偏った食生活、運動不足、アルコールの過剰摂取や喫煙習慣、ストレスの多い環境で生活をしていくと、生活習慣病のリスクを高めることにつながります。
不健康な生活習慣が引き起こす8つの生活習慣病の種類とその特徴と、今から始めたい対策について解説します。
生活習慣病は、食事、運動、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が発症に深くかかわる病気の総称です。日本人の死因の上位を占めるがん、心臓病、脳卒中も生活習慣病に含まれます。生活習慣病は、健康的とは言えない生活習慣が蓄積されることによって発症リスクが高まりますが、これは、生活習慣を整えることで発症を防げる可能性が高まるとも考えられます。
例えば、太りすぎや痩せすぎなどの体型から健康具合を測る指標の一つにBMIがあります。自分でも手軽に調べられる指標なので、参考にしてみましょう。こうした指標を参考にして、自分の健康状態を見直し、食事や運動習慣などの生活習慣を見直すきっかけとするのも一つの方法です。
出典:厚生労働省「SMART LIFE PROJECT」
日常生活を送るなかで、知らず知らずのうちに不健康な生活習慣が身についてしまっている場合もあります。生活習慣と関連する疾病にはこのようなものがあります。
出典:文部科学省 生活習慣病
おもな生活習慣病に関する患者数や死亡者数も厚生労働省によって発表されています。
出典:厚生労働省「令和2年版厚生労働白書 資料編」生活習慣病に関する患者数・死亡数
生活習慣病には、がん(悪性新生物)、心疾患、脳血管疾患(脳卒中)、高血圧性疾患、腎疾患、肝疾患、膵疾患、糖尿病などがあります。それぞれの疾病の特徴を解説します。
細胞の遺伝子に傷がついてできる悪性の腫瘍です。「がん(悪性新生物)」は、無秩序に増殖を繰り返しながら周囲に染み出て広がり(浸潤)、身体のあちこちに飛び火して転移します。肺にできたがんを肺がん、胃にできたがんを胃がんと呼ぶように、腫瘍ができた場所によって呼び名が付けられています。発生した場所やがんの進行具合によって、治療法や治療の難易度が異なります。
心臓に何かしらの異常が起こり、血液循環が上手くいかなくなることで起こります。血流が悪くなって心筋に必要な酸素が不足する病気を「狭心症」、血管内に血栓ができて、冠動脈が完全につまって心筋が壊死する病気を「心筋梗塞」と言います。このほか、脈が遅くなったり、速くなったり、脈が飛んだりと、脈が一定ではなくなる「不整脈」や、心臓のポンプ機能が低下して、全身に血液を送れなくなる「心不全」があります。
脳の血管が詰まったり、破れたりして、脳の機能が失われて全身に影響を与える状態です。急に倒れて意識がなくなったり、半身のまひが起きたり、ろれつが回らなくなったりします。脳血管障害(脳卒中)には、脳の血管が詰まる脳梗塞と、脳の血管が破れる脳出血、くも膜下出血があります。いずれも高血圧が最大の原因です。
発症後は、重度の要介護状態となりやすい病気ですが、後遺症を軽くするためには、発症後、速やかに治療を開始することが重要になります。
診察室での血圧測定で、最高血圧が140mmHg以上、最低血圧が90mmHg以上を繰り返し記録すれば、高血圧と診断されます。血圧は、心臓から送られた血液が動脈の内側を押す力のことで、高血圧が長く続くと、血管がいつも張り詰めた状態になり、次第に動脈硬化を起こしやすくなります。この動脈硬化は、脳出血や脳梗塞、心筋梗塞などを引き起こしやすくなるため注意が必要です。
高血圧症の原因には、塩分の取りすぎや、肥満による高血圧、過剰な飲酒、精神的なストレス、運動不足、喫煙などがあげられます。
腎臓は、血液中の老廃物や塩分をろ過して、尿として体外に出す働きをします。慢性腎不全は、腎臓の障害もしくは腎機能低下が3ヵ月以上続いている状態です。自覚症状がほとんどないまま、ゆっくりと腎機能が低下していき、そのまま人工透析が必要になるまで腎臓の機能が低下することがあります。慢性腎臓病は一度進行すると完治が難しい病気です。健康診断などによる早期発見が重要になります。
肝臓は、食事からとった栄養を体内で吸収しやすい形に変える役割や、アルコールの無毒化や薬剤の分解などを担っています。体の中でろ過装置として働き、不要なものを分解して、必要な栄養素を取り込みやすい形に加工して貯蔵しています。肝疾患の原因は、アルコール、ウィルス、薬物などさまざまです。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるように、肝機能が低下しても自覚症状がないため、健康診断などによる肝臓の数値確認が早期発見に役立ちます。
