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日本の実質賃金と名目賃金の推移は? マイナスからの脱却は進む?
日本の実質賃金と名目賃金の推移は? マイナスからの脱却は進む?

日本の実質賃金と名目賃金の推移は? マイナスからの脱却は進む?

2026/07/09に公開
提供元:清水沙矢香

2026年の春闘では、中小企業も含めて概ね5%台の賃上げと多くの企業で高水準の交渉に成功しました。ここ数年、大幅な賃上げが続いています。

しかし同時に物価も上昇しており、わたしたちがモノを多く買えるようになったかというと、そうではないと感じる人は多いのではないでしょうか。

賃金には「実質賃金」と「名目賃金」とがあります。これまでより多くのモノを買えるようになったわけではないのは、物価上昇率を考慮した「実質賃金」が伸びていないためです。

「実質賃金」と「名目賃金」の違いやその推移などをみていきましょう。


2026年春闘の結果

連合がまとめた2026年春闘の結果は、平均で5.09%、300人未満の中小組合でも5.00%と大幅な賃上げで妥結しています(2026年4月1日時点)。*1

帝国データバンクの調査(1月実施)からこの賃上げについて詳細に見てみると、2026年度に賃金改善を見込む企業は63.5%で、2年連続で6割台になりました。また、ベースアップ(基本給の一斉値上げ)を実施する企業は58.3%にのぼり、こちらは5年連続で過去最高を記録しています。*2

実はここ数年、大幅な賃上げが続いています。2020年以降、右肩上がりといえるでしょう。


0

出典)独立行政法人労働政策研究・研修機構


企業がここまで高い水準で給与を引き上げる理由は、やはり「労働者の定着・確保」が最も多くなっています。


1

出典)帝国データバンク 「2026年度の賃金動向に関する企業の意識調査」


次いで「従業員の生活を支えるため」「物価動向」と続いています。人手不足を背景に、賃金の上昇傾向がここ数年続いていることもわかります。


実質賃金の伸びはマイナスが続いていた?

順調な賃上げが続いているように見えますが、そうとも言い切れません。
「実質賃金」という観点があるからです。
実質賃金は、下記の計算式で算出される考え方です。*3

実質賃金=名目賃金 ÷ (消費者物価指数 ÷100)

「実質賃金」は、名目賃金(現金給与の総額)とは違って物価変動を考慮した購買力を示す指標であり、実際の生活水準への影響を測るために用いられます。つまり、実質賃金が伸びなければ、生活水準は改善しにくいということです。
なお消費者物価指数とは物価の値動きを示すもので、基準となる年を100として算出される数字です。
これを含めた実質賃金は、下のように推移してきています。


2

出典)厚生労働省 「毎月勤労統計調査 2026(令和8)年1月分結果速報」p5


上のグラフで0.0を下回る数値は、物価上昇が賃金の伸びを上回り、実質賃金の前年比伸び率がマイナスになっている状態を示しています。
つまり「名目賃金」と「実質賃金」を見比べると、2025年は名目賃金が増加する一方で、実質賃金の前年比伸び率はマイナス圏で推移していたことがわかります。


マイナスから本当に脱却できる?

ようやくプラスに転じた実質賃金ですが、いつまで維持できるでしょうか。
今後も続くでしょうか。

そのカギを握っているのは、物価の変動と言えます。

2025年12月31日にガソリンの暫定税率が廃止され、ガソリン価格の下落要因となりました。
しかしアメリカのイラン攻撃が始まったことによって再び中東情勢が混乱し、ガソリンの値上がり傾向が見られます。


3

出典)内閣府 「月例経済報告等に関する関係閣僚会議資料」p3


2026年2月28日、アメリカとイスラエルが共同してイランへの攻撃を始めました。それに伴って中東からの原油輸入の要塞であるホルムズ海峡の通過に大きな影響を与えるなど、日本経済にも影響を与えています。上のグラフを見ても、3月あたりから原油価格が急上昇したことがわかります。

なお、帝国データバンクが4月に入って実施した調査によれば、中東情勢の緊迫化を背景とする原油価格の高騰や供給不安が与える自社への影響について「マイナス影響がある」と回答した企業の割合が96.6%と9割を超えています。*5

さらに今回の事態が半年続いた場合、43%の企業が主力事業の縮小を想定すると回答しました。
特に「製造」は3カ月未満でも22.8%の企業が経営への深刻な影響を懸念しており、短期間でも経営に重大な影響が及ぶとみる企業が比較的多い結果となっています。

業績の悪化は賃金の低下を招く可能性が大いにあります。さらに物価の上昇も重なれば実質賃金の伸び率は再びマイナスに転じる可能性は否定できません。


今後もアメリカ・イラン情勢に注意

今後の企業業績や物価の変動は、アメリカとイランの戦争状態がどう動いていくかにも大きく影響を受けるでしょう。
物価が上昇すれば実質賃金は下がることになります。

トランプ大統領はイランについて様々な発言をしていますが、争いの出口戦略については政権内でも路線を巡って対立が続いているようです。*6

中東情勢がどのように推移するのかが、今後の物価や実質賃金に大きな影響を与えるでしょう。



本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。


出典
*1 連合 「全体も中小組合も 5%台の高水準が続く!~2026 春季生活闘争 第 3 回回答集計結果について~」
*2 帝国データバンク 「2026年度の賃金動向に関する企業の意識調査」
*3 三菱UFJeスマート証券 「実質賃金とは?名目賃金との違いや推移を解説」
*4 朝日新聞デジタル 「25年の実質賃金1.3%減、4年連続マイナス 物価上昇が影響」
*5 帝国データバンク 「中東情勢による原油価格高騰・供給不安の影響アンケート」
*6 ロイター通信 「イラン戦争の出口戦略、トランプ政権内で路線対立=関係筋」


清水 沙矢香

2002年京都大学理学部卒業後TBSに入社、主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として国内外の各種市場、産業など幅広く担当し、アジア、欧米でも取材活動にあたる。その後人材開発などにも携わりフリー。取材経験や各種統計の分析を元に各種メディア、経済誌・専門紙に寄稿。
趣味はサックス演奏と野球観戦。

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