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産前産後の年金保険料・支払いはどうなる? 国民年金や厚生年金の保険料免除制度を詳しく解説
産前産後の年金保険料・支払いはどうなる? 国民年金や厚生年金の保険料免除制度を詳しく解説

産前産後の年金保険料・支払いはどうなる? 国民年金や厚生年金の保険料免除制度を詳しく解説

2023/07/03に公開
提供元:Money Canvas

子どもの誕生は喜ばしいライフイベントの一つですが、産前産後の公的年金の保険料はどうなるのでしょうか。
産休中や育休中は一般的に受け取ることのできる給与が減ってしまうので、経済的な不安を感じる人もいるでしょう。

出産や育児に関する公的な経済支援として、「年金保険料の免除」があります。
今回は、公的年金制度(国民年金・厚生年金)の基本的な仕組みを説明したうえで、産前・産後・育児中の年金保険料の免除制度や受給額への影響を解説します。

知っておきたい公的年金制度の仕組み

公的年金制度は、20歳から60歳未満のすべての人が加入する国民年金と、会社員や公務員などが加入する厚生年金の2階建てになっています。
ここでは、国民年金と厚生年金の基本的な仕組みについて説明します。


国民年金

公的年金制度の1階部分となるのが、「国民年金」です。*1
20歳から60歳未満の人は加入の義務があり、この制度を「国民皆年金」といいます。*2

国民年金には3つの加入区分があり、第1号被保険者(自営業者・学生・無職の人など)・第2号被保険者(会社員・公務員など)・第3号被保険者(第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者)に分けられます。*1


国民年金

引用)日本年金機構「知っておきたい年金のはなし」p.4


国民年金制度によって給付されるのは、下記の3種類です。*3

  • 老齢年金(65歳以降、「老齢基礎年金」を亡くなるまで受け取れる)
  • 障害年金(病気やけがによる障害の程度に応じて「障害基礎年金」を受け取れる)
  • 遺族年金(亡くなった場合、残された配偶者や子どもが「遺族基礎年金」を受け取れる)
老後の生活を支えるための「年金(老齢基礎年金)」のイメージが強いですが、若い場合でも、障害が残ったときや加入者が亡くなったときに受け取れる年金があります。

老齢基礎年金の受給条件は、保険料納付済期間と保険料免除期間などを合わせた「受給資格期間」が10年以上必要です。*4
年金額は、国民年金の納付月数や厚生年金の加入期間などによって決まります。


年金に関しては、請求手続きについて理解しておかないと受給資格を得たときに慌ててしまう恐れがあります。受給する年金によって手続き方法が異なるので注意が必要です。


厚生年金

会社員や公務員などが加入する「厚生年金」は、公的年金制度の2階部分です。*1
厚生年金保険が適用される会社で働く70歳未満の人(臨時や季節的に勤務する人を除く)は、必ず加入します。*5

国民年金の3つの給付に、上乗せして下記の年金が支給されます。*3


  • 老齢厚生年金(原則65歳から、老齢基礎年金に上乗せして受け取れる)
  • 障害厚生年金(障害基礎年金に上乗せして受け取れる)
  • 遺族厚生年金(遺族基礎年金に上乗せして受け取れる)

老齢厚生年金で受給できる年金額は、下記の計算式によって算出されます。*6


  • 年金額=報酬比例部分+経過的加算+加給年金額

報酬比例部分は、年金の加入期間や過去の報酬などによって決まります。*6

経過的加算とは、60歳から受給できる「特別支給の老齢厚生年金」を算出する際の「定額部分」と、「老齢基礎年金」の差額を埋めるための加算です。*7
また、一定の条件を満たす対象者には加給年金が上乗せされます。*6



