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【弁護士が解説】2024年から変わった相続税|生前贈与加算は7年・相続時精算課税の基礎控除など
【弁護士が解説】2024年から変わった相続税|生前贈与加算は7年・相続時精算課税の基礎控除など

【弁護士が解説】2024年から変わった相続税|生前贈与加算は7年・相続時精算課税の基礎控除など

2024/02/06・提供元:阿部由羅

2024年以降、生前贈与や相続に対する課税の方法が大幅に変更されます。具体的には、生前贈与加算が3年から7年に変更される点や、相続時精算課税の基礎控除が新設される点などが重要です。

資産運用を考える上で、税金に関する知識は重要になることが多いので、最新の税制の内容を理解しておきましょう。


本記事では2024年より施行される、相続税に関する税制改正のポイントを解説します。


2024年施行|相続税に関する税制改正の目的

2022年12月23日に閣議決定された「令和5年度税制改正の大綱」*1では、相続税に関する以下の税制改正が盛り込まれました。同改正は、2024年1月1日から施行されることになっています(以下、同改正を「2024年改正」といいます)。


ポイント1|生前贈与加算が3年から7年に延長

ポイント2|相続時精算課税の基礎控除の新設

ポイント3|相続時精算課税における災害被害額の反映


2024年改正の目的は、贈与と相続に対する課税方法を近づけることによって、資産を移転する時期にかかわらず、公平・中立に課税を行うことです。


ポイント1は、相続税の課税対象となる贈与の範囲を広げています。ポイント2・3は相続時精算課税制度の選択を促すもので、こちらも相続税の課税対象となる贈与の範囲を広げることが意図されています。

税制改正のポイント1|生前贈与加算が3年から7年に延長

2024年改正の1つ目のポイントは、相続税に関する生前贈与加算*2の期間が従来の3年から7年に延長された点です。


相続税の生前贈与加算とは

「生前贈与加算」とは、被相続人が死亡する前の一定期間において、被相続人から受けた生前贈与に相続税を課す制度です。死期が迫った人が駆け込み的に生前贈与を行い、相続税の課税を逃れようとすることを防ぐために生前贈与加算が定められています。


生前贈与加算の期間において行われた贈与については、相続税が課されます。ただし、その贈与についてすでに贈与税を納めている場合は、納付済みの贈与税額が相続税額から控除されます。


生前贈与加算の期間延長によって生じる影響

2023年以前の税制では、生前贈与加算の期間は3年間とされていました。2024年改正により、生前贈与加算の期間が7年間に延長されました。

なお、相続発生の7年前から3年前までに行われた生前贈与については、その総額から100万円の控除を受けられます。


2024年改正による生前贈与加算の期間延長は、広く普及している「暦年贈与」を利用した相続税対策に影響を与えると見られています。


「暦年贈与」とは、贈与税の基礎控除(年間110万円)を利用した相続税対策の手法です。

基礎控除額を超えない金額の贈与を毎年受ければ、無税で財産を譲り受けることができます。

その一方で、受贈者が贈与者の相続人であれば、将来相続する財産は減るため、相続税の負担が軽減されます。


しかし、生前贈与加算の期間に行われた贈与については、贈与税の基礎控除の範囲内であっても相続税が課されるため、メリットを十分に享受できない場合があります。

2024年改正では、生前贈与加算の期間が3年から7年に延長されたため、従来の暦年贈与による相続税対策の効果は縮小すると考えられます。

税制改正のポイント2|相続時精算課税の基礎控除の新設

2024年改正の2つ目のポイントは、相続時精算課税*3について年間110万円の基礎控除が新設された点です。


相続時精算課税とは

「相続時精算課税」とは、贈与について相続発生後に相続税を課される代わりに、贈与税について総額2500万円までの特別控除を受けられる課税方式です。


贈与に対しては通常、1月1日から12月31日までに受けた贈与の総額について、毎年贈与税が課されます(=暦年課税)。

しかし、60歳以上の父母・祖父母などから18歳以上の子・孫などが受ける贈与については、税務署への届出によって相続時精算課税を選択できます。


相続時精算課税を活用すれば、本来であれば必要となる贈与税の納付を、相続発生後まで繰り延べられる点が大きなメリットです。


相続時精算課税の基礎控除の新設によって生じる影響

暦年課税が適用される贈与については、年間110万円の基礎控除が設けられています。これに対して、相続時精算課税が適用される贈与については従来、2500万円の特別控除以外に基礎控除を受けることはできませんでした。


しかし2024年改正により、相続時精算課税が適用される贈与についても、年間110万円の基礎控除を受けられるようになりました。


相続時精算課税における基礎控除の特徴は、暦年課税の場合と異なり、相続税に関する生前贈与加算の対象にもならない点です。

つまり相続税対策の観点からは、暦年課税によって贈与を受けるよりも、相続時精算課税によって贈与を受けた方が有利となります。


相続時精算課税制度は、贈与者と受贈者の年齢や続柄などによって、利用できるケースが制限されています。

しかし、2024年改正によって税制上有利になったことを踏まえて、相続時精算課税制度を利用できるケースにおいては、従来普及していた暦年贈与からシフトする傾向が進むと考えられます。

税制改正のポイント3|相続時精算課税における災害被害額の反映

2024年改正の3つ目のポイントは、相続時精算課税が適用される贈与によって取得した不動産につき、災害による被害額を相続税額に反映する変更が行われた点です。


相続時精算課税が適用される贈与については、贈与当時の評価額に対して、相続発生後に相続税が課されるのが原則です。

したがって、贈与後に財産価値が上がれば税制上有利になる反面、財産価値が下がれば不利になります。財産価値の下落による税負担の増大は、贈与者にとってのリスクです。


金銭の贈与であればこのようなリスクは無視できますが、不動産については災害によって滅失して無価値となってしまうこともあり得ます。


そこで2024年改正では、相続時精算課税が適用される贈与によって取得した不動産が災害によって被害を受けた場合は、被害相当額を相続税の基礎財産から控除できる旨の変更が行われました。これは、相続時精算課税に関する税制優遇策の一つといえます。

前述の基礎控除の新設と併せて、2つの税制優遇策が設けられた相続時精算課税制度は、今後さらに利用が進むものと考えられます。

まとめ

資産運用を行う上では、税金に関する知識を備えることは非常に重要です。


特に贈与税や相続税は、親世代から子世代へ財産を引き継ぐ際に問題となります。家族全体で資産運用のことを考えるに当たっては、贈与税や相続税の知識を備えておいた方がよいでしょう。


税制は毎年どこかが変更されていますが、贈与税や相続税に関する改正は、幅広い方に影響を与えるものです。ニュースや政府発表などに関心を持って、最新の税制の動向に注目してみましょう。


本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。



本稿執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。


出典
*1、財務省「令和5年度税制改正の大綱」
*2、国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」
*3、国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」



阿部 由羅
あべ ゆら

ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。

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