年金に関しては、請求手続きについて理解しておかないと受給資格を得たときに慌ててしまう恐れがあります。
また、年金には老齢年金や障害年金、遺族年金などさまざまな種類があり、受給する年金によって手続き方法が異なるので注意が必要です。
そこで今回は、各年金の請求手続きの方法について解説します 。
正しい請求方法を理解して、安心して年金を受給できる準備を整えましょう。
老齢年金は、原則として65歳から支給開始となります 。65歳に到達したら自動的に受給できるわけではなく、請求手続きを経て、はじめて支給開始となる点は押さえておきましょう。
なお、老齢年金を受給する要件は「保険料納付済期間と保険料免除期間などを合算した受給資格期間が10年以上あること」です 。
以下で、老齢年金の請求手続きについて解説していきます。
特別支給の老齢厚生年金を受け取る権利が発生する人の場合、受給開始年齢に到達する約3ヵ月前に「年金請求書(事前送付用)」と年金の請求手続きの案内が届きます 。
「年金請求書(事前送付用)」には基礎年金番号や氏名、年金加入記録などがあらかじめ印字されています。通常は日本年金機構から送られますが、最終加入記録が共済組合の場合は当該共済組合から送付されるため、注意しましょう。
また、老齢基礎年金を受け取る権利が発生する人の場合も、受給開始年齢である65歳に到達する約3ヵ月前に「年金請求書(事前送付用)」が届きます。
年金請求書が届いたら、必要事項を記載したうえで添付書類とともに年金事務所に提出します 。
年金請求書に記載されている情報に誤りがあるときや漏れがあるときは、請求する前に近くの年金事務所へ問い合わせましょう。
年金請求書を提出してから約1~2ヵ月後に「年金証書・年金決定通知書」が届き、さらに1~2ヵ月後に年金振込通知書・年金支払通知書または年金送金通知書が届きます。
年金振込通知書などが届いたら年金の受け取りが始まり、原則偶数月の15日に年金が振り込まれるようになります。
また、年金の請求をせずに年金を受けられるようになったときから5年が経過すると、時効により5年を過ぎた分の年金については受け取れなくなる場合があるので注意しましょう。
障害基礎年金を受給するためには、下記のすべての支給要件を満たす必要があります 。*4
初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上ある
※ただし初診日が令和8年4月1日前にあるときは、初診日において65歳未満であれば初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよい
※20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合、納付要件は不要
障害基礎年金の請求は、年金請求書と以下の添付書類を用意したうえで、市区町村役場の窓口に提出します(初診日が国民年金第3号被保険者期間中の場合は、年金事務所または年金相談センター)*5。
18歳到達年度末までの子や障害の原因が第三者行為の場合は、必要書類となる添付書類が異なります。
また、障害基礎年金を請求するタイミングは、障害の状態に該当した時期に応じて2つの請求方法があります*4。
いずれにしても「請求しないと受給できない」点は、きちんと押さえておきましょう。
障害厚生年金を受給するためには、下記の要件に該当している必要があります 。*6
初診日の前日に初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上ある
※ただし初診日が令和8年4月1日前にあるときは、初診日において65歳未満であれば、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよい
障害厚生年金の請求で必要となる書類*7、請求するタイミング*6は障害基礎年金と同じです。
ただし、請求書類の提出先は年金事務所または年金相談センターになります*7。
遺族基礎年金を受給するには、以下のいずれかの要件を満たしている必要があります 。*8
1および2に関しては、死亡日の前日において保険料納付済期間が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。ただし死亡日が令和8年3月末日までのときは、死亡した方が65歳未満であれば死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければ問題ありません。
3および4に関しては、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上あることが必要です。
遺族基礎年金の受給対象者は「子のある配偶者」か「子」です。子のない配偶者や直系尊属は、遺族基礎年金を受給できません*9。
要件を満たしている場合は、年金支給書と下記の添付資料を住所地の市区町村役場の窓口に提出します(死亡日が国民年金第3号被保険者期間中の場合は、近くの年金事務所または年金相談センター)*9。
死亡の原因が第三者行為などのときは、追加で書類が必要となります。
遺族厚生年金を受給するには、まず以下のいずれかの要件を満たしている必要があります。*10
1および2に関しては、死亡日の前日において保険料納付済期間が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。ただし死亡日が令和8年3月末日までのときは、死亡した方が65歳未満であれば死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければ問題ありません。
4および5に関しては、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上あることが必要です。
遺族厚生年金の受給対象者は、死亡した人に生計を維持されていた以下の遺族のうち、最も優先順位の高い人です*10。
夫・父母・祖父母が遺族厚生年金を受給できるのは、60歳からです。ただし夫に関しては遺族基礎年金をあわせて受給できる場合に限り、55歳から60歳の間でも遺族厚生年金を受給できます。
遺族厚生年金を請求するときに必要な書類は遺族基礎年金と同じですが、請求先は年金事務所または年金相談センターになります*11。
年金を受給するには、日本年金機構や市区町村役場の窓口に対して請求を行う必要があります。
いずれの年金も、自動的に支給されるわけではなく、請求の手続きが必要である点を押さえておきましょう。
また、年金には時効があるため、請求できるときから5年が経過すると、遡って受給できなくなります。
年金の受給要件や請求できるタイミングをきちんと把握し、適切に年金を受給しましょう。
産前産後の保険料免除についての解説はこちらです
→産前産後の保険料免除制度について
本稿執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
出典
*1日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
*2日本年金機構 老齢年金請求書の事前送付
*3日本年金機構 老齢年金の請求手続き
*4日本年金機構 障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額
*5日本年金機構 障害基礎年金を受けられるとき
*6日本年金機構 障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額
*7日本年金機構 障害厚生年金を受けられるとき
*8日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
*9遺族基礎年金 遺族基礎年金を受けられるとき
*10日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
*11日本年金機構 遺族厚生年金を受けられるとき