
世界最大の経済大国である米国の景気動向は、日本を含む世界経済に大きな影響を与えます。そのため、株式投資や投資信託で資産形成に取り組む際は、日本経済だけでなく、米国経済の動向にも目を向けることが重要です。
本コラムでは、米国経済が日本株に与える影響や、個人投資家が確認しておきたい米国の主要経済指標について解説します。
世界経済の中心的な存在である米国の景気動向は、日本の株式市場にも影響を与えます。まずは、米国経済と日本の株価との関係を確認しておきましょう。
以下は、日経平均株価とNYダウの推移を示したグラフです。
出典)三菱UFJアセットマネジメント「投資環境ウィークリー 2026年3月9日号 P2」
日経平均株価(日本株)とNYダウ(米国株)は、長期的には似た値動きをする傾向にあることがわかります。このように、近年は日本と米国の株価は連動性が高まっており、米国の株価が上がる(下がる)と日本の株価も上がる(下がる)という状況です。
2024年時点、米国のGDPは世界第1位で、世界GDPの約4分の1を占めています。*1_P4
近年のグローバル化により、世界の金融市場は相互に強く結びついているため、米国の景気動向の影響を受けやすい傾向にあります。
特に日本は、米国と経済的に緊密な関係にあります。
日本にとって米国は重要な貿易相手国であり、2024年の金額ベースでは輸入が第2位、輸出は第1位となっています。*1_P11
また、日本は2019年から6年連続で世界最大の対米投資国でもあります。*1_P14
さらに、日本株の売買金額の6割以上は海外投資家が占めています。海外投資家は米国経済を重要視しており、米国の景気が悪くなれば日本株は売られる傾向にあります。*2
このような背景から、米国経済の動向によって米国の株価が上下すると、日本株も似た値動きをしやすくなります。
米国経済の動向を把握するには、さまざまな経済指標を確認することが有効です。ここでは、代表的な経済指標と直近の状況を紹介します。
GDP(国内総生産)とは、一定期間内に国内で算出された付加価値の総額で、国の経済規模を示す指標です。付加価値は、サービスや商品を販売したときの価値から、原材料や流通費用などを差し引いたもの(儲け)を意味します。前期・前年からの増加率である「GDP成長率」をみることで、経済成長の度合いがわかります。*3
以下は、米国の実質GDP成長率の推移です。
出典)三菱UFJ銀行「米国経済・金融概況(2026年2月)P2」
米国の2025年10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+1.4%で、同年7-9月期(+4.4%)から減速しました。過去最長の政府閉鎖の影響で、政府支出が▲1.2%ポイントとなったことが主な要因です。また、全体の約7割を占める個人消費も減速しました。*4_P2
一方で、個人消費の減速は限定的であり、AI関連の需要が高まっていることから、米国の景気は底堅く推移するとの見方もあります。*5_P1
ISM製造業(非製造業)景況指数とは、ISM(全米供給管理協会)が発表する米国の景況感を示す指標です。300社以上の製造業・非製造業に対してアンケート調査を実施し、指数を算出します。一般的には、数値が50%を上回ると景気拡大、50%を下回ると景気後退と判断されます。*6
ISM製造業(非製造業)景況指数の推移は以下の通りです。
出典)三菱UFJリサーチ&コンサルティング「米国景気概況(2026年3月)P1」
直近では、ISM製造業景況指数(2026年2月)とISM非製造業景況指数(2026年1月)のどちらも、判断の目安となる50%を上回っています。*5_P1
雇用統計とは、米国の雇用情勢に関する経済指標です。米国労働省が調査し、毎月第1金曜日に発表されます。米国ではGDPの約7割を個人消費が占めるため、「非農業部門就業者数」と「失業率」は特に注目されます。雇用統計の結果は、FRB(連邦準備制度理事会)の金融政策にも大きな影響を与えます。*7
以下は、米国雇用統計の非農業部門就業者数・失業率の推移です。
出典)三菱UFJ銀行「米国経済・金融概況(2026年2月)P5」
2026年1月の非農業部門雇用者数は前月比+13.0万人で、市場予想(+6.5万人)を上回りました。業種別では「医療・社会扶助(前月比+12.4万人)」が増加の大半を占めており、「専門・ビジネスサービス(前月比+3.4万人)」「建設業(前月比+3.3万人)」も増加しています。一方で、「政府(前月比▲4.2万人)」「金融・不動産(前月比▲2.2万人)」は減少しています。*4_P5
