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なににお金を使うかで、その人の価値観がわかる
なににお金を使うかで、その人の価値観がわかる

なににお金を使うかで、その人の価値観がわかる

2024/02/08・提供元:雨宮紫苑

わたしはかなりのゲーマーで、いろんなゲームをやりこんでいる。

しかしそのなかで、どうしても理解できないことがある。


それは、ソシャゲ(ソーシャルゲーム)課金だ。


いったいなにが楽しいんだろう。

というわけで、思い切ってソシャゲーマーに聞いてみることにした。


ソシャゲ課金はゲームとしておもしろいのか?

わたしがゲームをおもしろいと感じるのは、昨日できなかったことができるようになる快感や、強敵を倒せたときの達成感、ようやくアイテムを集め終わったときの満足感などがあるからだ。


つまらない作業に耐えてレベリングして、繰り返し敵を倒してようやく装備をそろえて強敵に挑み、何度も何度も失敗して、それでも諦めずにひたすら練習を繰り返して……そしてようやく、ボスを倒す!!


……というのが、ゲームのおもしろさじゃないんだろうか?


だから、それらをお金で解決するソシャゲ課金の楽しさが、まったく理解できない。


強いアイテムをリアルマネー(ゲーム内通貨と分けるためゲーマーはこう呼ぶ)で買ったり、強いキャラをゲットするために課金していわゆるガチャをまわしたり。


強いアイテムを買えばクリアできるのなんて当然じゃん。努力していないから、ガチャで当たってもそこまで喜べないし、ハズレたら虚無感すごそうだし……。


ソシャゲ自体を否定するつもりはないが、純粋に「なにが楽しいんだろう?」という疑問を抱いていた。

上手・下手の差がないからこそゲームがおもしろい

ある日友だちとイタリアンでランチをしていたとき、その子がソシャゲプレイヤーであることを知った。


まわりにソシャゲ―マーがいないので驚きつつ、せっかくだから普段抱いていた「課金するのって楽しいの?」という疑問をぶつけることに。


彼女はカルボナーラを頬張りながら、「楽しいよ?」と即答。


「課金って本人のスキルが必要ないから、ゲームが下手でも平等に楽しめるんだよね。空き時間にちょこっとやるだけだから、強くなるために何時間も拘束されなくて楽だし」


なるほど!?

わたしは「課金したらうまくなる過程の楽しさがなくなる」と思っていたが、そもそも「上手・下手による差がない」ことに魅力を感じていたのか……!!


「それに、ソシャゲだからってなんでもお金で解決できるわけじゃないよ。毎日ログボ(ログインボーナス)やったり、ストーリー進めたりは自分でやんなきゃいけないし」


そういった実力を求められない作業が、ちょっとした暇つぶしにぴったりだという。


わたしはゲームに「努力の結果」を期待する一方で、彼女は「息抜きになる気楽な興奮」を求めている。


一生懸命はやりたくない。でも、なにかしらの「やった感」はほしい。

それを満たしてくれるのが、ソシャゲ課金なのだ。

「それって楽しいの?」に即答できる理由

せっかくなので、ついでに「課金したのにガチャでハズレばっかりだとムダだなって思わない?」とも聞いてみた。


わたしとしては、練習はすればするほどうまくなるけど、ガチャへの課金は額を増やしたところであたるとはかぎらないから、虚しくなる気がするのだ。


「ハズレてもなんとも思わないかな〜。割り切れる金額しか使ってないし。逆にわたしは、すごい努力してやりこむ気持ちがわかんない。がんばってもクリアできなかったら疲れない? お金のムダより時間のムダのほうが、わたしはイヤだな」


