
住宅ローンの返済中に余裕資金ができると、繰り上げ返済を検討するかもしれません。ローン残高の一部を前倒しで返済すれば利息負担を減らせますが、手元資金の減少や税制面の影響など注意すべき点もあります。繰り上げ返済はしない方がよいのでしょうか。
本コラムでは、住宅ローンの繰り上げ返済の仕組みや検討すべきタイミング、メリット・デメリットを詳しく解説します。
繰り上げ返済とは、毎月の返済額とは別に住宅ローン残高の一部または全部を前倒しで返済する方法です。元金が減少すれば、その元金に対して支払う予定だった利息も減少するため、総返済額の軽減につながります。*1
返済額が大きく、早い時期に実施するほど、繰り上げ返済の利息軽減効果は高くなるのが一般的です。基本的にはいつでも実施できますが、1回あたりの最低返済額や手数料は金融機関によって異なります。*2
繰り上げ返済には「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があります。どちらも総返済額を減らす効果がありますが、利息軽減効果や家計への影響は異なります。*3
期間短縮型は、毎月の返済額は変えずに返済期間を短くする方法です。返済額軽減型よりも、利息の軽減効果は大きくなります。少しでも利息負担を減らしたい人、住宅ローンの早期完済を目指す人に向いているでしょう。
返済額軽減型は、返済期間は変えずに毎月の返済額を引き下げる方法です。利息軽減効果は期間短縮型より小さいものの、毎月の返済額が軽減される点が魅力です。近い将来に収入の減少や教育費の負担増加などが予想される人は、返済額軽減型を検討するとよいでしょう。
繰り上げ返済を実際に行うかどうかは、家計状況や税制の影響を踏まえて慎重に検討する必要があります。代表的な判断のタイミングを確認していきましょう。
ボーナスや退職金、相続などで一時的に資金が増えた場合は、繰り上げ返済を検討しやすいタイミングです。余裕資金を返済に回すことで、住宅ローンの総返済額を減らせます。ボーナスや退職金は時期が予想できるため、返済資金を計画的に準備することが可能です。*4
住宅ローン控除の適用期間中(最大13年間)は、年末ローン残高に応じて所得税(または住民税)の控除を受けられます。控除を受けている間に資金を積み立てておき、適用期間が終了したタイミングで繰り上げ返済を行うのも一つの方法です。
ただし、借入金利が高い、または借入金額が多い場合などは、住宅ローン控除より繰り上げ返済を優先する方が有利になるケースもあります。シミュレーションツールを活用し、実際の利息軽減額を把握したうえで判断するとよいでしょう。*1
変動金利型の住宅ローンを利用している場合、金利が上昇すると毎月の返済額や総返済額の増加につながります。繰り上げ返済で元金を早めに減らしておけば、金利上昇の影響を抑えられる可能性があります。*5
近年は日銀が利上げを実施するなど、金利は上昇傾向にあります。変動金利で住宅ローンを組んでおり、将来の金利上昇に不安を感じるなら、余裕資金で繰り上げ返済を行うのも選択肢といえるでしょう。
住宅ローンの繰り上げ返済には、「利息負担を軽減できる」という大きな魅力があります。代表的なメリットを確認していきましょう。
繰り上げ返済の最大のメリットは、住宅ローンの返済負担を軽くできることです。借入金利や借入金額、返済のタイミングによっては、支払利息を数十万〜数百万円単位で削減できる可能性があります。*6
期間短縮型の繰り上げ返済を選択すると返済期間そのものが短くなるため、当初の予定より早く住宅ローンを完済できます。
定年前に完済できれば老後の住居費負担を抑えやすくなり、年金中心の生活に移行する際の安心感にもつながるでしょう。*1
株式や投資信託などで運用する場合、市場環境によって成果が変動します。一方、繰り上げ返済は、手元資金はなくなりますが、金利分だけ確実に支払利息を減らせます。価格変動リスクを避けたい人にとって、繰り上げ返済は堅実な家計改善策といえるでしょう。*7
住宅ローンの繰り上げ返済には、次のようなデメリットや注意点もあります。
住宅ローン控除には「返済期間が10年以上」という条件があります。*8