また、2026年1月の失業率は4.3%(前月差▲0.1%ポイント)となり、2ヵ月連続で低下しました。
小売売上高とは、米国商務省が毎月公表している百貨店や総合スーパーの売上高です。米国GDPの約7割を占める個人消費のトレンドを把握できることから、重要な経済指標と位置づけられています。*8
米国小売売上高の推移は以下の通りです。
出典)三菱UFJ銀行「米国経済・金融概況(2026年2月)P5」
2025年12月の小売売上高は、前月比+0.0%となりました。コア売上高(自動車、ガソリン、建設資材、食品サービスを除く)は前月比▲0.1%と3ヵ月ぶりの減少です。業種別にみると、「家具販売店(前月比▲0.9%)」「衣料品販売店(前月比▲0.7%)」「電機・家電販売店(前月比▲0.4%)」など幅広く減少しています。*4_P6
住宅着工件数は、米国内で建設が始まった新規住宅の件数の増減を示す指標です。米国商務省が毎月発表しています。関連産業への波及効果が大きく、景気の先行指標として注目されています。*9
米国の住宅着工件数の推移は以下の通りです。
出典)三菱UFJリサーチ&コンサルティング「米国景気概況(2026年3月)P4」
2025年12月の住宅着工件数は年率140万戸で、2ヵ月連続の増加となりました。ただし、住宅価格やローン金利が高止まりしていることから、住宅着工は低迷が続くとの見方もあります。*5_P4
消費者物価指数(CPI)とは、消費者が購入する商品やサービスの価格変動を示す指標です。食品やエネルギーを含む全体の物価動向を示す「総合指数」、変動の大きい食品とエネルギーを除いた「コア指数」があります。物価変動はFRBの金融政策に影響を与えるため、世界中の投資家から注目されています。*10
以下は、米国の消費者物価指数の推移です。
出典)三菱UFJ銀行「米国経済・金融概況(2026年2月)P8」
2026年1月の消費者物価指数は、総合指数が前年比+2.4%、コア指数が前年比+2.5%となり、それぞれ伸びが鈍化しています。品目別では、「家具・日用品(前年比+3.8%)」「衣料品(前年比+1.7%)」など、関税の影響を受けやすい品目について価格上昇がみられました。*4_P8
経済指標を分析する際は、数値そのものだけでなく、市場予想との差や時系列での変化をあわせて確認することが重要です。*10
結果が市場予想を上回ればポジティブに、下回ればネガティブに評価され、株価が大きく動く要因となることがあります。また、単月の変動ではなく、数カ月単位のトレンドを捉えることで、景気の方向性をより正確に判断できます。
米国は世界最大の経済大国であり、その景気動向は日本株にも影響を与えます。近年は日本株と米国株の連動性も高まっているため、投資信託などで資産形成に取り組むなら、米国経済の動向を把握することが重要です。GDPや雇用統計などの主要指標を確認することで、米国の景気の方向性を読み取るヒントを得られるでしょう。
本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
本コラムの内容は、特定の金融商品やサービスを推奨あるいは勧誘を目的とするものではありません。
最終的な投資判断、金融商品のご選択に際しては、お客さまご自身の判断でお取り組みをお願いいたします。
出典
*1 外務省「米国経済と日米経済関係」
*2 東証マネ部「投資するなら押さえておくべき「経済指標」~海外編~」
*3 三菱UFJモルガン・スタンレー証券「GDP(ジー・ディー・ピー)/国内総生産(こくないそうせいさん)」
*4 三菱UFJ銀行「米国経済・金融概況(2026年2月)」
*5 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「米国景気概況(2026年3月)」
*6 三菱UFJモルガン・スタンレー証券「米ISM(非)製造業景況指数」
*7 三菱UFJモルガン・スタンレー証券「米雇用統計」
*8 三菱UFJeスマート証券「米国小売売上高」
*9 三菱UFJ信託銀行「注目は雇用統計や物価指数!投資も“データ思考”が必要なワケ」
*10 三菱UFJ銀行「経済指標とは? 投資判断におけるポイントと主要な経済指標を解説」