膵臓は、消化酵素を分泌して消化吸収を助ける役割と、ホルモンを分泌して血糖値を調節する役割があります。膵臓の疾患には、膵臓が急激に炎症を起こす急性膵炎、徐々に膵臓の機能が低下する慢性膵炎、膵臓に悪性の腫瘍ができる膵がん、膵臓の内部や周囲にさまざまな大きさの液体の固まりができる膵のう胞性腫瘍などがあります。
糖尿病は、インスリンが十分に働かないために、血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が高くなりすぎる病気です。糖尿病が進行すると、動脈硬化が進んで脳卒中や心臓病のリスクが高まるほか、自覚症状のないまま網膜症、腎症、神経障害といった合併症を発症しやすくなります。
生活習慣病は、それぞれが単体の病気で終わるとは限りません。1つの病気が次の病気を引き起こす合併症のリスクが潜んでいます。例えば、高血圧や糖尿病などを放置していると、動脈硬化が起きやすくなります。動脈硬化によって血管が硬くなると、血管内が詰まりやすくなり、心筋梗塞や脳血管疾患といった重篤な合併症につながる可能性があります。
生活習慣病は多くの場合、自覚症状がないまま進行します。そのまま放置していると、動脈硬化が進行して、ある日突然、心筋梗塞や脳卒中となって倒れてしまうことも。その結果、麻痺が残ったり、寝たきりになったりと深刻な状況になってしまう可能性があります。
生活習慣病は日ごろの生活習慣に気をつけるとともに、早期発見、早期治療が重要になります。そのためには、定期的な健康診断を受けることが重要です。健康診断結果で何かしらの指摘があったときには速やかに治療を始めること、再検査の通知が来たときにはそのまま放置せずに検査に行くなど、すぐに行動に移しましょう。
生活習慣病の治療には、食事、運動、休養、喫煙、飲酒といった生活習慣の見直しが重要なことは言うまでもありませんが、生活習慣の改善だけで改善しない場合には、薬剤治療もあわせて行うことになります。薬剤治療には、例えば、高血圧を抑える薬、コレステロール値を抑える薬、血糖値を抑える薬などがあります。
また、入院治療が必要な場合、その治療期間は他の疾患に比べて長期にわたりやすい傾向があります。生活習慣病が完治するということはほぼありません。退院後も生活習慣を改善したり、投薬を続けながら、長期で治療に取り組みます。
厚生労働省の「令和2年(2022)患者調査」より、おもな生活習慣病について平均在院日数を調べてみました。
出典:厚生労働省「令和2年(2022)患者調査」
全ての疾病の平均在院日数の32.3日に比べると、脳血管疾患の77.4日、慢性腎疾患の53.4日、高血圧性疾患の47.6日は、入院期間が長期化しやすい疾病であることが分かります。また、全体的に、35-64歳よりもさらに年齢が上がるほど、入院日数が長期化する傾向があります。
多くの生活習慣病では、退院後もリハビリテーションを必要としたり、通院治療や服薬治療を続けたりと、治療後もなんらかの療養が続くケースが多くなるため、多くの医療費がかかります。身体の状況や体力の回復具合によっては、いままで通りの就労ができなくなることもあるでしょう。
通常の医療保険に加入している場合、入院日数に応じた入院給付金が受け取れます。また、その医療保険に手術給付金がある場合には、手術を受ければ手術給付金を受け取ることができます。しかし、入院日数も退院後の療養期間も長くなりやすい生活習慣病の場合には、医療費もその分かかりやすくなりますし、退院後の療養期間のことも考えるとその分、生活費についても備えておいた方がいいでしょう。
生活習慣病には、がん(悪性新生物)、心疾患、脳血管疾患(脳卒中)、高血圧性疾患、腎疾患、肝疾患、膵疾患、糖尿病などがあります。いずれも、食事や運動、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が発症に大きく関わる病気です。自覚症状がないまま静かに進行することが多く、治療期間が長期にわたる傾向があります。退院後の療養が必要な場合も多くなるため、あらかじめ手厚く備えておきましょう。
深刻な状態になる前に、健康的な生活習慣と、こまめな定期検診を心掛けることも重要です。
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