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「金利のある世界」のポートフォリオ ゼロ金利時代との違いや望ましい資産形成法は?
「金利のある世界」のポートフォリオ ゼロ金利時代との違いや望ましい資産形成法は?

「金利のある世界」のポートフォリオ ゼロ金利時代との違いや望ましい資産形成法は?

15時間前に公開
提供元:横内美保子

日本は長く続いたゼロ金利環境から、「金利のある世界」へと移行しつつあります。

金利が上昇する局面では、合理的とされる投資のあり方がゼロ金利時代とは変化します。

「金利のある世界」を前提に、ゼロ金利時代との投資環境の違いを整理し、個人投資家にとって望ましいポートフォリオと資産形成の考え方をわかりやすく解説します。



金利とはどういうもの?

そもそも金利とはどのようなものでしょうか。


利息と金利

金利とは、借りた金額に対してどれくらいの割合で利息(利子)が発生するのかを表すもので、一般的にパーセント「%」で表記します。*1

「利息」とは、お金の貸し借りにおいて、借りた人が貸した人へ支払う対価(レンタル料)のことで、借りた金額に応じてさまざまな割合で支払います。

お金を銀行に預けたり、債券に投資したりすると、利息がもらえます。

一方で、お金を借りると利息を支払う立場になります。

私たちがお金を預けたり、借りたりする時の金利は、それぞれの金融機関が日本銀行(以下、「日銀」)の金融政策等に基づいて決めています。


短期金利と長期金利

期間による金利の分類には、短期金利と長期金利があります。

短期金利とは、期間が1年未満のお金の貸し借りに用いる金利のことです。*2

各国の中央銀行(日本では日銀)は短期金利を政策金利として上げ下げすることによって、金融政策を行っています。

一方、長期金利とは、期間が1年以上の資金の貸し借りに適用される金利です。*3

直近に財務省が発行した10年物国債の利回りが代表的な指標となっており、住宅ローン金利や貸出金利のレートを決める際の目安になります。

景気や物価の先行きなどの予測も反映するため「経済の体温計」とも呼ばれています。


日本の金利はなぜ上昇しているのか

次に、日本の金利が上昇している背景を、金利の推移からみていきましょう。


ゼロ金利時代

1999年に日銀はゼロ金利政策を導入し、その後、短期政策金利は長い間、ほぼゼロの低い水準で推移してきました。*4

例外は2006年から2008年までの短期間で、政策金利は0.25~0.5%でしたが、2008年のリーマン・ショックの後、政策金利は再びゼロに近いレベルに戻りました。

その後、2016年に「マイナス金利」が導入されました。*5

マイナス金利とは、銀行が日本銀行に預けているお金の一部に対して、利息をもらうのではなく支払うという政策です。

この政策の目的は、銀行にお金をため込ませず、企業への貸し出しや住宅ローンなどに回してもらい、景気を良くすることです。

それまでの15年間、日本は毎年のように物価が下がるデフレが続いていました。デフレ下では会社の売上げが増えないので、給料も上がりません。

そこで日銀は2013年から大規模な金融緩和を行っていました。

金融緩和政策とは、主に金利を下げることで、景気をよくする政策のことです。*6

金利が下がると、会社と個人の両方に影響があります。

まず会社にとっては、銀行からお金を借りるときの利息が減るため、利益がふえたり、新しい設備投資や事業にお金を使いやすくなります。その結果、経済全体の活動が活発になります。

次に個人にとっては、住宅ローンや自動車ローンの金利が下がるため、大きな買い物がしやすくなり、消費が増えます。一方で預金の利息は減るため、貯金よりも投資や消費にお金を回す人が増えます。

つまり、金融緩和によって金利が下がると、会社は投資しやすくなり、個人はお金を使いやすくなるため、景気がよくなるのです(図1)。


0

図1 金融緩和の効果

出典)日本証券業協会 「今さら聞けない!投資Q&A Q金融緩和政策と株価の関係って?」


日銀が2016年から始めたマイナス金利は、こうした金融緩和策をより強力にし、経済を活発にして、将来は給料や金利を上げるための政策でした。*5

マイナス金利の結果、ローン金利は下がりお金を借りやすくなりましたが、普通預金金利は0.02%からさらに0.001%へと低下しました。


マイナス金利の解除と金利上昇

日本銀行は、2024年3月19日の政策委員会・金融政策決定会合で、マイナス金利政策の役割は果たされたものと考え、マイナス金利の解除を決定しました。*7

その後、2025年1月24日の金融政策決定会合では政策金利を0.25%から0.5%に引き上げることが決まりました。*8

これはマイナス金利解除以降では3回目の追加利上げで、過去30年間で最も高い金利水準となりました。

長期金利も上昇しています(図2)。*9


1

図2 2000年から2025年までの日本の政策金利と長期金利

出典)三菱UFJアセットマネジメント 「特別レポート」(2025年6月17日)


