株式投資をする際、売買の判断基準となる項目に「株価指標」があげられます。株価は絶えず変動しているので、どのタイミングで売買するか悩むこともあるでしょう。株価指標を理解していると、企業の株価が割高なのか割安なのかをイメージできるため、売買の判断に役立ちます。
そこで今回は、主な株価指標について解説します。株価指標を理解して、株式投資の売買判断に活用してください。
株価指標とは、さまざまな統計手法によって株価を市場全体の代表値として表したものです。具体的には以下のような指標があげられます*1。
株価指標は、株価水準の比較だけでなく企業の配当水準や収益力を評価する際にも用いられています。*2
株式の売買をするにあたり、参考となる株価指標は多くあります。以下、代表的な株価指標を解説していきます。
代表的な株価指標として押さえておきたいのは、以下の4つです。
それぞれの株価指標について詳しく解説していきます。
PER(Price Earnings Ratio)は「株価収益率」とも呼ばれ、株価が1株あたりの当期利益に対して何倍になるかを示しています。
PERの算出式は下記のとおりです。
PER(倍)=株価÷1株あたり当期純利益(EPS)
例えば、現在の株価が1,000円で1株あたり当期純利益が100円の場合、PERは10倍です。
PERが高ければ「割高」、低ければ「割安」と評価できますが、一概に「何倍以上(以下)であれば割高(割安)」という基準はありません。
企業の過去のPERや同業他社のPERを比較して、相対的な評価をするために用いられています。
PBR(Price Book-value Ratio)は「株価純資産倍率」とも呼ばれ、株価が直前の期末決算の「1株当たり純資産」の何倍かを示す指標です。
PERは「1株あたり当期純利益」で判断するのに対して、PBRは「1株あたりの純資産」で判断します。
なお、PBRの算出式は下記のとおりです。
PBR(倍)=株価÷1株あたり純資産(BPS)
例えば、現在の株価が1,000円で1株あたり純資産が1,250円の場合、PBRは0.8倍です。
この状況は売られすぎと考えることもできるでしょう。なぜなら、もし会社が解散したならば、株主は1株あたり純資産の1,250円を受け取ることができるからです。
このようにPBRは会社の資産と株価の比較であるため、PBRが低いほど割安だといえます。しかし、必ずしも低いPBRが割安であるとは限りません。低いPBRが続くという状況は、投資家は企業の価値がそこまで高くないと判断している可能性も考えられるからです。
ROE(Retrurn On Equity)は「自己資本利益率」とも呼ばれます。会社が「自己資本」を活用して、どれほど利益を上げているかを示す指標です。
なお、ROEの算出式は下記のとおりです。
ROE(%)=当期純利益÷自己資本×100
例えば当期純利益が100円、自己資本が1,000円の場合、ROEは10%となります。
ROEは「経営の効率性」を測ることができます。ROEが高いほど「効率よく収益を上げている」ことを意味するためです。
なお、ROEが10%を超えている企業は収益性が高く、投資価値の高い優良企業と言われています*6。しかし、業種によってROEの平均値は異なるため、同業他社の数値を比較しながら売買の判断をしましょう。
配当利回りとは、株価に対する「配当金額の割合」です。配当利回りが高いほど、株主に対して積極的に配当金を出していることを意味します。
なお、配当利回りの算出式は下記のとおりです。
配当利回り(%)=1株あたり年間配当金÷株価×100
例えば、1株あたり年間配当金が50円で株価が2,500円の場合、配当利回りは2%となります。なお、2023年1月のデータによると、東証プライム市場に上場している企業の単純平均利回りは2.23%でした*8。
株価指数とは、株式市場の値動きをあらわしている指数です。「株式市場全体」の上下動を知りたいときには、株価指数をチェックします。株式の売買をするうえで、株価指数のチェックを通じて株式市場の大きな動きを把握することは大切です。
具体的な株価指数として日本では「日経平均株価」や「TOPIX」、アメリカでは「S&P500」などがあげられます。
日経平均株価は、日経225と呼ばれることもあります。日本経済新聞社が、東証プライム市場の上場企業から「流動性の高さ」「業種間のバランス」を勘案して選定した225銘柄の株価から算出される指数です。
225銘柄の構成は、原則として年に1回の定期見直しの時期に入れ替わります。例外として、プライム市場以外の市場へ異動した場合や上場廃止になった場合には、臨時入れ替えが行われます。
日経平均株価は、株価が大きな「値がさ株」の影響を受けやすい点が特徴です。一般的に日経平均が上がっているときは、多くの銘柄の株価も上がっていると考えられるでしょう。
しかし数銘柄の値がさ株が大きく下落すると、たとえ他の株価が上昇しても、日経平均株価が下がる状況もあります。
TOPIXは「東証株価指数」とも呼ばれます。東京証券取引所に上場している幅広い銘柄を網羅している点が特徴です。
基準日(1968年1月4日)の時価総額を100ポイントとして、今の時価総額が何ポイントにあたるかを表す指標です。つまり、TOPIXをチェックすれば、1968年以降の日本の経済状況の推移や成長度合いを把握できます。
S&P500とは、アメリカの「S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社」が公表している、アメリカの株価指数です。ナスダックやニューヨーク証券取引所に上場している代表的な500銘柄の時価総額から算出されています。
アメリカ株式市場の時価総額の約80%をカバーしていることから、アメリカ市場のトレンドを把握したいときに役立つでしょう。
株価指数と関連性の強い投資方法に「インデックス投資」があります。インデックス投資とは、特定の株価指数の連動を目指す「インデックスファンド*13」に投資する手法です。
インデックス投資は、値動きが分かりやすいため資産運用初心者の方でも取り組みやすい点が特徴です。また、インデックスファンドは多くの銘柄を組み合わせているケースが多いため、幅広い銘柄に分散投資できることになります。
ただし、市場平均を超えるリターンを狙いにくく、個別株よりも短期間でのリターンが期待できないという特徴もあります。自分の投資方針にしたがって購入の判断を行いましょう。
指標と株価の関係や証券マンがチェックしている経済指標も紹介しております。
今回は、代表的な株価指標の種類や意味などを解説しました。株式指標は株式の売買にあたって、割安感や利回りの水準を把握できる大切な指標です。
株価の値動きを予測することは困難ですが、ある程度の水準を理解することで、リスクを取り過ぎた投資を避けられる可能性は高まります。株価指標と株価指数の仕組みをしっかりと理解して、投資判断に役立てていきましょう。
本稿執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
最終的な投資判断、金融商品のご選択に際しては、お客様自身の判断でお取り組みをお願いいたします。
*1-3 日本取引所グループ 用語集
*3-5,7,13 日本証券業協会 「金融・証券用語集」
*6-11 三菱UFJモルガン・スタンレー証券 用語解説
*8 日本取引所グループ 統計資料
*9 三菱UFJ銀行 株価指数とは?初心者が知っておきたい種類や変動する要因をわかりやすく解説
*10 三菱UFJ銀行 日経平均株価とは?概要・特徴・銘柄の選定基準等の基礎知識を解説
*12 三菱UFJ銀行 S&P500ってなに?インデックス投資のメリット・デメリットと購入時の注意点