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年末調整はいつする?控除の種類は?必要書類とあわせて詳しく確認しよう
年末調整はいつする?控除の種類は?必要書類とあわせて詳しく確認しよう

年末調整はいつする?控除の種類は?必要書類とあわせて詳しく確認しよう

2022/11/10・提供元:

Money Canvas

会社員は毎年10月頃になると、年末調整の書類が送られてきます。


年末調整は正しく所得税を納税するために大切な手続きであり、なんとなく記入してはいけません。

年末調整の意味を理解しながら正確に申告を行うことが大切です。

意味を理解することで、生活環境が変わったときの所得控除の把握もできるため、ライフプランニングに役立ちます。


本記事では年末調整の意味と、生命保険料やiDeCoの掛金など申請によって受けられる主な控除を紹介します。




年末調整と対象者

年末調整とは給料から差し引かれた源泉徴収額と、年税額を一致させるための手続きです*1。


会社は従業員に給料を支払う際、所定の方法によって所得税額を計算し、給料から差し引いて国へ納付しています。この制度が源泉徴収制度です*2。


このとき差し引いている所得税額は暫定の金額であり、最終的な所得税額は年収や控除される金額によって変動します。 転職や扶養家族の増減などによって、源泉徴収された金額と納めるべき所得税額が異なるケースも考えられます*3。


1月1日から12月31日までが所得税の計算期間です。年末調整によって、会社がその年の所得税額を算出し、源泉徴収した分と精算します。 精算の結果、正しい納税額よりも源泉徴収された額が多ければ、還付を受けられます。 反対に源泉徴収された額よりも正しい納税額の方が高くなると、追加で納税しなくてはいけません。


年末調整の対象者は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を年末調整を行う日までに提出している、年間を通じて会社に勤めている人や、年の途中から年末まで勤めている人です*4。


「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」とは、その年の会社から給料の支払いを受ける前日までに提出する、扶養控除などを受けるための書類です*5。


会社に勤めていても、年間の給与総額が2,000万円を超える場合は年末調整を受けられません。その場合は確定申告が必要です*6。


年末調整は12月に行うことが多いのですが、海外転勤や死亡による退職などのケースは年の途中でも年末調整を行います*4。



年末調整の手順

年末調整は大きく3つの手順によって行われます*7。

  • 各種控除額の確認
  • 年税額の計算
  • 過不足額の精算

1. 各種控除額の確認

所得税は給与総額から控除額を差し引いた課税所得をもとに計算するため*8、まずは給与総額から控除できる金額を算出します。この控除額の確認のために、扶養控除等申告書や配偶者控除等申告書などの提出が必要です。


扶養控除等申告書などにはマイナンバーを記載しますので、事前に確認しておくとスムーズに手続きが進められます。もし会社側が、従業員や従業員の配偶者のマイナンバーを記載した帳簿を備えているときは、マイナンバーを申告書に記載する必要はありません。


2. 年税額の計算

控除額が決定した後、給与総額から控除額を差し引き、税率を掛け合わせることで年税額を計算します。


最初に給与総額から給与所得控除額と所得金額調整控除額を差し引きます。 所得金額調整控除額とは、本人や扶養家族に障害者がいたり、給与所得と年金所得を両方受け取っていたりする人が受けられる控除です*9。


次に扶養控除などの所得控除額を差し引き、以下の表に基づいて所得税額を算出します。

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 から 1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円 以上 45% 4,796,000円

出所)国税庁 所得税の税率

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/
shotoku/2260.htm



所得税額が算出されたら、住宅借入金等特別控除額を差し引き、復興特別所得税額である2.1%を加えて年税額が決定されます。


復興特別所得税額とは、東日本大震災からの復興に必要な財源確保のために令和19年まで納める税金です*10。


所得税の年税額を計算する手順をまとめると次のとおりです。


a) 給与総額から給与所得控除額と所得金額調整控除額、所得控除額を差し引く

b) その金額をもとに所得税額を計算する

c) 住宅ローンの借り入れがある場合は住宅借入金等特別控除額を差し引く

d) 復興特別所得税の2.1%を加えて年税額が決定する


3. 過不足額の精算

最後に毎月の源泉徴収額の合計と、決定した年税額を比較し、過不足を清算します。


以上が年末調整で行われている全体の流れです。


年末調整で受けられる主な控除

年末調整で申告することにより、受けられる主な控除を紹介します。


給与所得控除

給与所得控除は、給与総額から差し引く控除です。控除額は以下のように求めます。


給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,625,000円まで 550,000円
1,625,001円から 1,800,000円まで 収入金額×40%-100,000円
1,800,001円から 3,600,000円まで 収入金額×30%+80,000円
3,600,001円から 6,600,000円まで 収入金額×20%+440,000円
6,600,001円から 8,500,000円まで 収入金額×10%+1,100,000円
8,500,001円以上 1,950,000円(上限)

