2024年4月29日、円安が加速したことで円相場は一時160円台まで下落しました。約34年ぶりの円安水準です。
円安が加速すると海外からの輸入に頼る食料やエネルギー資源の価格が上昇するため、家計の負担が増加します。
本記事では「食料」「電気・ガス代」「ガソリン」の観点から物価の動きと家計への影響を解説するとともに、物価高対策としての節約術を紹介します。
モノやサービスの価格上昇は日々の生活の中でも感じることができますが、総務省統計局が公表する月次の「消費者物価指数」からも物価高の傾向にあることがわかります。2024年4月の「総合」物価指数は前年同月比2.5%上昇しました。
出典)総務省統計局「消費者物価指数(CPI)結果 2024年(令和6年)4月分結果概要、月報(2021年7月~)、年報(2021年~)」をもとに作成
「総合」物価指数の動きを見ることで、私たちの生活全般にわたる物価の変動を把握することができますが、家計に直接影響を与えるのは、具体的なモノやサービスです。次項では、家計に直接的な影響をおよぼす「食料」「電気・ガス代」「ガソリン」に焦点をあてて見ていきましょう。
2022年のロシアのウクライナ侵攻による穀物の流通停滞や気候変動による不作、円安などを背景に、「食料」の物価指数は2021年から2023年にかけて上昇しました。
出典)総務省統計局「消費者物価指数(CPI)結果 月報(2021年7月~)、年報(2021年~)」をもとに作成
海外情勢による輸入食料の流通停滞や円安が家計の食費に与える影響には、輸入食品の価格上昇以外にも以下のようなものがあげられます。
● 加工食品の価格上昇
パンや麺類、菓子類などの加工食品の原材料を輸入に頼る場合、価格が上昇する
● 国内畜産物の価格上昇
輸入に頼る飼料(小麦やトウモロコシなど)を使用する畜産業の場合、産業コストが増加することで肉類や乳製品などの国内畜産物の価格上昇につながる
● 外食コストの増加
輸入食料の価格上昇にともない、輸入食料を使用した外食産業のコスト増加につながる
2024年4月においては主要195社で2806品目が値上げされました。
主にハム・ソーセージや冷凍食品などの加工食品が多くを占めていますが、物価高の動きを踏まえると今後も食品の値上げが予測されますので、日々の食費の見直しが重要になりそうです。
出典)帝国データバンク「「食品主要195社」価格改定動向調査 ― 2024年4月」
日本はエネルギー資源の大部分を輸入に依存するため、電気・ガス代は海外情勢や円安の動きに大きく左右されます。
2022年のロシアによるウクライナ侵攻や円安などを背景に「電気・ガス代」の物価指数は急騰したため、2023年に政府は「エネルギー価格激変緩和対策事業」の一環として、使用量に応じて電気・ガス代を値引きする激変緩和措置を講じました。その影響で2023年は物価指数の下降が見られます。*1
出典)総務省統計局「消費者物価指数(CPI)結果 月報(2021年7月~)、年報(2021年~)」をもとに作成
こうした対策がとられている中、家計への影響として、2024年4月使用分から電気・ガス代はいずれも値上げされました。
電気代は「再生可能エネルギー賦課金」の単価が引き上げられる影響により大手10社で値上げされ、ガス代は原材料となる「液化天然ガス(LNG)」の価格上昇を背景に都市ガス大手4社で値上げされました。*2
また、2024年5月使用分をもって政府による激変緩和措置は終了することが発表され、2024年6月使用分から電気・ガス代はさらに値上げされます。*3*4
ガソリンの物価指数は電気・ガス代と同じく、エネルギー資源の価格上昇を背景に2022年以降は高止まりしている状況です。
出典)総務省統計局「消費者物価指数(CPI)結果 月報(2021年7月~)、年報(2021年~)」をもとに作成
政府は「エネルギー価格激変緩和対策事業」の一環として、全国平均のガソリン代が1リットルあたり170円を超えた場合に上限5円の補助金を元売事業者などに支給する燃料油価格の激変緩和措置を講じており、2024年4月以降も延長することとなりました。
ただし、この対策は小売価格の上昇を抑制することを目的としており、価格を引き下げる対策ではないため、近年のガソリン代は年平均170円台で推移しています。*5
