは、「売られ過ぎ」や「買われ過ぎ」を示すオシレーター系と呼ばれるテクニカル分析です。逆張りでエントリー(売買)する際に活用されます。


author
村瀬智一
むらせ・ともかず

大東証券(現みずほ証券)を経て、金融情報会社のフィスコで情報配信部長として活躍。2018年に投資情報サービス会社「RAKAN RICERCA(ラカンリチェルカ)」を設立。株式市場の潮流や需給、経済の動きなどから関連銘柄を発掘していく。IPO銘柄や中小型株に詳しく、マネー雑誌や投資系サイトなどでも執筆多数。


本稿執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。

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