
2024年にマイナス金利政策を解除して以降、日銀は段階的に利上げを進めています。2026年に入ってからも、日銀は利上げ姿勢を崩していません。一方で、中東情勢の緊迫化などのリスク要因もあり、今後の動向は不透明な面もあります。
本コラムでは、直近の政策金利の推移と今後の利上げ動向、私たちの暮らしへの影響を解説します。
利上げとは、中央銀行(日本は日銀)が政策金利を引き上げることです。政策金利は、中央銀行が景気や物価の安定のために設定する短期金利を指します。*1
一般的に、利上げは景気がよいときに実施されます。経済活動が活発になりすぎて、物価が過度に上昇するのを抑えるためです。政策金利を引き上げると企業や家計はお金を借りにくくなるため、経済活動を落ち着かせる効果が期待できます。
反対に、景気が悪いときは、経済活動を活発化させるために政策金利を引き下げます。
日本は長期にわたって低金利環境が続いてきましたが、近年は利上げ傾向にあります。ここでは、直近の政策金利の推移と日銀の金融政策スタンスを確認しておきましょう。
日銀は金融政策正常化の方針のもと、2024年以降は複数回にわたって利上げを実施しています。*2_P20
まず、2024年3月にマイナス金利政策の解除に踏み切り、政策金利の誘導目標を0.1%程度に引き上げました。さらに、2024年7月に0.25%程度、2025年1月に0.5%程度への利上げを実施します。
その後は、トランプ関税の影響による先行き不透明感の高まりによって利上げを見送っていました。しかし、2026年春闘の賃上げ実施の可能性が高まったことなどを理由に、2025年12月に0.75%程度への追加利上げを行いました。
政策金利0.75%程度は、1995年以来約30年ぶりとなる高水準です。*3
2026年に入ってからは、利上げの見送りが続いています。同年3月の金融政策決定会合では、2会合連続で政策金利の誘導目標を0.75%程度で据え置くことを決定しました。*4
このように、日本の政策金利は上昇傾向が続いており、長年の超低金利環境から徐々に転換しつつあります。
先述のとおり、直近では2会合連続で政策金利は据え置きとなりました。
しかし、日銀は「現在の実質金利はきわめて低い水準にある」として、利上げ姿勢を維持しています。*5_P2
実質金利とは、名目金利(見かけの金利)から物価変動の影響を除いた金利水準です。例えば、名目金利が3%、物価上昇率が2%であれば、実質金利は1%となります。*6
世界の先進国に比べて、日本の実質金利は著しく低い状況にあります。
そのため、日銀としては「日本の金融環境は緩和した状態にあり、追加利上げの余地がある」と判断していると考えられます。*5_P1
今後の利上げペースは、複数の要因によって左右されます。ここでは、日銀の判断に影響を与える可能性のある要因について整理します。
2026年の衆議院選挙では、高市自民党が大勝しました。高市政権は経済成長重視の「責任ある積極財政」をかかげており、財政拡張(政府支出の増加、減税など)が当面続くと考えられます。*7
一般的に、積極的な財政政策は景気の下支えにつながりますが、景気が過熱すればインフレ圧力が高まります。また、大規模な財源確保のために、国債が大量に発行される可能性があります。日本の財政悪化への懸念が高まり、国債が売られると、円安圧力が働きやすくなります。*8
そうなれば、インフレ抑制や円安是正のために、日銀は利上げペースを加速するかもしれません。*7
一方で、高市政権は基本的に金融緩和を重視するとみられています。2026年3月現在、政策金利が0.75%程度と約30年ぶりの高水準にあることから、日銀も追加利上げには慎重になりやすいとの見方もあります。
日銀の金融政策において、重要な判断材料の一つが賃金と物価の動向です。過去の金融政策決定会合では、賃上げの見通しが利上げ判断に大きな影響を与えています。
2025年1月および12月の会合では、追加利上げを決めた理由として「春季労使交渉においてしっかりとした賃上げが実施される可能性が高いこと」を挙げています。*9_P2 *10_P1
日銀は、賃金と物価が相互に作用しながらともに上昇していく経済状況を「賃金と物価の好循環」と表現しています。*11_P1
