近年では、「お小遣い稼ぎ」や「副業」として転売に取り組んでいる方が増えました。その一方で、SNSなどでは転売に対して批判的な投稿が数多く見られます。
転売は批判されることが多いものの、法的に転売が禁止されているケースは例外的です。転売ビジネスに取り組む際には、それが合法であるかどうかをあらかじめ確認しましょう。
本記事では、転売が法律上認められるかどうかの境界線や判断基準、転売をする際の注意点などを解説します。
転売とは一般に、他人から買った物を別の人に売る行為を意味します。
物を買うことも売ることも、原則として自由です。したがって、転売も原則として適法であり、違法とされている転売行為はごく一部に過ぎません。
たとえば、小売店が卸売業者から商品を仕入れ、来店した客にその商品を売ることも「転売」といえますが、違法性が指摘されることはほとんどありません。
個人がフリマサイトなどで行う転売も、 ほとんどのケースでは適法であって、違法であるケースは例外的です。
以下のようなケースでは、転売が違法となります。副業などとして転売に取り組む際には、その転売が違法なものに当たらないかどうかを必ず確認しましょう。
反復継続して(=営業として)転売を行うことは「古物営業」に当たります。古物営業を行う者は、都道府県公安委員会の許可を受けなければなりません(古物営業法3条)。
フリマサイトなどにおいて、不要な物を売却する程度であれば、古物営業の許可を得る必要はありません。
これに対して、 副業などとして商品の仕入れと売却を繰り返す場合には、古物営業の許可を得る必要があります。
無許可での古物営業は犯罪であり、「3年以下の懲役または100万円以下の罰金」に処されるのでご注意ください(同法31条1号)。
日本国内で開催される芸術・芸能・スポーツに関するイベントのチケットは、「特定興行入場券」に当たります。
特定興行入場券を、興行主の事前の同意を得ずに定価を超える価格で転売することは、不正転売に当たり違法です(特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律2条4項、3条)。
特定興行入場券の不正転売をした者は「1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金」に処され、またはこれらが併科されます(同法9条1項)。
特定興行入場券の不正転売は、日本国内で行われた場合に加えて、日本国外において日本国民が行った場合も処罰の対象となります(同法9条2項、刑法3条)。
なお、定価以下の価格で特定興行入場券を転売することは、原則として法律上問題ありません。
公共の場で不特定多数の者から入場券などのチケットを購入する行為や、公共の場で不特定多数の者に対してチケットを売りつける行為は「ダフ屋行為」と呼ばれます。 ダフ屋行為は通行人に不安や不快感を覚えさせ、さらに治安の悪化にも繋がるため、各都道府県の迷惑防止条例によって禁止されています。
たとえば東京都の迷惑防止条例では、ダフ屋行為をした者は「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」に処されます(同条例2条、8条1項1号)。
「転売ヤーお断り」「転売禁止」などを謳って販売されている商品を、転売目的がないと偽って購入する行為は、詐欺罪に該当する可能性があります(刑法246条1項)。
詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」です。
単に転売目的があることを黙っていただけでは、詐欺罪に問われる可能性は低いと考えられます。
これに対して、店員から再三にわたって確認を受けたにもかかわらず「転売目的はない」と嘘をついた場合や、転売目的がない旨の誓約書を偽って書いた場合などには、詐欺罪によって処罰されるおそれがあります。
なお、購入時において転売目的がなかった場合には、後から転売を考えるようになったとしても、詐欺罪は成立しません。
ただし、購入時において転売目的があったかどうかは、その前後の行動などを総合的に考慮して認定されます。
たとえば、同じ商品を大量に購入していたり、購入から間もなくフリマサイトなどへ出品していたりすると、購入時における転売目的が認められやすいので注意が必要です。
一部の商品については、 転売を含む販売行為について、行政の許認可を受けることが求められています。
たとえば、酒類の販売には所轄税務署長の免許が必要です(酒税法9条1項)。医薬品等の販売に当たっては、薬機法に基づく厚生労働大臣の許可を受けなければなりません。
特に許認可を受けることなく転売を行う場合は、販売に許認可が必要な商品は避けましょう。
大麻・覚醒剤・麻薬・向精神薬などの違法薬物の販売は、各種の薬物規制法によって原則禁止されています。
わいせつな物を頒布または公然と陳列する行為は、わいせつ物頒布等罪によって処罰されます(刑法175条)。
盗品であることを知りながらそれを譲り受ける行為は、盗品譲受け等罪によって処罰の対象となります(刑法256条)。
上記の例のように、 販売行為などが違法とされている物は「禁制品」と呼ばれています。禁制品の転売は違法であり、刑事罰を受けるおそれがあるので十分ご注意ください。
物価が著しく高騰しまたは高騰するおそれがある場合において、供給が著しく不足し、かつ、需給の均衡回復までに相当の期間を要する生活関連物資等については、政令によって譲渡が制限されることがあります(国民生活安定緊急措置法26条1項)。
新型コロナウイルス感染症が大流行した2020年には、衛生マスクと消毒等用アルコールについて、上記の規定に基づく譲渡制限措置が設けられました。
現在では、衛生マスクと消毒等用アルコールに関する譲渡制限措置は解除されています。
しかし、今後も感染症の流行や天災地変などの影響により、一部の生活関連物資等につき譲渡制限措置が設けられる可能性があります。
譲渡制限措置に違反して生活関連物資等を転売すると、刑事罰の対象になり得るのでご注意ください(同法37条)。
転売行為は、違法なものだけでなく、法律上問題ないものも批判されるケースがよくあります。
転売行為が批判される背景には、「買い占め」や「高額転売」への嫌悪感などがあると考えられます。
買い占めや高額転売が行われると、本当に買いたい人が買えなくなってしまうというのが主な問題意識です。
転売によって商品の入手が困難になると、メーカーが十分な利益を得られなくなったり、ファン離れに繋がったりするおそれがあります。
こうした状況は望ましくありませんが、売買などの取引活動は本来自由であるべきことを考慮すると、法律によって何でもかんでも規制するのは難しいのが実情です。
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