ボーナスは毎月の給与よりもまとまった金額が支払われることが多いですが、その場合は税金や社会保険料の控除額も大きくなります。
ボーナスの額面が100万円の場合、手取りは70万円から80万円程度になるのが一般的です。かなりの金額が引かれているという印象を受けるのではないでしょうか。
額面100万円のボーナスが、なぜこのような手取り額になってしまうのか、税法上の計算方法を紹介しながら解説します。
毎月受け取る給与から引かれている社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料)と源泉所得税は、ボーナスからも控除されます。
社会保険料と源泉所得税の金額は、ボーナスの額面などに応じて決まります。そのため、 ボーナスが高額になればなるほど、社会保険料と源泉所得税の控除額が増え、額面と手取りの差が開いていきます。
なお、住民税は通常の給与からのみ控除されるため、ボーナスから住民税は控除されません。
以下の設例1を用いて、額面100万円のボーナスの手取り額がどのくらいになるのかを計算してみましょう。
<設例1>
令和6年度
年齢:40歳(介護保険第2号被保険者)
勤務地:東京都
事業の種類:一般の事業
扶養親族:2人
月給(額面):50万円
ボーナスの額面(社会保険料控除前):100万円
※小規模企業共済等掛金の支払いはなし
ボーナスから控除される健康保険料の額は、以下の式によって計算します。
健康保険料の額=標準賞与額×健康保険料率(従業員負担分)*1
※標準賞与額:税引前の賞与総額から1,000円未満を切り捨てた金額。ただし、同一年度における累計額は573万円が上限となります。
※保険料率は、都道府県によって異なります。
※従業員負担分は、保険料率の1/2です。
設例1における健康保険料の控除額は、以下のとおりです。
健康保険料の控除額
=100万円×11.58%×1/2
=5万7,900円
ボーナスから控除される厚生年金保険料の額は、以下の式によって計算します。
厚生年金保険料の額=標準賞与額×厚生年金保険料率(従業員負担分)*1
※標準賞与額:税引前の賞与総額から1,000円未満を切り捨てた金額。ただし、月間150万円が上限となります。
※従業員負担分は、保険料率の1/2です。
設例1における厚生年金保険料の控除額は、以下のとおりです。
厚生年金保険料の控除額
=100万円×18.300%×1/2
=9万1,500円
ボーナスから控除される雇用保険料の額は、以下の式によって計算します。
雇用保険料の額=賞与支給額×雇用保険料率(従業員負担分)*2
設例1における雇用保険料の控除額は、以下のとおりです。
雇用保険料の控除額
=100万円×0.6%
=6,000円
ボーナスから控除される源泉所得税の額は、原則として以下の手順で計算します。
(a)前月の給与から社会保険料等(=社会保険料と小規模企業共済等掛金)を差し引きます。
(b)算出率の表*3を用いて税率を求めます。
(c)以下の式によって源泉所得税額を求めます。
源泉所得税額=(賞与から社会保険料等を差し引いた金額)×上記(b)の税率
設例1における源泉所得税の控除額は、以下のとおりです。
(a)
前月の給与50万円-社会保険料7万7,700円※
=42万2,300円
※健康保険料2万8,950円、厚生年金保険料4万5,750円、雇用保険料3,000円
(b)
扶養親族が2人で、(a)の金額が42万円以上45万円未満のため、算出率の表*3に従った税率は12.252%
(c)
源泉所得税額
=(100万円-5万7,900円-9万1,500円-6,000円)×12.252%
=10万3,480円
設例1において、最終的なボーナスの手取り額は「74万1,120円」となりました。
額面:100万円
控除合計:25万8,880円
(内訳)
健康保険料:5万7,900円
厚生年金保険料:9万1,500円
雇用保険料:6,000円
源泉所得税:10万3,480円
手取り額
=100万円-25万8,880円
=74万1,120円
ボーナスから控除される社会保険料の額は、ボーナスの支給額だけを基準に計算します。
これに対して、ボーナスから控除される源泉所得税の額は、ボーナスの支給額に加えて、前月の給与額も考慮して計算します。
したがって、 ボーナスの額面が同じでも、月給が違えばボーナス手取り額が変化します。
以下の設例2(月給以外は設例1と同条件)において、ボーナス100万円が月給の2か月分・3か月分・4か月分である場合につき、手取り額の違いを確認してみましょう。
<設例2>
令和6年度
年齢:40歳(介護保険第2号被保険者)
勤務地:東京都
事業の種類:一般の事業
扶養親族:2人
ボーナスの額面(社会保険料控除前):100万円
※小規模企業共済等掛金の支払いはなし
<設例2-1>
月給(額面):50万円
設例2-1は、設例1と全く同じです。 手取り額は「74万1,120円」となります。
<設例2-2>
月給(額面):33万円
設例2-2では、社会保険料の控除額は設例1(設例2-1)と同じですが、源泉所得税の額が以下のとおり変化します。
(a)
前月の給与33万円-社会保険料4万9,788円※
=28万0,212円
※健康保険料1万8,528円、厚生年金保険料2万9,280円、雇用保険料1,980円
(b)
扶養親族が2人で、(a)の金額が26万9,000円以上31万2,000円未満のため、算出率の表*3に従った税率は4.084%
(c)
源泉所得税額
=(100万円-5万7,900円-9万1,500円-6,000円)×4.084%
=3万4,493円
したがって、設例2-2における ボーナスの手取り額は「81万0,107円」となりました。
額面:100万円
控除合計:18万9,893円
(内訳)
健康保険料:5万7,900円
厚生年金保険料:9万1,500円
雇用保険料:6,000円
源泉所得税:3万4,493円
手取り額
=100万円-18万9,893円
=81万0,107円
<設例2-3>
月給(額面):25万円
設例2-3でも、社会保険料の控除額は設例1(設例2-1)・設例2-2と同じですが、源泉所得税の額が以下のとおり変化します。
(a)
前月の給与25万円-社会保険料3万7,356円※
=21万2,644円
※健康保険料1万3,896円、厚生年金保険料2万1,960円、雇用保険料1,500円
(b)
扶養親族が2人で、(a)の金額が13万3,000円以上26万9,000円未満のため、算出率の表*3に従った税率は2.042%
(c)
源泉所得税額
=(100万円-5万7,900円-9万1,500円-6,000円)×2.042%
=1万7,246円
したがって、設例2-3における ボーナスの手取り額は「82万7,354円」となりました。
額面:100万円
控除合計:17万2,646円
(内訳)
健康保険料:5万7,900円
厚生年金保険料:9万1,500円
雇用保険料:6,000円
源泉所得税:1万7,246円
手取り額
=100万円-17万2,646円
=82万7,354円
上記の計算結果をまとめると、月給別のボーナス100万円の手取り額は、下表のとおりとなります。
月給 | 手取り額 |
---|---|
50万円 | 74万1,120円 |
33万円 | 81万0,107円 |
25万円 | 82万7,354円 |
本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意下さい。
出典
*1全国健康保険協会「令和6年度保険料額表(令和6年3月分から)」
*2厚生労働省「雇用保険料率について」
*3国税庁「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和6年分)」