お金を貯めるのが苦手な人がいます。収入が少ない、物価が高いなどの理由を挙げる人もいるでしょう。しかし、これらは本当にお金が貯まらない理由なのでしょうか。
実は、お金が貯まらないのは「片づけられない」からかもしれません。意外に思われるかもしれませんが、片づけとお金の関係は密接なものです。
片づけは単に部屋をきれいにするだけでなく、お金や人生にも大きな影響を与える可能性があるのです。
片づけの議論をする前に、まず自分の家にどれだけの価値が眠っているかをみていきましょう。
ニッセイ基礎研究所の調査によれば、家庭内に存在する不要品を処分すると、1人あたりの平均は28万1,277円に達し、1世帯あたりでは69万4,099円に上ります*1。
1人あたりの金額平均28万1,277円の具体的な内訳を見ると、「服飾雑貨」が11万7,159円と最も多く、全体の41.7%を占めています。次いで「書籍・CD・ゲーム類」が6万1,050円で全体の21.7%を占めました*2。
(詳細は以下リンクご参照)
出典)~1世帯あたり約70万円、金融・不動産に続く第三の資産~日本の家庭に眠る“かくれ資産”総額は推計37兆円以上
個別のカテゴリーで注目すべきは、金額ベースで最も多い「ジャケット・アウター」の2万1,261円で、1年以上使用していない1人あたりの平均数量は2.9着となっています*2。
数量では「書籍・雑誌・コミック」が最も多く、平均して48.7冊に達しています*2。
この調査結果から、家庭に眠っている不用品の意外な価値が明らかになり、それらを片付けることで、家計に新たなゆとりが生まれる可能性があることがわかります。
Benesse(ベネッセ)が運営する「サンキュ!」のアンケートによれば、185人の主婦のうち約7割は自宅が「散らかっている」と回答しました。さらに、「家が片づくとお金が貯まりやすくなると思うか」の問いには、約8割が「はい」と答えました*3。
これは、片づけが「お金の管理」に影響を与えるという認識が広く共有されていることを示しています。
では、なぜ「家が片付いているとお金が貯まりやすい」のでしょうか。
片づけアドバイザーの石坂京子氏によると、片づけられない人は、家の中に存在するモノとその量を十分に把握していないことが多いといいます*4。
モノは目に見える存在であり、それがきちんと理解できていないと、目に見えない資産の管理はさらに複雑になります。
たとえば、資産に関する書類が整理されていないと、銀行にいくら預金があるのか、保険にいくら払っているのか、家を売却したらどれくらいになるのか、車の維持費に年間いくらかかるのか、など目に見えない資産や財産を把握することは難しいでしょう。
石坂氏が指摘しているように、目に見えるモノを管理できない人は、同様に目に見えないモノも効果的に管理できないのでしょう。
予算内で家計を管理することと、収納スペース内で物の量を調整することの本質が同じであると言うのは、過言ではないかもしれません。
ハーバード・ビジネス・レビュー誌のある記事が、お金と幸福の関係について論じています*5。
お金は一定の範囲内で幸せを買えますが、幸せの要因はそれだけではありません。お金の使い方や管理方法も同様に重要です。
たとえば、支出を把握していなかったり、予算を決めていなかったりすると、過剰な支出につながり、ストレスを感じることがあります。
同様に、十分な貯蓄や賢明な資産運用をしなければ、長期的な経済的目標を達成できないかもしれません。
したがって、効果的なお金の管理方法を学ぶことが重要です。これには、予算を立て、支出を記録し、定期的に貯蓄し、将来に投資することが含まれます。
そうすることで、経済状況を改善できるだけでなく、ストレスレベルを下げ、全体的な幸福感を高められます。
お金は大切ですが、それがすべてではありません。どのようにお金を使い、管理するかが、私たちの幸福にとって同じくらい重要なのです。
片づけ心理研究家である伊藤勇司氏によれば、部屋が片づかない状態には人間関係やお金の悩み、やりたいことが見つからないといった多岐にわたる心理的な葛藤が影響しているとされています*6。
現代社会ではモノや情報が過多であり、その中で自分にとって真に重要なものが見えにくいため、片づけが難しいという指摘がなされています。片づけを通して自己と向き合い、自身のめざすべき方向や可能性に気付くことが、成功への第一歩となり得るのです。
部屋が一部片づかないことから自己評価が低下し、「自分はダメだ」と感じるパターンも存在します。伊藤氏は、片づけの目標を自分自身に合わせ、理想と現実のギャップに悩まず、まずは片づかない理由を探ることが肝要であるとアドバイスしています*6。
ファイナンシャル・プランナーの黒田尚子氏は、お金が貯まらない人はまず片付けから始めるべきだと提案しています*7。
片づけをすることで、モノをきちんと管理しようという意識が芽生え、それがお金の管理にもつながるからです。
しかし、これまで片付けができなかった人が大きなことから始めると、途中で挫折してしまう可能性が高いのです。そこで、まずは財布の中身を整理することから始めるのがいいでしょう。
財布の中は、使っていないポイントカードや、いつもらったかわからないレシートなどであふれかえっていることがあります。財布の整理から始めて、徐々にハードルを上げていきましょう。
家中の押入れ、クローゼット、タンス、冷蔵庫を見直すと、どれだけ不要なものが家にあったか、どれだけ無駄な買い物をしていたかがわかります。
安いからという理由で物を買ったり、値上がりするからとやみくもに買いだめしたりしても、少しも節約にはならない。必要なものを必要なだけ買うことが、実は一番の節約であり、お金が貯まる人になる秘訣なのです。
片づけを習慣化するには、自分に合った方法とタイミングを見つけることが大切です。片づけを楽しく続けることで、お金だけでなく、暮らしをより良い方向へ導く手がかりとなるかもしれません。
本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
出典
*1、ニッセイ基礎研究所「~1世帯あたり約70万円、金融・不動産に続く第三の資産~日本の家庭に眠る“かくれ資産”総額は推計37兆円以上」
*2、ニッセイ基礎研究所「~1世帯あたり約70万円、金融・不動産に続く第三の資産~日本の家庭に眠る“かくれ資産”総額は推計37兆円以上」
*3、ベネッセ「約8割が「家が片づくとお金が貯まる」と回答。その理由とは? | サンキュ!」
*4、ダイヤモンド・オンライン「 家を片づけるとお金が貯まるのは「気のせい」ではなく「事実」」
*5、HBR「Does More Money Really Make Us More Happy?」
*6、クロワッサン オンライン「部屋の状態はあなたの心理。片づけが及ぼす効果を検証する。 | くらしにいいこと」
*7、OneNews「整理整頓と貯蓄は同じ原理でできている。お金を貯めたければ、まずは部屋の片づけが効果的(2ページ目) 」