出産・育児に関する年金保険料の控除

産前・産後・育児の期間は、年金保険料を支払わなければならないのでしょうか。
また、保険料が免除された場合、将来の年金額に影響があるのかみてみましょう。


国民年金の場合

国民年金保険料の産前産後期間の免除制度は、2019年4月から始まりました。*8
対象となるのは、出産日が2019年2月1日以降の「国民年金第1号被保険者」です。

国民年金保険料が免除される期間は、出産予定日または出産日が属する月の前月から4ヶ月間です。*8
双子以上を妊娠している場合、出産予定日または出産日が属する月の3ヶ月前から最大6ヶ月間の保険料が免除されます。


国民年金保険料の産前産後期間の免除制度

引用)国民年金機構 国民年金に関するパンフレット「産前産後期間の国民年金保険料が免除されます!」p.1


免除制度を利用するメリットは、保険料を免除された期間も「保険料を納付したもの」として扱われる点です。*8
そのため、下図のように保険料の支払いが免除されても、受け取る年金額に影響はありません。


国民年金保険料の産前産後期間の免除制度1

引用)国民年金機構 国民年金に関するパンフレット「産前産後期間の国民年金保険料が免除されます!」p.1


また、産前産後期間は付加保険料の納付ができます。*8
付加保険料とは、定額の保険料に月額400円を上乗せすることで、将来受け取る年金額を増やす制度です。*9


厚生年金の場合

厚生年金には、産前産後期間だけでなく、育児休業等期間にも保険料が免除されます。
さらに、2022年からは「産後パパ育休」制度もスタートしました。

それぞれの制度について、詳しくみてみましょう。


産前産後休業期間中の保険料免除*10

厚生年金の被保険者が、産前42日・産後56日の間、妊娠または出産のため労務に従事しなかった期間について、厚生年金の保険料は事業主・被保険者ともに支払いを免除されます。
双子以上を妊娠した場合は、産前98日・産後56日間が対象です。
免除の申請は、事業主から日本年金機構に申し出ることとされています。

免除されていた期間は、将来、被保険者の年金額を算出する際、「保険料を納めた」ものとして扱われます。


育児休業等期間中の保険料免除

満3歳未満の子どもを養育するために休業する期間は、事業主が日本年金機構に申し出ることで、被保険者・事業主ともに厚生年金の保険料が免除されます。*10
育児休業等が始まった日の属する月から、育児休業等が終了する日の翌日が属する月の前月までが、報酬にかかる保険料の免除期間です。*11

育児休業中の保険料免除についても、産前産後休業と同様、将来の被保険者の年金額に保険料免除の期間が影響することはありません。*10

また、育児・介護休業法の改正により、2022年(令和4年)10月から「産後パパ育休(出生時育児休業制度」が始まりました。*12

産後パパ育休では、育児休業等開始日が含まれる月に14日以上育児休業等を取得した場合でも、報酬にかかる保険料が免除の対象となります。*11
賞与にかかる保険料は、当該賞与月の末日を含んだ連続した1ヶ月を超える育児休業等を取得した場合であれば免除されます。


まとめ

産前産後や育児休業中は、国民年金および厚生年金の保険料免除制度を受けられます。
保険料を免除された間は、保険料を支払ったものとみなされるため、将来の年金受給額への影響を心配する必要はありません。

2022年に開始された「産後パパ育休」も、条件を満たせば保険料免除の対象となります。
産まれてくる子どものためにも、必要な制度をしっかり活用していきましょう。


本稿執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。


出典
*1日本年金機構「知っておきたい年金のはなし」p.4
*2日本年金機構「知っておきたい年金のはなし」p.2
*3日本年金機構「知っておきたい年金のはなし」p.5
*4日本年金機構「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額」
*5日本年金機構 年金Q&A「会社に勤めたときは、必ず厚生年金保険に加入するのですか。」
*6日本年金機構「老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額」
*7日本年金機構「経過的加算」
*8日本年金機構「国民年金保険料の産前産後期間の免除制度」
*9日本年金機構「付加保険料の納付」
*10日本年金機構「厚生年金保険料等の免除(産前産後休業・育児休業等期間)」
*11日本年金機構 年金Q&A「育児休業中の厚生年金保険の保険料はどうなるのですか。」
*12厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」p.2

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