この考えは、目からウロコだった。


彼女からしたら、プレイスキルを磨く努力や時間を課金で済ませることでむしろ得をしている、くらいの気持ちなのだ。


わたしが「ソシャゲ課金って楽しいの?」と思っているのと同じように、彼女は「ゲームのために毎日何時間も努力するのって楽しいの?」と思っている。


もし彼女がそれをわたしに聞いたら、迷いなく「楽しいよ! 苦戦すればするほど燃えるし、費やした時間が長いほど達成感がある!」と即答するだろう。


そうか、だから彼女も、わたしのソシャゲ課金の楽しさに対する疑問に対して「楽しいよ」と即答したんだな。


自分のなかで大事にしたい価値観が明確なら、迷わず「それは自分にとっていいことだ」と答えられるのだ。

お金を使うもの=その人が大切にしていること

なにに価値を見出しお金を払うかは、人それぞれ。


以前、東京駅付近の居酒屋で飲み会をするとき、勤務先の大宮駅から東京駅まで新幹線に乗ってきた人がいた。


在来線なら、高崎線を使えば直通で33分。乗り換えが必要な路線でも、東京駅まで40分〜50分で到着する。それに対して、新幹線なら24分。


在来線は571円だが、新幹線で指定席を買えば3,190円(2024年1月8日の値段)。


乗車時間のちがいは、わずか15分程度。値段は5倍以上。


たいていの人は、大宮駅から東京駅まで新幹線で移動しようなんて思わない。でもその人は、「残業で飲み会に遅刻確定だったから一刻も早く着きたかったし、ゆっくり座りたかった」から、それだけのお金を払った。


少し早く着くこと、確実に座れることに、5倍以上のお金を払う価値があると考えたのだ。


また、「最近結婚式に呼ばれることが多い」と言っていた女友だちは、レンタルドレスサービスを使っていると言っていた。


ドレスを1着買って着まわせば安いし楽なのに、なんでわざわざ毎回ちがうドレスを選んで、借りて、返して、なんて面倒なことをするんだろう。


その友だちいわく、「毎回同じドレスだと味気ないし、結婚する人のイメージに合ったドレスを選んでいい結婚式にしてあげたい」のだそうだ。


彼女にとって「いい結婚式にするために最適なドレスを選ぶ」ことは、有料サービスを使うほどの価値があるらしい。


なににお金を使うかを知れば、その人がなにを大切にしているのかが理解できるのだ。

後悔しないお金の使い方をするために

お金の使い方は人それぞれで、価値を感じたものに支払う。


いやまぁ、あらためて書けば「そりゃそうだろ」という話ではあるんだけども。

でも、自分には理解できない=不要・価値がない、と考えてしまうことはだれにでもあると思う。


わたしが退職代行や運転代行サービスの存在を知ったとき、「そんなのだれが使うんだよ」と思った。仕事を辞めたきゃ辞めればいいし、お酒を飲むなら電車で行けばいいだろ、と。


でも実際にそういったサービスにお金を払う人が存在して、だからビジネスが成り立っているわけで。


「そんなものにお金を使うなんて」と否定することは簡単だが、それはその人の価値観を否定することにもなる。


だから、「そんなものにだれがお金を払うんだ」ではなく、「それにお金を払う人はなにに価値を感じたんだろう」と考えたほうがいい。


そうすれば自分の視野が広がるし、より多くの「自分が価値を感じるもの」に出会えるかもしれない。


そして、たとえ価値観が他人とちがっていようと、故意にだれかを苦しめるためでなければ好きにお金を使えばいい。自分のお金なのだから。


大事なのは、自分がなにに価値を感じるか自覚し、後悔しないお金の使い方をすること。


ソシャゲにお金をつぎ込むのも、1駅だけ新幹線に乗るのも、レンタルサービスでドレスを借りたり代行サービスを利用するのも、個人の自由。お金の使い方は人それぞれ。


お金を使う対象は、その人がなにを大切にしているか、どういう考えで生きているかを映す鏡なのだ。



雨宮紫苑

ドイツ在住フリーライター。Yahoo!ニュースや東洋経済オンライン、現代ビジネス、ハフィントンポストなどに寄稿。
著書に『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)がある。



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