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アメリカFRBの利上げ・利下げは日本にどう影響する?
アメリカFRBの利上げ・利下げは日本にどう影響する?

アメリカFRBの利上げ・利下げは日本にどう影響する?

2023/08/01に公開(最終更新:2024/10/31)
提供元:Money Canvas

「FRBによる利上げ・利下げ」というフレーズを、ニュースで耳にしたことはありますか?

FRBとは「Federal Reserve Board」(連邦準備制度理事会)の略で、アメリカの中央銀行制度における最高意思決定機関です。
日本での日本銀行にあたる存在で、利上げや利下げなどを決定します。

アメリカの利上げや利下げの話題が、なぜ日本のニュースで取り上げられるのでしょうか?
アメリカの金利が日本の経済や株価に与える影響について解説します。


FRBと利上げ・利下げ

FRBが金融政策の意思決定のために開く会合が「FOMC」です。日本語では「連邦公開市場委員会」と呼ばれます。年8回実施され、現在の景況判断や政策金利の利上げ・利下げの方針をこの会合で決定します。
その決定には、米国の雇用情勢を調査した経済指標である米国雇用統計などが大いに影響を与えています。FOMC会合終了後に発表される声明文や議事録は、金融政策の方向性を判断する材料になることから、投資家に重要視されています。
まず、「利上げ」「利下げ」と株価の関係について確認しましょう。


金利と株価の関係

政策金利とは、景気や物価の安定などを目的に中央銀行が設定する短期金利のことで、金融機関の預金金利や貸出金利などに影響を与えます。
この政策金利が利上げ、または利下げすることで、一般的には下記のような現象が起きやすくなります。


FRBと利上げ・利下げ

金利と株価の関係
(出所:「会社の株価の決まり方」東京証券取引所)


中央銀行は、景気が悪い時には金利を引き下げて企業の資金調達を円滑にし、景気回復を狙います。逆に景気が過熱しているときは金利を上げて経済活動を抑制する、というさじ加減で金融政策を決めています。

この仕組みは日本もアメリカも同じです。


アメリカの利上げ・利下げと景気

現在のアメリカの金利と景気の様子を見てみましょう。


2022年3月以降、FRBは景気が過熱しているとの判断から政策金利を引き上げ続けてきました。
しかし、インフレ傾向の落ち着きや失業率の低下などを理由に2023年7月のFOMCでの金利引き上げを最後に、それ以降は金利を据え置くことを決定しました。*2

そして、過去2年にわたる歴史的な金融引き締めの後、2024年9月のFOMCで、FRBは0.5%の大幅な利下げを決定しました。これは実に4年半ぶりの利下げです。
FRB議長は、利下げに踏み切った理由として、雇用の伸びが鈍化するなど労働市場の減速を踏まえたものだという考えを示しました。*3


アメリカの利上げ・利下げは日本経済にどう影響する?

アメリカの利上げ・利下げについては、日本経済にも影響を与えます。 大きく3つのポイントをご紹介します。


日本の株価への影響

まず1つ目は、株価です。
一般的に利上げすると企業は借り入れ利息の負担が大きくなるので、利益は少なくなり、株価は下がりやすいと言われています。逆に、利下げすると企業業績が良くなるので株価は上がります。

また、アメリカの株価と日本の株価は連動する傾向があります。 2008年のリーマン・ショックがその典型で、このときは日本だけでなく世界中で株価が大きく下落しました。
アメリカの経済活動が活発で株価が上昇すれば日本の株価も上昇する傾向があり、一方で株価が大幅に下落すれば、同じく日本の株価も下落する傾向があります。


為替相場への影響

2つ目は為替相場です。
アメリカで利上げが続くと、投資家は円よりも金利が高いドル建ての運用に切り替える傾向が強まります。その結果、ドルを買って円を売る動きが進み、円安ドル高が進行します。
逆に、アメリカで利下げが続くと円高ドル安が進行します。

実際、2024年9月にFRBが0.5%の利下げを公表した後、「日米金利差が縮小するのでは」という予測から、9月17日の為替相場は一時1ドル140円台半ばまで値上がりしました。

しかし、FRB議長の発言により今後の利下げには慎重な姿勢が示されました。
また、日本の動きとして、2024年7月の利上げ以降は金利が据え置かれていることや、10月2日に石破茂首相が「現在、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」と発言したことから、日米金利差の縮小ペースは緩やかであるとみられています。*4

〇日米金利差と為替や株価の関連性について、くわしくは別記事で解説しています。


物価への影響

3つ目は物価です。
利上げにより円安が進行した場合、海外からの輸入品価格が高騰し、国内物価は上昇します。日本は食料品やエネルギー資源の多くを輸入に頼っているので、日常生活にも大きな影響を与えます。
逆に、利下げにより円高が進行すれば輸入コストも減少し、物価は下がるでしょう。


〇円安について、くわしくは別記事で解説しています。


政策金利の決定は国内外の経済に影響

アメリカの利上げ・利下げが及ぼす影響は、日米間だけのものではありません。

FRBや日本銀行だけでなく、イギリスやEUなど他の国や地域にも中央銀行と意思決定のための会合があり、それぞれの景気や経済状況に応じて政策金利などを決定しています。

イギリスではイングランド銀行(BOE)の金融政策委員会(MPC)、EUでは欧州中央銀行(ECB)の政策理事会(ECB理事会)が、中央銀行と意思決定の会合に相当します。
中央銀行による政策金利の決定は、その国だけでなく他国の経済にも影響を及ぼす可能性があるため、重要かつ難しいものなのです。

アメリカでは2024年内に0.5%の利下げが決定しました。さらなる利下げには慎重姿勢であるとみられていますが、今後利下げが続けばアメリカの株価につられて日本の株価も上昇する可能性があります。
さらに、利下げにより円高が進むと輸入コストの負担が少なくなるため国内の物価上昇が落ち着くかもしれません。

このように、経済的な結びつきの強いアメリカの利上げ・利下げは日本経済にも大きな影響をもたらすため、FOMCや経済指標の動向にはよく注目しましょう。



本稿執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。


出典
*1 日本銀行「米国や欧州の金融政策決定会合の枠組みや政策金利の推移を教えてください。」
*2 時事エクイティ「FF金利はピークかその近くにある=パウエル議長FOMC記者会見スピーチ」
*3 NHK「米FRB 0.5%の利下げ決定 利下げは4年半ぶり」
*4 日本経済新聞「石破茂首相「追加利上げ環境にない」 日銀植田総裁と面会」

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