教育費や老後資金のように、将来必要なお金は預貯金のほかに投資で準備するのも選択肢です。しかし、投資は元本保証ではないため、安定的に資産を増やすにはリスクを減らす必要があります。
投資のリスク低減には「分散投資」が有効です。では分散投資とはどういうもので、実践するときはどんなことに注意すればよいのでしょうか。
今回は、分散投資の考え方や期待できる効果、注意点について解説します。
分散投資とは、投資する資産や地域、購入タイミングなどを分散させることによってリスク低減を図り、安定したリターンの獲得を目指す投資手法です。*1
投資の世界には「卵は1つのかごに盛るな」という格言があります。卵を1つのかごに盛る場合、そのかごを落とすと全ての卵が割れてしまうかもしれません。しかし、卵を複数のかごに分けておけば、かごを1つ落としても、その他のかごに盛った卵は割れずに済みます。
投資においても同じことがいえます。たとえば、1つの銘柄だけに投資すると、その銘柄が値下がりした場合に大きな損失が生じます。
一方で、複数の銘柄を購入した場合は、ある銘柄が値下がりしても、他の銘柄が値上がりすれば損失をカバーできる可能性があります。
このように、投資対象資産や購入タイミングを分散させることによって、投資のリスク低減が期待できるのが分散投資の魅力です。
一般的にリスクは「危険」という意味で使われますが、資産運用においては「期待収益の振れ幅」を意味します。期待収益の振れ幅が大きいほど、投資のリスクも大きくなります。*2
リスクの小さい商品は、期待できるリターンも少なくなります。リスクの大きい商品は高いリターンが期待できる一方で、大きな損失が生じる可能性もあります。
たとえば、普通預金や定期預金は預金保険制度の対象であり、万が一金融機関が破綻しても合算して元本1,000万円までとその利息は保護されます。*3
比較的低リスクといえますが、日々の価格変動はないので、大きなリターンは見込めません。
株式や投資信託は値上がり益が期待できますが、運用がうまくいかずに損失が生じるかもしれません。
資産運用で資産を大きく増やしたい場合は、無理のない範囲でリスクを受け入れ、収益の振れ幅の大きい(リスクが高い)商品に投資する必要があります。
分散投資には、「資産の分散」「地域の分散」「時間の分散」という3つの考え方があります。この3つの分散をうまく組み合わせることによって、投資のリスクを抑えながら安定的に資産を増やすことが可能となります。
資産の分散とは、複数の資産・銘柄を組み合わせて運用することです。*4
投資対象となる資産は株式や債券、不動産などがあり、それぞれ特徴が異なります。たとえば、株式と債券は異なる値動きをすることが多く、株式が値上がりするときは債券が値下がりする傾向にあります。
そのため、株式と債券の両方に投資すれば、株式が値下がりしたときに債券の値上がりで損失をカバーできる可能性があります。
投資対象資産を分散する場合は、投資信託を活用するといいでしょう。投資信託とは、投資家から集めた資金を1つにまとめ、専門家が株式や債券などで運用する金融商品です。
個人が複数の資産・銘柄に投資するには、まとまったお金が必要です。しかし、投資信託は多くの投資家から集めた資金でさまざまな資産・銘柄に投資するため、個人でも少額から分散投資を実践できます。
地域の分散とは、複数の地域や通貨を組み合わせて運用することです。*4
投資対象となる資産や銘柄は、国内だけでなく海外にも存在します。海外資産は地域によって通貨が異なり、為替変動によってさまざまな値動きをします。また、資産価格は投資対象地域の政治や経済情勢などにも左右されます。
そのため、国内外の資産・銘柄に幅広く投資を行うことによって、特定地域の資産が値下がりした際に、その他の資産の値上がりでカバーできる可能性があります。
時間の分散とは、金融商品を1度にまとめて購入するのではなく、タイミングを分けて購入することです。*4
金融商品の価格は変動するため、価格が高い時期に多額の投資を行うと、その後の値下がりで大きな損失が生じる恐れがあります。
定期的に一定額を購入する積立投資を続けることで、価格が高い時期は少なく、価格が低い時期は多く購入することになります(ドル・コスト平均法)。
ドル・コスト平均法は、長期的には1回あたりの購入価格を平準化する効果があるため、短期的な値下がりによる損失の軽減が期待できます。
分散投資は投資のリスク低減に有効ですが、具体的にどんな効果が期待できるのでしょうか。ここでは、分散投資のメリットを2つ紹介します。
分散投資を行うと、資産全体の値動きが緩やかになる効果が期待できます。
1986年~2015年において、国内株式のみに1年間投資した場合の収益率は最高59.69%、最低▲40.62%となっています。一方で、「国内株式」「国内債券」「外国株式」「外国債券」の4資産に25%ずつ1年間投資した場合の収益率は最高33.44%、最低▲26.33%です。*5
国内株式のみより4資産に分散投資を行うほうが、価格の変動幅が小さく、リスクを抑えられています。
あくまでも過去の実績であり、今後も同じように運用できるとは限りませんが、分散投資はリスク低減に有効といえます。
分散投資は、長期運用で元本割れリスクを抑えられるのもメリットです。
1996年~2015年に「国内株式」「国内債券」「外国株式」「外国債券」の4資産に25%ずつ投資したケースにおいて、1年間投資した場合は、20年のうち6年で元本割れが発生しています。
それに対して、10年間投資した場合は元本割れがなく、投資期間が長期になるほど収益率が安定する傾向にあります。*6
分散投資で長く運用を続けることによって、元本割れリスクの低減が期待できます。
分散投資で資産形成に取り組む際は、以下の3つを意識することが大切です。
分散投資はリスク低減に有効ですが、元本割れリスクがゼロになるわけではありません。リスクをとりすぎると値動きの大きさに耐えられなくなり、投資を続けられなくなる恐れがあります。預貯金や債券などもバランスよく保有して、リスクのとりすぎに注意しましょう。
短期の値動きに一喜一憂しないことも重要なポイントです。先ほど触れたように、分散投資は投資期間が長くなるほど収益率が安定する傾向にあります。積立投資を活用しながら、長期的な視点で運用に取り組むといいでしょう。
また、長期投資では、手数料が投資成果に大きな影響を与えます。たとえば、投資信託は保有中に「信託報酬(運用管理費用)」がかかり、運用資産から日々差し引かれます。商品によって手数料は異なるので、なるべくコストが低い商品を選びましょう。
資産運用でお金を増やしたいなら、分散投資でリスク低減を図ることが大切です。
投資信託を活用すれば、初心者でも少額から分散投資を実践できます。将来のために、分散投資で資産形成に取り組んでみてはいかがでしょうか。
<関連コラム>
美容も健康もお金も「分散投資」のすすめ
本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
*1出所)三菱UFJ銀行「分散投資とは?どんなメリットがある?どんな商品が良い?」
*2出所)三菱UFJ信託銀行「「長期投資」「分散投資」でリスクをコントロール(資産運用におけるリスクって?)」
*3出所)三菱UFJ銀行「預金保険制度について」
*4出所)金融庁「投資の基本(分散投資)」
*5出所)三菱UFJ信託銀行「「長期投資」「分散投資」でリスクをコントロール(リスクってコントロールできるの?)」
*6出所)三菱UFJ信託銀行「「長期投資」「分散投資」でリスクをコントロール(分散+長期投資の効果とは?)」