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投資の選択肢の一つに!サステナビリティ経営の意味や取り組み企業の事例を詳しく紹介
投資の選択肢の一つに!サステナビリティ経営の意味や取り組み企業の事例を詳しく紹介

投資の選択肢の一つに!サステナビリティ経営の意味や取り組み企業の事例を詳しく紹介

2026/05/14に公開
提供元:横内美保子

企業に対する評価軸は、大きく変わりつつあります。
従来の財務情報だけでなく、環境や社会への姿勢、そして将来にわたる持続可能性への取り組みが、企業の信頼性や成長力を測る重要な指標として位置づけられるようになりました。

国による制度整備も進み、情報開示のあり方が具体化するなかで、企業経営そのものの考え方が問い直されています。

本記事では、こうした潮流の中核にあるサステナビリティ経営の意味と意義についてわかりやすく説明し、先進企業の事例を紹介します。


サステナビリティ経営の意義

サステナビリティ経営とはどのようなものでしょうか。


サステナビリティ経営とは

サステナビリティ(Sustainability)とは、環境・社会・経済の持続可能な状態をめざす包括的な概念で、「持続可能性」と訳されます。*1

サステナビリティ経営は、「長期的な企業価値の向上をめざしながら、環境・社会・経済の持続可能性を同時に追求する経営手法」です。
環境や社会の課題を「新たなビジネスチャンス」と「リスク管理」の両面から捉え、企業経営全体の重要テーマとして、積極的に経営戦略の中に組み込んで取り組むという方向性を備えています。*2


サステナビリティ経営の背景

サステナビリティが広く関心を集めるようになった背景には、環境問題の深刻化があります。*3
現在、地球温暖化をはじめ、海洋汚染や大気汚染など、私たちは複合的な環境問題に直面しています。なかでも地球温暖化の影響は深刻で、気温の上昇によって干ばつや水不足、大規模な森林火災の発生リスクを高めます。

環境への危機意識は1970年代頃から高まり続けてきましたが、2015年9月の国連サミットでSDGs(持続可能な開発目標)が採択されたことによって、「サステナビリティ」という概念が世界的に広く認知されるようになりました。
また、社会面でも、国際的な人権問題や国際紛争によるリスクが高まっています。*2

そうした状況を背景に、 企業側にも利益追求だけではなく、社会的な使命として「サステナビリティ経営」が求められています。*1
気候変動、資源循環、人権、地域共生といった世界的な課題に対して、企業が積極的に取り組む姿勢は、株主や消費者、従業員からの信頼獲得にもつながります。
サステナビリティ経営は、今や企業の重要な成長戦略の1つであるといえるのです。


サステナビリティ投資の動向

次にサステナビリティ投資についてみていきます。


国による推進

国はサステナビリティ経営を推進しています。
2025年3月にサステナビリティ開示基準(SSBJ基準)が公表され、企業には気候変動対応や人的資本経営の「見える化」が求められています。*1
人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげていく経営のあり方です。*4

SSBJ基準は、企業が投資家に対して非財務情報、特にサステナビリティに関する情報を開示する際の枠組みを定めた、日本独自の開示基準です。
国際的な比較可能性を確保する観点から、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が策定した国際基準(ISSB基準)を基礎としつつ、日本の市場環境や制度に即した形で調整・整備されており、投資家が信頼できる「比較可能で一貫性ある」情報開示を目指しています。

2025年11月、金融庁は有価証券報告書等で開示するサステナビリティ情報について、東京証券取引所プライム市場上場会社のうち平均時価総額1兆円以上の企業には、SSBJ基準を適用すると公表しました。*5


サステナビリティ投資の動向

次に、サステナビリティ投資の状況をみていきます。

「サステナビリティ投資」の定義や呼び方は多様で、国内の資産運用会社の多くは、「責任投資」「ESG投資」「サステナビリティ投資」などの用語を使っています。*6

日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)が2024年に実施したアンケート調査によると、 サステナビリティ投資残高の総額は625兆6,096億1,100万円でした。2023年と比較すると、88.0兆円(16.4%)増加し、拡大傾向が続いていることが窺えます。*7

ただし、2024年は様々な要因によって、サステナビリティ投資残高の増減を正確に把握することが難しい状況だったため、この数値は絶対的なものではありません(表1)。


0

表1 サステナビリティ投資残高と総運用資産額に占める割合

出典)NPO法人 日本サステナブル投資フォーラム「日本サステナブル投資白書 2024」(2025年3月31日)p.6


運用資産クラス(投資対象のカテゴリー)別にみると、2023年比で日本株は19.4%増加し、外国株は23.9%の伸びを示しました。
同期間で主要な株価指数であるTOPIXは38.2%上昇、S&P500は27.9%上昇しています
(表2)。


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表2 資産クラスごとのサステナビリティ投資残高

出典)NPO法人 日本サステナブル投資フォーラム「日本サステナブル投資白書 2024」(2025年3月31日)p.6


企業の取り組み事例

現在はさまざまな環境規制や投資家からの圧力を受けながら、欧州企業がサステナビリティ活動をリードし、北米やアジアの企業も取り組みを推進しつつあります。*8

また、世界の企業は独自の目標を設定するだけでなく、コンソーシアム(共通の目的を持つ複数の企業、団体、大学、政府などが協力して活動する共同体や連合体)を組むなどして、一丸となって取り組んでいます。

