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給料はほとんど、その人の「スキル」ではなく「〇〇」から決まっている。
給料はほとんど、その人の「スキル」ではなく「〇〇」から決まっている。

給料はほとんど、その人の「スキル」ではなく「〇〇」から決まっている。

2024/02/15・提供元:安達裕哉

SNSには"給料が安い、という不満があふれていますが、実際のところ、自分の給料はどのように決められているのでしょうか?


転職屋さんは「市場価値を高めなさい」と言います。


しかし本当のところ、給料を上げるために必要な要因は、一体何なのでしょうか。

よく言われるような、ビジネススキルでしょうか?資格でしょうか?それともトークの能力でしょうか?


いいえ、それらも重要ですが、決定打にはなりません。

実はほとんどの場合、給与は〇〇から決まっています。




給与を上げたいと願い、キャリアの相談をするとき、一般的には「頑張って出世してください」か「もっと給与の良い会社に転職してください」というアドバイスが与えられることでしょう。


しかし、実際にはそれだけでは不十分、というよりもあまりアドバイスになっていない、と言うのが実態です。


出世によって給料を大きく上げるのにはかなり時間がかかるし、「給与のいい会社に転職してください」といっても、今より良ければどこでもいいのか、という疑問がわきます。



では一体、何をすべきなのでしょう。


実は、やるべきことは「儲かっている業界の会社に行く」という事だけなのです。


それに比べれば、資格を取ったり、トークの能力を磨くことは、2次的な話であると言わざるを得ません。



つまり「自分のやれること」から仕事を探すのではなく、思い切って 「儲かっている業界で、私が入り込める領域はあるか」から、仕事を探す のです。

この発想の転換が最も重要なポイントです。



まだ終身雇用が主流だった時代、転職は非常にコスパの悪いものでした。

年功序列の会社では、転職はほぼ確実に給料が下がる選択肢だったのです。


そのため、最も給料を上げるために良い方法は、社内を見て出世しやすそうな仕事をすることでした。

もっといえば、「自分を高く買ってくれる上司や部署」にアプローチすることが、給料を上げることの最適解でした。



しかし、今は社内ではなく「人材市場全体を見る人」が、高い給与を得ることができます。

どんなにスキルがあり、高い知能を持っていても、「人材市場」に対するアプローチ、すなわち求人マーケティングができない人物は高い報酬を得ることができません。



ここでは「求人マーケティング」という言葉を使いましたが、人材市場では自分自身を「商品」と見立てた場合に、


・どの会社に

・どのように差別化し

・どのように営業するか


を考えることですから、これは一種のBtoBマーケティングです。



では、どのように「求人マーケティング」をするのでしょうか。


そこで出てくるのが「儲かっている業界」を探すことです。

これは要するに「予算を持っている会社」を探すことと同じであり、BtoBマーケティングの基本です。


言うまでもないことですが、業界全体が成長している場所では、給料も上がりやすいです。

人材を強く欲してもいます。


逆に業界が衰退している場合は、そもそも人を雇いたがらないですし、力がある人しか給料が上がらない、いや、力があったとしても、給料は上がらないかもしれません。


マイナーな会社に就職しても、業界が良ければそれだけ給与が上がる可能性が高いですし、逆に有名な会社であっても業界を間違えれば、思った結果は得られないでしょう。



ではどの業界が儲かっているのか、知る方法はあるのでしょうか?


これは簡単です。業界全体の売上高や利益率は、四季報などの企業情報本を買うか、新卒が買うような業界研究本を見れば、すぐに調べることができます。


そして、調べてみるとわかるのですが、いかに自分が「会社名」を知らないか、一瞬で理解ができると思います。




こうして業界を眺めてみると、一定の傾向に気付くでしょう。


労働集約的で、原価が高い商売は、あまり儲かりません。

正確にいえば、企業オーナーはもうかりますが、従業員にはあまり恩恵が回ってこない。



事実、 厚生労働省のデータ(厚生労働省のデータ) によれば、給与の中央値が最も低い業種は、「生活関連サービス業」で、クリーニング、理容・美容室、旅行業、家事サービス業、冠婚葬祭業、映画館、遊園地などです。


