「孫の教育資金を捻出するのに、息子や娘が苦労している。自分は比較的お金に余裕があるのだが……」
「学費を捻出するため、アルバイトをしながら大学に通っている孫が大変そうなので、助けてあげたい……」
そんなときは「教育資金の一括贈与」を検討しましょう。非課税特例を利用すれば、無税または少額の課税のみで、孫の教育資金をサポートすることができます。
本記事では教育資金の一括贈与の非課税特例*1について、要件・限度額・利用方法・注意点・相談先などを解説します。
「教育資金の一括贈与の非課税特例」とは、父母や祖父母などから受けた教育資金の贈与のうち、最大1,500万円まで贈与税が非課税となる特例です。
教育資金の一括贈与を行うと、学費などを苦労して捻出している子どもや孫をサポートすることができます。
通常であれば、1年間に110万円を超える贈与を受けると贈与税が課されますが、教育資金の一括贈与に関する非課税特例を活用すれば、最大1,500万円までの贈与を無税で受けることが可能です。
教育資金の一括贈与の非課税特例を利用するためには、以下の要件を満たす必要があります。
※延長される可能性があります。
教育資金の一括贈与の非課税特例の限度額は、1,500万円です。ただし、学校等以外の者(後述)に対する支払いは、そのうち500万円が限度とされています。
教育資金の一括贈与を利用する際には、以下の流れで手続きを行う必要があります。
教育資金の一括贈与の非課税特例を利用して贈与を受け、金融機関に預けられている資金は、教育資金として使ったことを証明しなければ引き出すことができません。
教育資金として認められる使途の例は、以下のとおりです。*2
(*)「学校等」とは、学校教育法で定められた幼稚園、小・中学校、高等学校、大学(院)、専修学校及び各種学校、一定の外国の教育施設、認定こども園または保育所などをいいます。
※受贈者が23歳に達した日の翌日以降に支払われる(c)~(e)の金銭については、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練の受講費用に限ります。
教育資金口座に預けられた金銭を引き出すためには、上記の使途を証明する領収書などを金融機関に提出する必要があります。
教育資金の一括贈与の非課税特例の限度額は1,500万円ですが、学校等以外の者に対して支払う金銭については、500万円までしか出金できません。
教育資金の一括贈与の非課税特例は、贈与税の負担を軽減できる便利な制度ですが、利用に当たっては以下のポイントに注意しましょう。
以下の事由が発生したときは、金融機関との間で締結した教育資金口座に係る契約が終了します。
※学校等に在学中であり、または教育訓練を受けており、その旨を金融機関等の営業所等に届け出た場合を除きます。
教育資金口座に係る契約が終了した時点で、その口座に教育資金として使いきれなかった残額がある場合は、贈与税または相続税の課税対象となります。
教育資金口座には、贈与する資金を一括で預けなくても構いません。何回かに分けて追加拠出をすることもできます。
できる限り使い残しがないように、実際の支出を見極めながら資金を預け入れましょう。
教育資金口座から出金する際には、実際に教育資金として支出したことが分かる領収書などを金融機関に提出しなければならず、手間がかかります。
出金の期限は原則として、実際に費用を支払った日から1年後です。面倒だからと言って手続きを怠っていると、出金できなくなってしまうおそれがあるので要注意です。
また、教育資金口座に残高がある限り、贈与者や受贈者が自らの意思で口座を解約して出金することもできない点にご注意ください。
教育資金の一括贈与の特例を活用すると、子どもや孫に充実した教育を受けさせるため、資金面からサポートすることができます。
受けた贈与のうち、年間110万円を超える部分については原則として贈与税が課されますが、教育資金の一括贈与の特例を利用すれば、総額1,500万円まで非課税となる点も大きなメリットです。
利用開始や出金の手続きが少々面倒ですが、子どもや孫の教育を資金面からサポートしたい方は、教育資金の一括贈与の非課税特例の利用をご検討ください。
本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
出典
*1 国税庁「No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」
*2 国税庁「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし」