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【弁護士が解説】4-6月は残業しない方が得って本当?社会保険料の決まり方と影響を確認しよう
【弁護士が解説】4-6月は残業しない方が得って本当?社会保険料の決まり方と影響を確認しよう

【弁護士が解説】4-6月は残業しない方が得って本当?社会保険料の決まり方と影響を確認しよう

20時間前に公開
提供元:阿部由羅

「社会保険料の負担を抑えるためには、4月から6月までは残業しない方がいい」

……ということがよく言われています。

たしかに社会保険料の仕組み上、4月から6月までの残業時間が多いと、社会保険料の金額は高くなりやすいです。社会保険料をできる限り払いたくないなら、4月から6月まではなるべく残業しないという方針にも頷ける部分はあります。

ただし、残業を拒否することによって職場での信頼を失ったり、生活費が不足したりしては本末転倒です。社会保険料ばかりを気にするのではなく、総合的な観点から残業するかどうかを判断してください。

本記事では、4月から6月までの残業が社会保険料の額に与える影響や、本当に残業しない方が得なのかどうかなどを弁護士が解説します。


社会保険料の額はどのように決まるのか?3つの手続きを紹介

企業に勤める人は、健康保険料と厚生年金保険料を労使折半で支払います。40歳以上になると、介護保険料も支払うことになります。

これらの社会保険料(=健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料)の額は、賃金(給与)の額に応じて「標準報酬月額」によって決まります。

標準報酬月額を決定する手続きは、次の3つです。このうち、毎年行われる「定時決定」には4月から6月までの残業代が影響します。

  • 資格取得時の決定*1
  • 定時決定*2
  • 随時改定*3

資格取得時の決定|入社時など

企業に入社したときなど、新たに社会保険の加入資格を取得した場合には「資格取得時の決定」によって標準報酬月額が決まります。
入社直後はまだ賃金が支払われていない段階ですが、就業規則や労働契約などの内容に基づく賃金の見込額に応じて、標準報酬月額が決定されます。

資格取得時の決定による標準報酬月額が適用される期間は、次のとおりです。

(a)1月1日~5月31日に被保険者資格を取得した場合
資格取得月からその年の8月まで

(b)6月1日~12月31日に被保険者資格を取得した場合
資格取得月から翌年の8月まで


定時決定|4月から6月までの平均報酬額に基づいて決定

「定時決定」は、4月から6月までの平均報酬額に基づいて標準報酬月額を決める手続きです。毎年1回行われます。

定時決定による標準報酬月額には、基本給だけでなく、残業代などの手当も反映されます。「4月から6月までの残業が多いと、社会保険料が高くなる」と言われるのはこのためです。

定時決定による標準報酬月額は、その年の9月から翌年8月まで適用されます。


随時改定|賃金が大幅に増減した場合など

「随時改定」は、昇給や降給などによって標準報酬月額が2等級以上変わる場合に行われます。大幅な賃金の増減が生じた際、定時決定を待つことなく、実態に合わせて標準報酬月額の変更を行うものです。

随時改定による標準報酬月額が適用される期間は、次のとおりです。

(a)1月~6月に随時改定が行われた場合
その月から当年の8月まで

(b)7月~12月に随時改定が行われた場合
その月から翌年の8月まで


4月から6月までは、残業しない方が得?

社会保険料を念頭に置いて「4月から6月までは残業しない方が得」という話を耳にすることがあるかもしれません。

たしかに、4月から6月までの残業が多いと、多く受け取った残業代が標準報酬月額に反映されるので、社会保険料が高くなりやすいです。
この点だけを考慮すると、「4月から6月までは残業しない方が得」というのはあながち間違いとも言い切れません。

ただし、4月から6月までの残業が多くても社会保険料が上がらないことや、残業時間を抑えたとしても、結局社会保険料が上がってしまうこともあります。ケースバイケースであることを理解しておきましょう。


4月から6月までに残業をしても、社会保険料が上がらないケース

4月から6月までの残業代が比較的多くても、標準報酬月額が変わらなければ、社会保険料は上がりません。

たとえば標準報酬月額が50万円の場合、実際の報酬月額は48万5000円以上51万5000円未満(4~6月の平均値)です。同じ標準報酬月額の人の間でも、最大3万円の幅があります。

仮に残業をしなかった場合の賃金が月48万5000円で、残業代2万5000円が加算されて総額51万円になったとします。
48万5000円でも51万円でも、標準報酬月額は同じ50万円です。したがってこの場合、残業をしても標準報酬月額は変わらず、社会保険料は上がりません。

なお、標準報酬月額には上限が設けられています。健康保険料・介護保険料については報酬月額135万5000円以上、厚生年金保険料については報酬月額63万5000円以上で、標準報酬月額が上限となります。
たとえば、残業をしなくても月200万円の賃金を得ている人は、どんなに残業しても標準報酬月額が変わらないので、社会保険料は上がりません。


4月から6月までの残業時間を抑えても、社会保険料が上がってしまうケース

4月から6月までの残業時間を少なく抑えれば、定時決定による標準報酬月額の増加は防げます。

しかし、固定的賃金(基本給など)の昇給によって標準報酬月額が2等級以上上がる場合は、随時改定によって標準報酬月額が増加し、社会保険料の額が増えてしまいます。

間近い時期に昇給が想定される場合は、4月から6月までの残業時間を減らしても、社会保険料の負担を抑える効果は限定的である点にご注意ください。


社会保険料を多く払うことは「損」なのか?

社会保険料の金額が増えることを「損」だと捉える風潮は、近年根強くなりつつあります。

たしかに目先の支出が増えますし、遠い将来にどのくらい年金がもらえるのかも分かりづらく不透明です。「株式や投資信託を買って自分で運用した方が増える」という意見も聞こえてきます。

他方で日本の年金制度上、納付する厚生年金保険料の額が増えれば、将来もらえる年金は増えるようになっています。浪費や投資の損失などによって金額が目減りしてしまう心配も、公的年金であれば不要です。

少なくとも「社会保険料の金額は少なければ少ないほどよい」という考え方が、常に妥当とは言いきれないでしょう。
社会保険料を減らす目的で4月から6月までの残業時間を削ろうとしている人は、少し立ち止まって考えてみることをお勧めします。


社会保険料を減らすため、残業をしないようにすることのデメリット

社会保険料を減らすために、とにかく残業を避けようとすると、上司や同僚からの信頼を失ってしまうかもしれません。
「必要な残業なのに……」「他の人に負担を押し付けて……」といった不信の目で見られてしまっては本末転倒です。

また、残業を減らすことによって残業代がもらえなくなり、生活費が不足してしまうような事態も避ける必要があります。

社会保険料ばかりを気にするのではなく、職場や家庭の状況などを総合的に考えて、残業時間をうまくコントロールするよう努めましょう。



本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。


出典
*1 日本年金機構 「資格取得時の決定」
*2 日本年金機構 「定時決定(算定基礎届)」
*3 日本年金機構 「随時改定(月額変更届)」


阿部 由羅

ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。

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