日本企業も、ビジネスモデル・外部からの要請という両面から、サステナビリティに軸足を移した変革が急務であることが指摘されています。
先進事例をみていきましょう。


ユニリーバの取り組み

これまで多くの企業による環境対策は、自社の事業が与えた環境負荷を回復するための活動に対して、得られた利益の一部を投資するという、いわば「罪滅ぼし」的な考え方でした。

そこからいち早く脱却したのがユニリーバです。
ユニリーバは、コストをかけて利益を圧迫しながら社会貢献するのではなく、社会課題を解決しながら、同時に会社の成長も実現していくことを目指しています。
こうした企業姿勢が自社のブランド力を高め、顧客とのエンゲージメントを強めていくフックとなっているのです。

同社は「サステナビリティを暮らしの“あたりまえ”に」というスローガンを掲げ、2010年からユニリーバ・サステナブル・リビング・プランを推進してきました。
その成果の一部は、以下のようなものです。*9


  • 健康・衛生にかかわるプログラム:13億人の人々に支援やサービスを提供。
  • 廃棄物:消費者の製品使用1回あたりの廃棄物量を32%削減。また、世界中のすべての工場で埋め立て廃棄物ゼロを達成。
  • 温室効果ガス:自社工場からの温室効果ガスの排出量を50%削減。また、世界中のすべての工場で、電力系統から購入する電力を100%再生可能エネルギーに切り替えた。
  • 食品:加糖の茶飲料の砂糖を23%削減。また、食品全体の56%がいちばん高い栄養基準をクリア。
  • ジェンダーバランス:234万人の女性が、安全の向上、スキルの向上、機会の拡大を目的としたイニシアチブを利用できるようにした。また、女性管理職比率51%を達成。

三菱重工業と日本IBMのデジタルプラットフォーム構築プロジェクト

三菱重工業株式会社(以下、三菱重工)と日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は、CO2排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラル社会の実現に向けて、CO2を「資源」として活用する新しい仕組みづくりに取り組んでいます。*10

その中心となるのが、CO2の流れを見える化するデジタルプラットフォーム「CO2NNEX™(コネックス)」です。

現在、世界では2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、CO2を回収し、貯留や再利用を行う「CCUS(CO2回収・利用・貯留)」への期待が高まっています。
しかし、回収されたCO2は、貯留されるか、一部が資源として利用されるにとどまっており、流通全体を把握する仕組みは十分ではありません。

そこで両社は、CO2NNEX™を通じて、回収・輸送・貯留・販売・再利用といったCO2の一連の流れをデジタル上でつなぎ、全体を可視化します。
その結果、CO2の取引状況や量の変化を正確に把握できるようになり、投資やコストの検証も可能になります。
また、CO2を売りたい企業と利用したい企業を結びつけることで、工業、農業、燃料などさまざまな分野での活用拡大も期待されます。


この取り組みによって、CO2の流通を整え、活用を広げることで、地球環境保護とカーボンニュートラルの実現を目指しています。

このプロジェクトでは、三菱重工がフィジカル世界におけるインフラ構築、日本IBMがサイバー世界のデジタルネットワークを担うCO2NNEX™を担っています(図1)。


2

図1 CO2NNEXの概念図

出典)三菱重工「三菱重工と日本IBM、CO₂流通を可視化するデジタルプラットフォーム「CO₂NNEXᵀᴹ」構築へ 取引サイクルを活性化しカーボンニュートラルの早期実現に貢献」(2021年5月6日)


おわりに

サステナビリティ経営は、社会貢献のための特別な活動ではなく、企業が長く成長し続けるための経営手法になりつつあります。

投資の際には、企業の将来性を検討するための1つのヒントとして、企業のサステナビリティへの取り組みにも注目してみてはいかがでしょうか。



本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
本コラムの内容は、特定の金融商品やサービスを推奨あるいは勧誘を目的とするものではありません。
最終的な投資判断、金融商品のご選択に際しては、お客さまご自身の判断でお取り組みをお願いいたします。

出典
*1 三菱UFJ銀行「脱炭素・SDGs時代の企業戦略 サステナビリティ経営成功の鍵とは?」
*2 経済産業省(一般財団法人企業活力研究所)「「サステナビリティ経営の推進に向けた従業員の共感拡充・行動変容を加速するための対策のあり方」に関する調査研究報告書」(2024年3月)p.i
*3 三菱UFJ銀行「話題のサステナビリティとは?SDGsとの違いや企業の取り組み事例を解説」
*4 経済産業省「人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~」
*5 金融庁「「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(案)等に対するパブリックコメントの実施について」
*6 金融庁(デロイトトーマツ)「国内外におけるサステナビリティ投資の実態等に関する調査」(2025年3月31日)p.22
*7 NPO法人 日本サステナブル投資フォーラム「日本サステナブル投資白書 2024」(2025年3月31日)p.3, 6
*8 日本経済新聞「先進事例から学ぶ「サステナブル経営」の現在」
*9 ユニリーバ「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン 10年の進捗」(2020年5月6日)
*10 三菱重工「三菱重工と日本IBM、CO₂流通を可視化するデジタルプラットフォーム「CO₂NNEXᵀᴹ」構築へ 取引サイクルを活性化しカーボンニュートラルの早期実現に貢献」(2021年5月6日)


横内 美保子
よこうち みほこ

博士(文学)。総合政策学部などで准教授、教授を歴任。専門は日本語学、日本語教育。高等教育の他、文部科学省、外務省、厚生労働省などのプログラムに関わり、日本語教師育成、教材開発、リカレント教育、外国人就労支援、ボランティアのサポートなどに携わる。パラレルワーカーでもあり、ウェブライター、編集者、ディレクターとして分野横断的な取り組みを続けている。

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