そのため、繰り上げ返済によって返済期間が10年未満になると、住宅ローン控除の対象外となる可能性があります。*9
繰り上げ返済を行う前に住宅ローンの状況を整理し、住宅ローン控除への影響を確認することが大切です。
繰り上げ返済を行うと、その分だけ手元の資金が減ることになります。無理に返済して手元のお金が少なくなると、急な出費に対応できなくなってしまいます。子どもの教育費や車の買い替えなど、大きな支出が控えている時期はなるべく避けたほうがよいでしょう。*4
大きな支出の予定はなくても、緊急資金として最低でも生活費3ヵ月~1年程度のお金を確保しておくと安心です。*10
団体信用生命保険(団信)は、万が一の際にローン残高が保険で完済される仕組みです。繰り上げ返済でローン残高が減ると、その分団信の保障額も小さくなります。万が一のときの保障が不足する場合は、新たな保険に加入することを検討しなくてはなりません。*4
団信に加入している場合は、家族構成や必要保障額を踏まえたうえで繰り上げ返済を行うかどうか判断しましょう。
金融機関によっては、繰り上げ返済を行う際に手数料がかかることがあります。手数料も含めて、利息や返済額の軽減効果を確認することが重要です。*3
また、繰り上げ返済の金額や回数などに制限が設けられている場合もあるため注意しましょう。
繰り上げ返済には総返済額を減らす効果がありますが、金利水準や資産形成の方針などを考慮して判断する必要があります。
一般的に、ローン金利が高いほど利息負担は大きくなるため、繰り上げ返済の効果も高まります。金利が高いローンを組んでいる人ほど、繰り上げ返済を優先させる方が効果的といえます。*6
反対に、低金利の場合は利息の軽減効果が限られるため、急いで返済するよりも手元資金を確保した方が合理的な場合もあるでしょう。
余裕資金がある場合は繰り上げ返済をせず、株式や投資信託などで運用するのも選択肢です。ローン金利を上回る利率で運用できるなら、繰り上げ返済よりも資産運用に回すほうが有利といえます。*7
非課税で運用できるNISAなどを活用すれば、運用益に課税されないため、より効率的な運用が可能です。*11
ただし、金利分だけ確実に支払利息を減らせる繰り上げ返済とは異なり、資産運用には元本割れリスクがあります。資産運用を優先させるのであれば、投資先を分散させるなど、リスクの低減を図ることが重要です。
住宅ローンの繰り上げ返済は、利息負担を確実に減らせる有効な手段です。一方で、タイミングによっては「住宅ローン控除を受けられなくなる」「手元資金の減少で急な出費に対応できなくなる」といったデメリットもあります。ローン金利を上回る利率で運用できるなら、資産運用を優先するのも選択肢です。
まずはシミュレーションで利息軽減効果を確認し、今後のライフプランも考慮したうえで、繰り上げ返済を行うかどうかを判断しましょう。
本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
本コラムの内容は、特定の金融商品やサービスを推奨あるいは勧誘を目的とするものではありません。
最終的な投資判断、金融商品のご選択に際しては、お客さまご自身の判断でお取り組みをお願いいたします。
出典
*1 三菱UFJ銀行「住宅ローンの繰り上げ返済(一部繰り上げ返済)とは?メリット・デメリットやタイミングについて解説します」
*2 全国銀行協会「Q. 住宅ローンの繰り上げ返済、効果的に行うには?」
*3 全国銀行協会「繰上返済は有利?手数料は?住宅ローンの繰上返済」
*4 三菱UFJ銀行「住宅ローンを一括返済(全額返済)するメリットとは?手続方法や注意点を解説!」
*5 Money Canvas「金利は今後も上がる?私達の生活への影響はなにがある?」
*6 全国銀行協会「Q. 住宅ローン減税と繰上返済、どちらを優先させた方がいいですか?」
*7 住宅金融普及協会「住宅ローン繰上げ返済と資産運用、どちらがお得?」
*8 国土交通省「住宅ローン減税」
*9 三菱UFJ銀行「一部繰上返済」
*10 日本FP協会「主なライフイベントにかかる費用の目安」
*11 三菱UFJ銀行「NISA(少額投資非課税制度)」