出所)国税庁 給与所得控除

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/
shotoku/1410.htm



基礎控除

基礎控除は所得金額が2,500万円以下のときに受けられる控除です。


納税者本人の合計所得金額 控除額
2,400万円以下 48万円
2,400万円超2,450万円以下 32万円
2,450万円超2,500万円以下 16万円
2,500万円超 0円


出所)国税庁 基礎控除

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/
shotoku/1199.htm


配偶者控除

配偶者控除とは、控除の対象となる配偶者がいるときに受けられる控除です。


0

出所)国税庁 配偶者控除

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/
shotoku/1191.htm


老人控除対象配偶者とは、その年の12月31日時点で年齢が70歳以上の配偶者です*11。 対象となる配偶者は納税者と生計を共にしており、給与収入が103万円以下の人です。このとき、内縁関係にある人は対象となりません*12。


扶養控除

配偶者以外に扶養家族がいるときは、扶養控除を受けることもできます。


6

出所)国税庁 扶養控除

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/
shotoku/1180.htm


扶養家族の区分は、その年の12月31日時点での年齢によって異なります*13。


  • 一般の控除対象扶養親族:16歳以上
  • 特定扶養親族:19歳以上23歳未満
  • 老人扶養親族:70歳以上

対象となる条件は配偶者控除と同様に、給与収入が103万円以下で生計を共にしている人です。


生命保険料控除

生命保険料や介護医療保険料、個人年金保険料を支払っているときは、一定の控除を受けることができます。平成24年以降に締結した新契約と、平成23年以前に締結した旧契約で計算方法が異なります。


【新契約】

7

【旧契約】

8

出所)国税庁 生命保険料控除

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/
shotoku/1140.htm



生命保険料控除の適用を受けるためには、保険会社などからの控除証明書が必要です*14。毎年、年末調整の時期になると送付されるので確認しておきましょう。現在は電子データやマイナポータルに連携することで、電子的に提出することも可能となりました。


小規模企業共済等掛金控除

小規模企業共済やiDeCoに加入している人は、拠出額の全額分の控除を受けられます。こちらも生命保険と同様に、年末調整の時期になると「小規模企業共済等掛金払込証明書」が送付されるので、大切に保管しましょう*15。 iDeCoの控除は自動的に処理されませんので、年末調整時に申告が必要です。


住宅借入金等特別控除

こちらは住宅ローン控除と言われる控除であり、住宅ローンを利用した際に残高の0.7%が所得税から控除される制度です。 この制度を受けるためには、1年目に確定申告の手続きが必要ですが、2年目以降は年末調整で申告すると適用されます。


年末調整では金融機関から送付される「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」が必要です。 手続きを忘れてしまった場合は、確定申告によって5年分まで遡って申告できます*16。


年末調整を理解して正しく申告することが大切

今回は、年末調整の意味と受けられる控除を紹介しました。年末調整は所得税を正しく納めるために必要な手続きです。


扶養家族が増えたり、生命保険やiDeCoに加入したりする人は申告することで納める所得税が少なくなります。受けられる控除を知っておくことは、住宅ローンの借り入れや退職など大きなライフイベントを考える際にも役立ちます。


手続きが複雑であるからと申告を避けることなく、正しい情報を申告しましょう。




*1 国税庁 給与所得者(従業員)の方へ(令和4年分) 年末調整とは

*2 国税庁 源泉徴収制度について

*3 三菱UFJ銀行 iDeCo(イデコ)の年末調整と確定申告の方法とは?書き方や手順を解説! そもそも年末調整とは?

*4 国税庁 年末調整の対象となる人

*5 国税庁 [手続名]給与所得者の扶養控除等の(異動)申告

*6 国税庁 給与所得者で確定申告が必要な人 概要1

*7 YouTube 国税庁動画チャンネル 年末調整の手続1:05~

*8 国税庁 所得税のしくみ 所得税の算出のしくみ

*9 国税庁 所得金額調整控除 概要

*10 国税庁 個人の方に係る復興特別所得税のあらまし

*11 国税庁 専門用語集 老人控除対象配偶者

*12 国税庁 配偶者控除

*13 国税庁 専門用語集 控除対象扶養親族

*14 国税庁 控除証明書等の電子的交付について

*15 三菱UFJ銀行 iDeCo(イデコ)の年末調整と確定申告の方法とは?書き方や手順を解説! 年末調整でiDeCoの所得控除を申請する

*16 三菱UFJ銀行 住宅ローン控除の年末調整はどんな手続きが必要?必要書類や還付金の入金時期を解説 そもそも住宅ローン控除とは? 住宅ローン控除には1年目と2年目の手続きが異なる


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