その後、2025年12月の金融政策決定会合で、政策金利を0.75%に引き上げると決めました。

さらに、2026年中にはさらに金利が引き上げられるのではないかと推測されています。*10、*11


「金利のある世界」の家計はどうなる?

2024年以降、日本は長く続いたゼロ金利時代から「金利のある世界」に移行しつつあります。

ここでは、「金利のある世界」の家計についてみていきます。


世代による違いと住宅ローン

日銀が金利を1%まで引き上げた場合、家計全体としては金利上昇のメリットのほうが大きいと分析されています。*12

2024年9月末時点では、家計の預金は1,007兆円、借入は363兆円で、預金のほうが大きく上回っています。

日本の家計は金融資産の約半分を現金・預金が占めているという特徴があり、金利が上がることで得られる利息の増加が、ローンなどの借入の利息負担の増加よりも大きくなりやすい構造になっていると指摘されています。

ただし、金利上昇による家計への影響は世代によって大きく異なる点に注意が必要です。

高齢者世代は預金など多額の金融資産を保有しているうえに、住宅ローンなどの負債はあまりないことから、金利上昇に伴う利子収入の恩恵を受けやすいといえます。

一方、若い世代は金利上昇による負担に対して、比較的弱いと考えられます。金融資産が少ないうえに、住宅ローンなどの負債を多く抱えており、金利上昇に伴う負担が大きいという状況があるからです。

物件価格が上昇する中で、年収に対する住宅ローンの比率が若い世代を中心に増加していることや住宅ローンの8割程度が変動金利型ローンであることがその背景にあります。

住宅ローンの金利タイプには、固定金利型と変動金利型がありますが、変動金利型の住宅ローンは、固定金利型に比べて政策金利の影響を受けやすいのです。*13

金利上昇による返済額の増加を防ぐためには、繰り上げ返済を活用してローン残高を減らしておくことが有効です。

すでに変動金利で住宅ローンを組んでいる場合は、他の金融機関で固定金利に切り替えることも選択肢の1つです。


家計金融資産の推移

では、実際の家計金融資産はどのようになっているのでしょうか。

2025年12月末の家計金融資産残高は2,351兆円で、前年比5.3%、118兆円の増加になりました(図3)。*14


2

図3 個人の金融資産

出典)日本銀行 「参考図表 2025年第4四半期の資金循環(速報)」(2026年3月18日)p.4


金融商品ごとの内訳は、現金・預金が48.5%、保険・年金・定型保証が24.7%(そのうち保険が17.9%)、株式等が14.5%、投資信託が7.0%、債務証券が1.5%となっています。

このうち、前年からの増加がもっとも大きいのは株式等の22.6%で、次いで投資信託の21.3%が続きます。


「金利がある世界」の資産運用

次に、金利上昇に伴うお金の移動を基に、「金利のある世界」の資産運用について考えていきましょう。


お金はどこに向かっている?

2025年7-9月期の家計の金融資産のうち現金・預金に注目すると、普通預金などすぐに引き出せる預金から6.3兆円の資金が流出していました。*15

これは、物価上昇によってお金の価値が下がることへの不安から、より金利の高い定期預金や個人向け国債、株式などの資産へ資金を移す動きが広がったためと考えられます。

新しいNISAを使ってより高い利益を目指せる投資信託や海外の株式・債券に加え、リスクが低く比較的金利の高い国債や定期預金に、お金が多く集まっているのです。

新規発行される国債は利率が上がり、利子収入が増える可能性がありますが、基本的には金利が上がると債券価格は下がります。*13

債券は満期まで持てば原則として元本が戻りますが、途中売却すると元本割れになる可能性があるので注意が必要です。

また、保険商品にもプラスの効果が期待できます。

「個人年金保険」や「学資保険」などの予定利率(利回りに相当するもの)を引き上げる動きが出始めています。


株式投資はどうなる?

