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衆議院選挙の結果は株価にどう影響?「選挙は買い」は事実なのか
衆議院選挙の結果は株価にどう影響?「選挙は買い」は事実なのか

衆議院選挙の結果は株価にどう影響?「選挙は買い」は事実なのか

2024/10/24に公開
提供元:清水沙矢香

石破茂新首相は10月9日に衆議院を解散し、10月27日に総選挙が行われることになりました。

実は、 選挙は株価を動かすひとつの要因になっており、株式市場の関係者の間では「選挙は買い」という言葉もあります。
選挙の前には株価が上昇する、という教訓のようなものです。

では実際、選挙と株価にはどのような関係があるのでしょうか。過去の事例などを見ていきましょう。


石破新首相、所信表明演説の内容は?

第102代の内閣総理大臣に就任した石破首相は、2024年10月4日に所信表明演説を行いました。

経済政策に関する部分をピックアップしてみると、おもに


  • 「デフレ脱却」を最優先に実現
  • 賃上げと投資がけん引する成長型経済
  • 最低賃金の目標を2020年代に全国平均1,500円とする
  • 低所得者世帯への支援や、地域の実情に応じたきめ細かい対応を行う
  • 中堅・中小企業の賃上げ環境整備
  • 貯蓄から投資への流れを着実なものにする

といったことが語られています。*1

この演説を受けて円相場が瞬時に動きました。
しかし 投資の世界には「噂で買って事実で売れ」という格言があります。*2

「他人より早く行動しなければならない」という考え方に乗っ取ったものです。*3

例えば、事前の噂に株式を買う材料があれば買い、実際に記者会見などで事実が明らかになった段階で売る、という手法があるでしょう。

もちろんこうした行為が100%成功するわけではありませんが、為替相場も、こうした考え方がもとになって変動したと考えられます。

こうした心理的な駆け引きはたびたび起きることです。

例えば企業決算の場合、「良い内容が発表されそうだ」という「予測」の段階で買っておけば、実際に好決算が発表されたときにはもっと株価は上がりますから、その上がった段階で事前に買っておいた株を売れば利ざやを稼げるというわけです。

さて今回、首相の発言というのは重いものですから、 投資家が思っていた通りの良いものでなかった場合、あるいは期待を上回る良い内容だった場合には、株式や為替の市場では短期的な売買が生じます。

ただ、こうした「超短期決戦」のような動きは一時的なものにすぎないと筆者は考えます。
新政権が本格始動した時に実際に何を行うかは、今の段階ではわからないからです。


「選挙は買い」?過去の衆院選と株価の関係

しかし選挙と株価の関係でいえば、興味深いことに 「衆院選前には株価が上がる」という傾向が長く続いています。

1969年から2021年にかけて衆議院選挙は17回行われましたが、 17回全ての衆院選で、解散日と投票の前の日(投票は日曜日が通例なのでその前の金曜日)の株価を比べると、確かに上昇しているのです。*4

1990年以降では、以下のようになっています。*5*6


9

このように、解散総選挙の際に株価が上がる現象の背景にはいくつかの要因が考えられます。


外国人投資家の動向

ひとつは、 外国人投資家からの注目度です。

2005年以降の5回の選挙に話を絞れば、投開票前の7週間で外国人投資家が平均で総額約3兆円の日本株(現物・先物の合計)を買い越していることがわかっています。

海外からすれば日本の衆院解散総選挙、特に任期満了という決まり通りの解散でない場合は「衆議院を解散せざるを得ないほど悪い状態から、日本が良くなるきっかけ」と捉えられ、日本株への期待が高まり、買われているのかもしれません。

実際、現在の憲法下で任期満了で総選挙が行われたのは1976年の1度だけです。*7
よって、それ以外のほとんどの選挙の際に「日本が改善するかもしれない」と期待され、株価上昇に繋がった可能性は大いにあります。


選挙をめぐる日本市場の「アノマリー(経験則)」

また、 過去の衆議院の解散総選挙では株価が上がってきた、という事実が、日本でも投資家の間でいつしか「アノマリー(経験則)」になっている、ということもあるでしょう。

過去の事実の積み重ねは投資に限らなくても、似たような事態に遭遇した時に自分がどう振る舞うべきかの参考になるものです。

特に短期売買で利益を得たい投資家などの場合は、過去に衆院選の時は株価が上がってきたという経験則のもと、 理論的な裏付けがなくても条件反射的に取引をしている可能性があります。


日本の株式市場は独特な慣習も

さて「アノマリー」の他の事例としては、 統計的に4-6月期には日本では株価が上がりやすいというものがあります。
ブルームバーグは過去30年間にわたり、4-6月期の日本株の相場は株主還元策や好決算に対する評価から上昇したケースが多いと指摘しています。*8

また、日本の株式市場には 「ご祝儀相場」という慣習もあります。

ご祝儀相場とは、「大きなイベントに期待して買い注文が入り、相場全体が上昇する現象のこと」を指す言葉です。
新年最初の株式取引が始まる「大発会」や一年の最後の取引日の「大納会」といった節目、あるいは新規銘柄の上場日、新政権の誕生などの際には「お祝いムード」の中で株価が上昇しがちです。*9

特に論理的な後ろ盾はなくても、こうした慣習があることを知るのは、日々の株式相場の動きを理解する一助となることでしょう。


大切なのは長期的な視点

首相が変わる、国政選挙が行われる、といった、なんとなく世間に落ち着きがないように感じる時には、株式や為替の日々の変化に敏感になってしまうことでしょう。

しかし、デイトレードのような 短期売買をしているわけでない限り、重要なのは政権の方向性や実施する政策、それによって日本経済がどう変わるか、という事実のほうです。

これからの選挙戦にあたって各党がどのような公約を掲げるのか、新しい内閣はどれだけの実績を残せそうなのか、何を本当にやってくれるのか。

積極的に情報を得て、選挙そのものの意義も見直してみたいものです。



本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
最終的な投資判断、金融商品のご選択に際しては、お客さまご自身の判断でお取り組みをお願いいたします。

出典
*1 日本経済新聞「石破茂首相の所信表明演説の全文」
*2 ブルームバーグ「日銀の引き締め転換、銀行株上昇の終焉示唆-17年前も材料出尽くしに」
*3 三菱UFJ信託銀行「何故、天邪鬼(あまのじゃく)が儲かるのか?」
*4 TBS NEWS DIG「選挙の前に株価上昇?「選挙は買い」は本当か【Bizスクエアで学ぶ投資のキホン#24】」
*5 日本経済新聞「選挙が大好きな日本株 解散は買い、再評価の引き金に」
*6 ロイター通信「アングル:日本株は「解散風」で高値圏の攻防、政治不安定化に警戒も」
*7 Yahoo!ニュース「衆議院は解散から何日で選挙がある?解散総選挙の流れ【衆院選2024】」
*8 ブルームバーグ「4-6月期に強い日本株アノマリー、株主還元や好決算評価で一段高も」
*9 三菱UFJモルガン・スタンレー証券「用語解説 ご祝儀相場(ごしゅうぎそうば)」


清水 沙矢香

2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。
社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。
取材経験や各種統計の分析を元に多数メディアに寄稿中。

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