冬のボーナスの時期が近づいてきました。
もう使い道が決まっている人、何に使うか考えている人、それぞれいらっしゃることでしょう。
今年の夏のボーナス支給額は、大企業では大幅にアップしています。
さて、ひとくちにボーナスと言っても種類があり、支給時期も異なる場合があります。
ボーナスの金額はどのように決まるのか、支給時期はいつなのかなどについて解説していきます。
経団連によると、従業員500人以上の大手企業156社で、夏のボーナスの支給額は平均94万1,595円でした。前の年より4.23%アップし、今の方法で調査を始めた1981年以降で2番目に高い水準でした。*1
製造業では前の年より3.55%多い平均98万6,369円、非製造業では7.57%多い平均83万6,150円となっています。
経団連は「企業の業績が良くなったことに加えて、基本給の引き上げがある。今年も賃金引き上げの流れが維持され、加速したと思っている」としています。
また厚生労働省の統計によると、5人以上の事業所全体での2024年の夏のボーナス支給額は、平均で前の年より2.3%のアップとなっています。
出典)厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和6年9月分結果速報等」
企業規模問わず、全体的に増額の傾向にあったようです。
では2024年の夏のボーナス支給額について、同じ厚生労働省の調査をもとに業種別(ボーナスを支給した規模5人以上の事業者)で見ていきましょう。
前の年より増加率が高くなっているのは、下のような業種です。
産業 | 一人当たり平均賞与 | 前年比増加率 |
---|---|---|
飲食サービス業等 | 75,897円 | 17.5% |
電気・ガス業 | 881,533円 | 14.6% |
鉱業・採石業等 | 558,769円 | 14.1% |
卸売業・小売業 | 382,412円 | 7.4% |
医療・福祉 | 282,874円 | 6.3% |
教育・学習支援業 | 567,828円 | 6.0% |
出典)厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和6年9月分結果速報等」
一方で「不動産・物品賃貸業(588,824円、-7.1%)」と「学術研究等(645,387円、-7.9%)」の2業種ではマイナスになっています。
また、全体でみると給料の1.05か月分の支給額になっています。*2
さて「ボーナス」というと一般的には「夏と冬の2回」といった印象が強いことでしょう。
しかしボーナスにはいくつかの種類があり、必ずしも夏と冬だけとは限りません。*3
代表的なのは下の3つです。
「基本給の何◯カ月分」という形であらかじめ支給金額の基準が明示されるボーナスです。国家公務員のほか日本の企業で、夏と冬の2回という形で採用されていることが多くなっています。
会社の業績をもとに支給額を算出し支給するもので、外資系企業で採用されていることが多い形式です。支給時期は企業によって異なると考えられます。
そして「夏と冬」に限らないのがこの「決算賞与」です。支給するかどうかは会社によりますが、会社によっては夏と冬のボーナスとは別に、決算時期に明確になった会社の業績をもとに支給するというものです。
業績が良ければその分を多めに従業員に還元するもの、と考えて良いでしょう。
そもそも、なぜ多くの日本企業のボーナスが「夏と冬」なのでしょう。
これには深い歴史があるようです。
まず、奈良時代にボーナスの起源が存在したという話があります。*4
藤原宮や平城宮で働く古代の役人には年に2回「季禄(きろく)」と呼ばれる制度があり、あしぎぬ・綿・布・鍬(くわ)・糸・鉄といった物品が年に2回、2月と8月に支給されていたといいます。
これらの物品は各地から税として中央に納められたもので貨幣のように社会で広く流通していたため、役人たちは俸禄との物々交換で必要なものを手に入れていたということです。
また、江戸時代が始まりとする説もあります。*5
江戸時代の商家では番頭たちなどに対し、年の瀬に「餅代」を渡す習慣があり、これが現代のボーナスの原型とされているのです。
奉公人たちが新年を迎えるための出費にあてるお金として渡されていたということです。
その後、明治時代に「賞与」が支給されはじめました。その先駆けは郵便汽船三菱会社(現在の日本郵船)だったといわれています。
1874年の台湾出兵に協力したのを機に郵便汽船三菱会社は急成長しており、当時の社長だった岩崎弥太郎が「社員の奮闘による結果」として賞与を支給したという記録があります。
なお「ボーナス」はラテン語で「財産」や「良いもの」を意味する「ボヌス」が語源とされ、遅くとも1954年には「ボーナス」という言葉が日本で使われるようになっています。
話を現代に戻しましょう。
毎年のボーナス、自分はいつ、いくらもらえるか?
実はボーナスを支給する会社の場合、事前にもらえる金額をある程度知る方法があります。
大前提として、ボーナスは原則、就業規則で取り決める事項となっています(労働基準法第89条)。
そして多くの会社は、6月と12月の年2回、会社の実績に応じて在籍する従業員へ勤労に対する手当として支給する、という取り決めをしています。*6
よって自分の会社ではボーナスをもらう条件はどうなっているのか、どの種類のボーナスでどのような計算方法で金額が決まるのかは、就業規則や賃金規程などで確認できるはずです。
ただ、就業規則を作成する法的義務があるのは労働者10人以上の事業所です。それより小さい規模の事業所の場合は定められていないケースがあるので注意が必要です。*7
ボーナスには様々な使い道があることかと思います。
そのうちの一部を使って、投資デビューしてみるのも良いかもしれません。
本コラムは執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
出典
*1 NHK首都圏ナビ「夏のボーナス2024 大手企業 平均94万円余 公務員は?実質賃金はプラスに」
*2 厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和6年9月分結果速報等
*3 東証マネ部!「新入社員も夏のボーナスを受け取れる…かもしれない? 新社会人も転職者も知っておきたい「ボーナス」のキホン」
*4 奈良文化財研究所「(47)古代のボーナス-季禄の品々」
*5 日本経済新聞「ボーナス、岩崎弥太郎が先駆け 封筒が立ったバブル期」
*6 中小機構J-Net21「賞与支給日に在籍しない従業員の賞与は払わなければいけませんか?」
*7 厚生労働省「就業規則作成の9つのポイント」