では、株式投資はどうでしょうか。

一般的に、金利上昇は株価の下落要因となります。*16

ただし、株式は、インフレによるお金の価値の目減りを防ぐ手段として有効だとよくいわれます。

株価は物価が上がると一緒に上がりやすいからです。

そのため、金利によってインフレ率が上がると予想されている現在の状況は、「株価にとってプラスになるインフレ環境が続く」と投資家が考え始めていることを意味します。

つまり、株式投資にとっては追い風とみることもできると、専門家は指摘しています。

今回の金利上昇を、デフレから抜け出した「正常な状態への変化」と考えると、すべての投資が減るわけではなく、むしろ、これまで停滞していた分野では、国内投資が活発になる可能性があるという見方もあります。*17

「金利のある世界」に移行することは、資産運用の選択肢を広げることにつながるという指摘です。

これまでは、日本国債など安全性の高い円建て資産でも利回りがとても低く、株式のような値動きの大きい資産のリスクを補うのが難しい状況でした。

そのため、株式と債券を組み合わせるような分散投資の魅力もあまり高まりませんでした。

しかし、今後は金利の上昇によって円資産の利回りが改善し、円建て資産だけでもバランスの良い資産配分がしやすくなります。

その結果、株式などリスクの高い資産への投資も、より活発になる可能性があるのです。


おわりに

日本は長く続いたゼロ金利時代を経て、「金利のある世界」へと移行しつつあります。

この変化は、住宅ローンの負担増など注意すべき面がある一方で、家計の資産運用にとっては選択肢が広がる状況です。

年齢や収入、負債の有無、使う予定のお金など、自分自身の状況に合わせて、資産配分を見直す機会にしてみてはいかがでしょうか。



本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
本コラムの内容は、特定の金融商品やサービスを推奨あるいは勧誘を目的とするものではありません。
最終的な投資判断、金融商品のご選択に際しては、お客さまご自身の判断でお取り組みをお願いいたします。



出典
*1 三菱UFJ銀行 「金利とは?利息の計算方法など仕組みや注意点をわかりやすく解説!」(2024年6月14日更新)
*2 日本経済新聞 「短期金利とは 金融政策の誘導対象に」(2024年3月22日 2:00)
*3 日本経済新聞 「長期金利とは 経済の体温計、景気や物価の先行き映す」(2025年7月16日 2:00)
*4 世界経済フォーラム 「日本のマイナス金利時代に幕、チーフエコノミストの解説」(2024年4月2日)
*5 日本銀行 「金融政策 5分で読めるマイナス金利」(2016年3月25日)
*6 日本証券業協会 「今さら聞けない!投資Q&A Q金融緩和政策と株価の関係って?」
*7 全国銀行協会 「マイナス金利解除」
*8 日本経済新聞 「日銀、0.5%に利上げへ 17年ぶり金利水準に金融政策」(2025年1月24日 5:00)
*9 三菱UFJアセットマネジメント 「特別レポート」(2025年6月17日)
*10 日本経済新聞 「日銀、『賃金・物価の上昇維持』で利上げ決定 12月会合要旨」(2026年1月28日 9:21)
*11 野村総合研究所 「日銀総裁記者会見:市場の利上げ期待を通じて円安阻止を狙ったか」(2026年3月19日)
*12 三菱UFJ信託銀行 「『金利のある世界』に戻る日本」p.6、7
*13 三菱UFJアセットマネジメント mattocoLife 「金利のある世界とは 私達の生活への影響は何がある?」(2025年6月18日)
*14 日本銀行 「参考図表 2025年第4四半期の資金循環(速報)」(2026年3月18日)
*15 ニッセイ基礎研究所 「資金循環統計(25年7-9月期)~個人金融資産は2286兆円と過去最高を大幅更新、現預金の割合が50%割れに」(2025年12月17日)
*16 第一生命経済研究所 「『金利のある世界』で株式投資 長期金利1%との付き合い方」(2024年5月27日)
*17 大和総研 「『金利のある世界』で国内投資に活性化期待」(2026年1月23日)




横内美保子

博士(文学)。総合政策学部などで准教授、教授を歴任。専門は日本語学、日本語教育。
高等教育の他、文部科学省、外務省、厚生労働省などのプログラムに関わり、日本語教師育成、教材開発、リカレント教育、外国人就労支援、ボランティアのサポートなどに携わる。
パラレルワーカーでもあり、ウェブライター、編集者、ディレクターとして分野横断的な取り組みを続けている。

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