FPになって3年目の春。
担当しているご夫婦の奥さまから、
「主人が亡くなりました。相続の手続きをお願いしたいです。」といった訃報の連絡がありました。
つい先日までとても元気にされていただけに、ショックが大きかったことを今でも思い出します。
口数の少ないご主人さま。
とても元気でパワフルな奥さま。
ご自宅へ伺うと、ご主人さまはリビングのソファーが定位置で、いつも新聞を広げて読まれており
「母さん、コーヒー入れてくれないか。」
「お父さん、コーヒーくらい自分で入れて下さいよ。」
といったやりとりがよく行われていました。
どことなく、お二人の間にはいつも温かい空気が流れており、お会いすると自然と笑顔が溢れ、どこかホッと落ち着く時間が多く、お会いするのがいつも楽しみでした。
ご主人さまがご家族の話や、趣味のゴルフのお話を優しい眼差しで話されていたのを、つい先日のように思い出します。
いつもはご自宅で面談をしていましたが、ある日銀行の窓口にご主人さまが一人でご来店されました。
私「あれ?今日はお一人ですか?」
ご主人さま「ちょっと保険の話を聞きたくてね。妻は私が死んだ後の話とかは嫌がるから、今日は妻には言わずに来たよ。」
生命保険は昔から良いイメージがない。保険には入らない。と以前はそう言っていたご主人さま。
どういうことだろう・・・?
と私は疑問を抱えながら面談がスタートしました。
ご意向をお伺いすると、ご自身の亡くなった後の備えとして、死亡保障を手厚くしたいとのこと。
ご主人さま「最近、体調が悪くなったので、準備出来るうちに色々と整理をしておきたくてね。私が一番心配なのは妻でして。
妻にはいつまでも楽しく生活してほしいからね。
サラリーマン現役時代は仕事ばかりで、家事も育児もほとんど妻に任せきりで、仕事を辞めた後も妻には本当に世話になったよ。
だから、妻には私があの世に行った後まで迷惑はかけたくなくってね。」
奥さまの前では口数の少ないご主人さま、この日は奥さまとの思い出話等を笑顔で沢山お話されました。そして、死亡保険金の受取人を愛する奥さまの名前を記入され、生命保険に加入されました。
ご主人さま「これで安心だ。」
と笑顔でご帰宅された姿が今でも印象に残っています。
ご主人さまとのやりとりから約半年後。
奥さまからの突然の訃報のご連絡でした。
相続手続きを進める中で、金融機関の資料がまとまったファイルの中から、奥さまはあるはずがないと思っていた保険証券が見つかり、とてもビックリされておりました。
奥さま「生前、主人は生命保険は嫌いだ。と言っていましたから。まさか死亡保険に加入しているなんて。私のこと、きっと心配してくれていたのね。
昔からあまり自分の気持ちを話さない人だったの。
もちろん、主人からのお手紙なんて一度ももらったことがないので。
主人からのラブレターのようで、涙が出ちゃうわ。」
と目頭をうるうるさせながらとても嬉しそうにされている姿は、今でも本当に忘れられません。
ご主人さまから、愛する奥さまへ。
言葉でなくとも、たくさんの想いが伝わった瞬間でした。
その瞬間に立ち会えたこと、心の底から感謝しています。
生命保険とは…
「大切な人へ想いをのこす」
「想いを実現することが出来るもの」
残された財産で家族が争い、バラバラになってしまうなんてことも最近ではよく耳にします。
すごく悲しいことですね。
生命保険は、上手く活用することで自身の想いを大切な人へ伝えることが出来る、愛情のツールだと思います。
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