二番目に給与の中央値が低いのは、生活必需物資などの製造業、三番目は宿泊・飲食サービス業となっています。


外食産業など原価が高く、かつ在庫が劣化しやすい産業に従業員として在籍していると、給料は上がりにくいと覚悟することが必要です。



また、「平均よりも良い給与が欲しい」「多少高い給与が欲しい」という事であれば、労働集約的ではない業界を選ぶことも重要です。

運輸、介護、建設、受託開発ITなど、労働集約的な仕事は、人を増やさないと売上が伸びないため、給与が上がりにくい。


このような場合は、人を増やさなくても売上を伸ばせる会社、たとえばメディアを運営する企業に在籍することが良いかもしれません。



また寡占状態の業界に在籍するのも、給料の観点からは合理的です。いくら業界全体が成長しているからといっても、新規参入が激しい業界にいては企業が疲弊します。

たとえば、製薬業界などは在籍するのに良い業界でしょう。


とはいえ、主力製品となる薬の特許切れが起きるたびに、大規模なリストラがあるので、製薬会社に職を求めるのであれば特許などに関する研究は必要でしょう。



また、「会員」ビジネスや、ストックビジネスを行っている会社を探すことも良いです。

いわゆる、サブスクで成功している会社は非常に強い。


サブスクと言うと、Netflixなどのコンテンツ配信会社を思い浮かべる人も多いかもしれませんが、たとえば携帯電話キャリアや保険会社、あるいはSaaSの運営会社などです。彼らは景気の変動に非常に強い。


よく見ると、世の中には大小さまざまな会員ビジネスが数多く存在していますので、マイナーな会社でも良い会社はたくさんあります。



「儲かっている」の定義はさまざまあります。しかし、給与の原資を考えるならば、少なくとも経常利益率が10%以上、欲をいえば30%以上の会社に在籍したいものです。


逆に、日本の会社の平均的な経常利益率は1%〜5%程度でほとんど儲けが出ていませんから、オーナーへ収益が還元されてしまえば、それ以上は従業員に回すことができないのです。




もし、あなたが「給与が上がらない」と悩んでいるのであれば、変な資格を取ったり、スキルアップに勤しむことは(悪くはないですが)いったん踏みとどまってください。


もしかしたら、給料が低いのはあなたのスキルが低い、あるいは「他の人との違いがない」からではなく、あなたが頑張っていないのでもなく、単純にいえば「儲からない会社と業界」にいる可能性があります。


実際、同じくらいのスキルや能力であっても、業界が違えば給与が倍程度違う、ということは普通です。

要するに、単なる一個人の「スキル」が給与に与える影響は小さいのです。いくら頑張っても、自分が在籍している業界がダメであれば、給与は増えません。



転職は一種のBtoBマーケティングであると、上で述べました。


そしてマーケティングの初心者が陥りがちな罠は、「顧客がいない所でいくらがんばって商売をしても売上が伸びない」ということです。


ですから大前提として「業界の目利き」「会社の目利き」が必要とされます。それを知って初めて、「良い業界で働くために+αでしなければならないこと」「他業種へどのように自分をアピールするか」という、いわば販売施策が必要になってきます。


だから「資格を取る」「スキルを身につける」というのは漫然とやるのではなく、「儲かっている業界が欲しがる資格やスキル」を持たなければいけません。漫然と英語を学んでも、流行りの資格を取っても、給与が上がらないのはそのためです。




最も簡単に給与を上げる方法は、知り合いに頼んで『儲かっている業界』の転職先を紹介していただくこと、そしてその業界に入ったならば、一通り仕事をしてノウハウを得て、スキルと経験を身につけることです。

スキルが身についたら、あとはその業界内で、給与の比較的良い会社を渡り歩くだけ。


実はこれは「外資系ばかりに職を求める人」のお決まりのパターンです。

そう考えると、日本も外資系を渡り歩く人のようなキャリア形成が求められてきているのかもしれません。



さて、ここまで来れば冒頭の問いの答えはもう明確です。



給料を上げるために必要な要因は、一体何なのでしょうか。

ビジネススキルでしょうか?資格でしょうか?それともトークの能力でしょうか?


いいえ、それらも重要ですが、決定打にはなりません。


給与は「どの業界で仕事をしているか」でほぼ決まっています。

したがって、やるべきことは「給与の高い業界の企業に対するBtoBマーケティング」です。


就活の時に「業界研究をせよ」とよく言われます。

実際、なぜそれが必要なのかといえば、「どの業界に飛び込むか」で、大きく生涯で稼げる金額が変わってくるからなのです。


健闘を祈ります。



本稿執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
最終的な投資判断、金融商品のご選択に際しては、お客様自身の判断でお取り組みをお願いいたします。


安達裕哉
あだちゆうや

1975年生まれ。デロイト トーマツ コンサルティング(現アビームコンサルティング)に入社後、品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事。その後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。
大阪支社長、東京支社長を歴任したのちに独立。現在はマーケティング会社「ティネクト株式会社」の経営者として、コンサルティング、webメディアの運営支援、記事執筆などを行う。


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