AI・IoT時代の到来が言われて久しいですが、最近ではバーチャル空間で人間同士が実社会さながらにコミュニケーションを楽しむことができるメタバースや、我々が日常使うお金と同様に財産的価値をやり取りできる暗号資産が広がるなど、“デジタルの進化”が顕著となっています。
そのなか、こうした流れを支えるコンピューターの進化も加速しています。膨大なデータを処理することができるスーパーコンピューター(スパコン)の更に先を行くものとして、超高速計算機「量子コンピューター」が注目されています。
従来型のコンピューターは「0もしくは1」の二進法によってデータを処理しており、これはスパコンであっても一緒です。
対して、量子コンピューターは物質の量子力学的な性質を利用しており、ひとつの量子が「0であり、かつ1でもある」という重ね合わせの状態を用いることで、これまでには想像もできなかった高速な計算を行うことができるのです。
スパコンで約1万年かかる計算問題を量子コンピューターでは数分で解き終えてしまうという、にわかには信じられないパフォーマンスを上げることも可能です。
夢物語のようですが、これは2019に米IT大手グーグルの研究チームが実証実験で明らかにしたことです。
当時大きな話題となったので、記憶している方も多いのではないでしょうか。
岸田政権では「新しい資本主義」の重要課題の一つとして量子コンピューター分野に注力する姿勢を示しており、株式市場でも関連銘柄に熱い視線が注がれています。
国内ではNEC<6701>、富士通<6702>、日立製作所<6501>といった大手電機メーカーのほか、通信大手のNTT<9432>が早くから同分野に力を入れています。
また、これらより時価総額が小さめの企業ではフィックスターズ<3687>、HPCシステムズ<6597>、テラスカイ<3915>などが有力対象として折に触れ投資家の関心を集めることが多いようです。
量子力学の原理を応用したコンピューターのことで、電子などの極微の世界で起こる物理現象を利用して性能を飛躍的に向上できるのが特徴です。
スーパーコンピューターでは何千年も要する演算をわずか数時間で完結するとされており、また、IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)分野の発展にも大きく貢献するとみられています。
既に米では年200億円を投じて開発を進めているほか、英政府も5年で500億円弱を投資、欧州連合(EU)も2019年から10年で約1250億円規模の大型プロジェクトを立ち上げる計画があります。
日本では2018年度から300億円を集中的に投じて開発を支援しており、今後、開発競争が活発化しそうです。