今後も賃金と物価がともに緩やかに上昇していく状況が維持されれば、追加利上げの可能性が高まるでしょう。
中東情勢の緊迫化も、注視すべき内容の一つです。原油価格の上昇などにより、日本経済への影響が懸念されています。*12
2026年3月の金融政策決定会合では、過度な物価上昇は避けなければならないとしたうえで、「経済環境や中小企業の賃上げスタンスが大きく崩れる兆しがみられなければ、躊躇なく利上げに進むことが必要」との意見が出ました。また、「過度な円安進行によりコストプッシュがさらに深刻化する場合は、金融引き締めが必要になる可能性もある」など、利上げの必要性を指摘する意見が相次ぎました。*13_P4
当面の利上げ判断については、中東情勢の緊迫化が重要なポイントになるでしょう。
日銀の利上げは、私たちの生活にもさまざまなかたちで影響を与えます。主なポイントを確認しておきましょう。
金融機関は、政策金利を指標として普通預金の金利水準を設定しています。そのため、日銀が利上げを行うと普通預金金利も上昇します。*14
直近では、2025年12月の利上げを受けて、大手金融機関を中心に普通預金金利を引き上げる動きがみられました。
例えば、三菱UFJ銀行では、2026年2月2日から円普通預金金利を従来の0.20%から0.30%に引き上げています。*15
普通預金の金利が上がれば利息収入が増えるため、多くの預金がある人ほど利上げはプラスに働く側面があるといえるでしょう。
一方で、注意したいのが変動金利型の住宅ローン金利の上昇です。
住宅ローンの変動金利は、1年未満の短期貸し出しに適用される短期プライムレートをもとに決まります。短期プライムレートは政策金利の影響を受けるため、日銀が利上げを実施すると変動金利型の住宅ローン金利も上がる可能性があります。*1
一般的に、変動金利型の住宅ローン金利は半年ごとに適用金利が見直されます。適用金利が上昇すると、毎月の返済額や総返済額が増加するため注意が必要です。
借入時の金利は高めですが、金利上昇リスクを回避したい場合は固定金利型の住宅ローンも選択肢となるでしょう。
2024年以降、日銀は段階的に利上げを進めています。実質金利が低い水準にあることから、今後も利上げが続く可能性は高いと考えられます。ただし、賃金と物価の動向に加え、高市政権の経済政策や中東情勢といった要因が、日銀の判断に影響を与えるかもしれません。
今後の動向を注視しつつ、自身の家計や資産運用への影響を冷静に見極めることが大切です。
本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
出典
*1 三菱UFJ銀行 「利上げとは?住宅ローンや為替・株価・物価に与える影響をわかりやすく解説」
*2 三菱UFJリサーチ&コンサルティング 「2025/2026 年度短期経済見通し(2026年2月)」
*3 NHK 「日銀 利上げ決定 政策金利0.75%に引き上げ 30年ぶり高水準」
*4 日本経済新聞 「日銀利上げ見送り決定、政策金利0.75%で維持 原油高の影響点検」
*5 日本銀行 「当面の金融政策運営について(2026年3月19日)」
*6 日本経済新聞 「実質金利とは 日本は先進国で著しく低い水準」
*7 Bloomberg 「自民圧勝で市場は日銀利上げ前倒しを意識、財政拡張で円安継続の見方」
*8 Money Canvas 「高市政権が進める『積極財政』の実態|国債発行がもたらす日本経済への影響と今後」
*9 日本銀行 「金融市場調節方針の変更について(2025年1月24日)」
*10 日本銀行 「金融市場調節方針の変更について(2025年12月19日)」
*11 日本銀行 「賃金と物価の好循環と今後の金融政策運営(2024年5月8日)」
*12 NHK 「イラン情勢~深刻化する日本経済への影響」
*13 日本銀行 「金融政策決定会合における主な意見(2026年3月18、19日開催分)」
*14 Money Canvas 「銀行の金利、今後はどうなる?普通預金・定期預金金利の動向と合わせて詳しく解説」
*15 三菱UFJ銀行 「円預金金利及び短期プライムレートの改定について(2025年12月19日)」
