景気動向指数は、国内の景気動向を把握するのに役立つ経済指標です。一般的に、株価は景気に先行して動く傾向にあります。
株式投資や投資信託で資産形成に取り組むなら、景気動向指数の先行指数を活用し、今後の景気動向を把握することが重要です。
この記事では、景気動向指数の先行指数の概要と採用系列の種類、景気に先行して動く理由を解説します。
景気動向指数とは、さまざまな経済活動での重要かつ景気に敏感に反応する指標の動きを統合することによって、景気の現状把握や将来予測に役立てるために作られた指標です。内閣府が毎月公表しています。*1
景気動向指数には、景気変動の大きさやテンポ(量感)を示す「CI(コンポジット・インデックス)」と、景気の各経済部門への波及の度合いを示す「DI(ディフュージョン・インデックス」の2つがあります。
また、CIとDIにはそれぞれ以下3種類の指数があります。
この記事では先行指数に焦点をあて、景気に先行して動く理由や資産運用との関連性などを紹介していきます。
景気動向指数の先行指数には、以下11の系列が採用されています。
景気変動を適切にとらえるために、多くの採用系列では季節調整値が用いられています。季節調整値とは、季節要因による変動を除去した値のことです。*2
先ほど示した先行指数の採用系列には、在庫や新規求人数、設備投資、消費など景気の変動要因に関する指標が含まれています。
ここでは、景気の主な変動要因ごとに、先行指数の採用系列が景気に先行して動く理由を見ていきましょう。
企業は、商品が売れているときは出荷増に対応するために生産を増やし、在庫を積み上げます。その後、需要が落ち着くと在庫が増加するため、生産を抑制します。
そして、景気が上向いて出荷が増加すると在庫が足りなくなり、再び生産を増やします。この一連の流れを景気循環といいます。*3
景気と在庫にはこのような関係があることから、在庫循環がどの局面にあるかを探ることで、景気動向を予測しやすくなります。
新規求人数とは、公共職業安定所(ハローワーク)が取り扱う新規の求人数です。企業は、景気の陰りを感じると新たな求人活動を控えるようになります。
そのため、新規求人数は特に景気後退の予兆に敏感に反応する傾向にあります。*4
設備投資とは、民間企業が工場新設や新たな生産機械などの設備に資金を投じることです。
国内の設備投資が増えると、雇用や賃金なども増え、消費も伸びるという循環が起きやすくなります。そのため、設備投資は景気動向を予測するうえで重要な指標といえます。*5
たとえば、機械受注は設備投資用の機械の受注額を集計したものです。実際の設備投資よりも6~9ヵ月ほど先行するとされています。
機械メーカーへの発注が多くなると、その後の生産活動が増える見通しが強まるため、景気の先行指標とされています。*6
住宅投資は、ハウスメーカーや住宅関連企業の収益および雇用の増加につながります。
また、建築後は入居者が新居に必要な家電製品を購入したり、運送業者に引越しを依頼したりするなど消費にも影響するため、経済への波及効果が大きいといえます。*7
新設住宅着工床面積は、建築基準法に基づいて建築主から都道府県知事に提出された建築工事届のうち、住宅について集計した指標です。
速報性が高く、建築着工の段階をとらえた指標であるため、景気に対して先行性があるとされています。
景気は、消費者の心理にも影響を受けます。たとえば、消費者が自身の収入などに楽観的な見通しを持てば積極的に消費や投資を行うため、景気拡大が期待できるでしょう。
一方、将来の見通しについて不安を感じていれば、消費や投資を控えるようになるため、景気悪化を招く恐れがあります。*8
消費者態度指数は、今後の暮らし向きの見通しなど消費者の意識を捉えることができるため、景気動向指数の先行指数に採用されています。*9
「株価は景気の先行きを映す鏡」といわれており、株価の動きは景気に先行する傾向にあります。景気の先行きを考える際は、株価の動きに注目することが重要です。*10
また、日銀は景気や物価の安定を図るために、金融市場の通貨流通量を調節しています。一般的に、景気が悪いときは日銀が市場から国債などを購入し、通貨流通量を増やします。
反対に、景気が過熱気味のときは日銀が保有している国債などを市場で売却し、通貨流通量を減らします。*11
このような関係にあるため、先行指数として東証株価指数やマネーストックが採用されています。
マネーストックとは、金融部門から経済全体に供給されている通貨の総量です。具体的には、法人や個人、地方公共団体などが保有する通貨の残高を集計しています。*12
中小企業の業績は、大企業に比べて景気動向に敏感に反応する傾向にあります。*13
中小企業売上げ見通しDIは、中小企業の今後の売上げ見通しを指数化したもので、景気に先行性を持つとされています。
中小企業は今後3ヵ月の売上げ見通しについて「増加」「横ばい」「減少」の3択で回答し、増加と回答した割合から減少と回答した割合を差し引くことで算出します。
景気動向指数の先行指数は、企業の投資行動や消費者の心理、金融市場の動きなど、景気に先行性を持つさまざまな指標を組み合わせたものです。
先行指数に注目することで、景気の転換点をとらえやすくなります。
景気は、株価や金利などに大きな影響を与えます。株式投資などで資産形成に取り組むなら、景気動向を把握するために、先行指数の動きを定期的に確認しておきましょう。
本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
最終的な投資判断、金融商品のご選択に際しては、お客さまご自身の判断でお取り組みをお願いいたします。
出典
*1 内閣府「景気動向指数の利用の手引」
*2 内閣府「用語の解説(景気動向指数)」
*3 第一生命経済研究所「在庫の動きで景気が分かる?」
*4 国立国会図書館デジタルコレクション「景気と新規求人数」
*5 日本経済新聞「設備投資」
*6 日本経済新聞「機械受注」
*7 国立国会図書館デジタルコレクション「景気の先行指標③ 新設住宅着工床面積」
*8 経済産業研究所「復活した景気心理説と新しい経済対策の可能性」
*9 内閣府「消費動向調査(令和6(2024)年12月実施分)結果の概要P1」
*10 東証マネ部「世界景気を先取りして株式投資に活かす」
*11 三菱UFJ銀行「売りオペ・買いオペって説明できる?金融政策の仕組みと基礎用語をおさらいしよう」
*12 日本銀行「「マネーストック」とは何ですか?」
*13 国立国会図書館デジタルコレクション「景気の先行指標④ 中小企業売上げ見通しD.I.」
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