出典)経済産業省「石油製品価格調査 1.給油所小売価格調査(ガソリン、軽油、灯油)<調査結果一覧>1990年(平成2年)8月27日~ 【週次ファイル (xls形式:3913KB)】をもとに作成
家計への影響として、ガソリン代の上昇は車の使用頻度が高い家庭において負担が大きくなることはもちろんのこと、物流コストの増加によりさまざまなモノやサービスの価格上昇につながるため、家計全体に影響をおよぼす可能性があります。
「食料」「電気・ガス代」「ガソリン」における物価高の流れは今後も続く可能性があるため、無理のない範囲で節約し家計の負担を減らしていくことが大切です。
食費は家計の消費支出の中で約3割を占めているため、食費を見直すと家計をスリム化できます。*6
食費の節約は、食材選びやスーパーマーケットを利用する時間帯の考慮など、さまざまな工夫ができますので、ご自身の生活環境や家族構成、食生活のスタイルに合った節約術を見つけて実践してみてください。
【スーパーマーケットなどを利用する際のポイント】
・事前に1週間分の献立を考えることで無駄な買い物を避ける
・複数のスーパーマーケットなどが近隣にある場合、安い店舗で購入する
・夕方のセールや閉店間際の割引される時間帯を狙う
・「〇個で〇〇円」というように単品購入よりも単価が安くなる食材はまとめ買いする
・日持ちする食品は安いときにまとめ買いを心がける
・通常より低価格で購入できる旬の食材を選ぶ
【家庭で調理する際のポイント】
・外食を避け自炊を心がける
・余った食材はすぐに使用予定のない食材は痛む前に冷凍保存する
・レシピのアレンジやリメイクをすることで食品ロスを減らす
電力消費量はエアコン、冷蔵庫で約5割を占めており、電気代の節約は、温度調整や電源のオンオフなど、こまめな節電を意識することが重要です。
出典)経済産業省「省エネルギー政策について」家庭でできる省エネ家電製品別の電力消費割合を知ろう!
以下に紹介する家電製品ごとの節約術の他、長時間使用しない家電製品の主電源やコンセントプラグを抜くなど「待機電力」を減らすことも節電につながります。
出典)経済産業省「どうやったら節電できる?明日からすぐに役立つ節電・省エネのヒント」をもとに作成
ガス代の節約は、調理時間の短縮やシャワー時間の短縮など、「時間の短縮」を意識することで節約につながります。
出典)経済産業省「家庭向け省エネ関連情報 無理のない省エネ節約」をもとに作成
ガソリン代の節約は、燃費をよくするエコドライブを意識することが重要です。
以下のポイントを心がけてエコドライブを実現しましょう。
【エコドライブのポイント】
・アクセルをやさしく踏む(最初の5秒間時速20㎞程度にすることで約10%燃費が改善)
・加速、減速の少ない運転(車間距離により市街地で約2%、郊外で約6%燃費が改善)
・エアコンの使用を適切に(外気と同じ25℃程度設定でエアコンをオンのままにすると約12%燃費が悪化)
・渋滞を避けて余裕のある出発(1時間のドライブで10分間余計に走行をすると約17%消費燃料が増加)
・不要な荷物は降ろす(100㎏の荷物を乗せて走ると約3%燃費が悪化)*7
物価高に家計が圧迫されないように、家計の負担を減らすには無理のない範囲で節約を続けることが大切です。ご家庭でどのような節約ができるのか、ご自身の生活環境や家族構成、ライフスタイルに合わせて検討してみましょう。
本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
出典
*1 経済産業省資源エネルギー庁「エネルギー価格激変緩和対策事業」
*2 NHK「5月の電気とガス料金 大手各社すべて値上げへ」
*3 NHK「電気 ガス料金の負担軽減措置 5月使用分でいったん終了へ 政府」
*4 NHK「7月請求の電気・ガス料金 大手会社が値上げ 今後はどうなる?」
*5 経済産業省資源エネルギー庁「燃料油価格激変緩和補助金」
*6 総務省統計局「家計調査 2023年(令和5年)平均 (2024年2月6日公表)年平均結果(概要及び統計表)(PDF:252KB)」
*7 環境省「エコドライブ10のすすめ」