
日銀は2026年6月、政策金利の誘導目標を1.0%程度へ引き上げました。*1
住宅ローンを利用している人にとっては、「返済額はいつふえるのか」「固定金利へ変更したほうが良いのか」が気になるところです。
住宅金融支援機構の調査では、2025年4月から9月に住宅ローンを利用した人の75.0%が変動型を選んでいました。
また、金利上昇時の返済額について「理解しているか少し不安・よく理解していない・まったく理解していない」と回答した人の合計は52.0%です。*2
利上げの影響は、金利タイプや金融機関、契約内容によって異なります。
本記事では、変動・固定金利への影響と、借り換えや家計を見直す際のポイントを解説します。
政策金利が上がると、金融機関の資金調達コストや市場金利を通じて、住宅ローン金利にも影響がおよびます。
借入中の人だけでなく、これから住宅を購入する人にとっても、借入可能額や毎月返済額を左右する要因です。
ただし、政策金利の上昇幅がそのまま住宅ローン金利へ反映されるわけではなく、影響が出る時期も商品ごとに異なります。
政策金利は、住宅ローン利用者に直接適用される金利ではありません。
日銀が金融市場の短期金利を調節する際の目安で、変動金利の基準として使われる短期プライムレートなどにも影響します。
日銀はマイナス金利政策の解除後、段階的に政策金利を引き上げ、2026年6月に1.0%程度としました。*1
長く続いた超低金利からの転換が進むなか、住宅ローンでも金利上昇を想定して返済計画を確認する必要性が高まっています。
背景には、物価や賃金の動きを踏まえ、金融緩和の度合いを調整する狙いがあります。
2026年5月の全国消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合指数が前年同月比1.4%上昇しました。*3
日銀は、原油価格や企業の価格転嫁によって物価が上振れるリスクにも言及しています。*1
一方、利上げの時期やペースは、景気、物価、為替などを点検しながら判断されます。
今後の金利を断定的に予測するより、複数の上昇幅を想定して備えることが現実的です。
変動金利は利上げの影響を受けやすいものの、政策金利が上がった直後に毎月返済額がふえるとは限りません。
「基準金利」「適用金利」「返済額」は、それぞれ見直されるタイミングが異なる場合があります。
住宅金融支援機構の調査では、返済中の変動型ローンについて、基準金利を4月・10月に見直す金融機関が最も多く、毎月の利息額が変わる時期は見直し月の3ヵ月後が最多でした。*4
基準金利を見直してから適用金利や利息額へ反映されるまでの期間は、金融機関や商品によって異なります。
借入先から届く通知や返済予定表で確認しましょう。*4
元利均等返済の変動金利には、金利が上がっても5年間は返済額を変えない「5年ルール」や、見直し後の返済額を従来の125%以内に抑える「125%ルール」が設けられている場合があります。
調査では、この組み合わせを採用する金融機関が最も多い結果でした。*4
ただし、すべての商品に適用されるわけではありません。
返済額が据え置かれても利息の割合が増え、元金の減りが遅くなります。
5年ルール・125%ルールが適用されても返済負担がなくなるわけではなく、抑えられた返済分は将来の返済へ先送りされます。
返済額が変わらない期間も、適用金利と元金残高を確認しましょう。*5
住宅金融支援機構のシミュレーションを参考に、残り30年、元利均等返済、ボーナス返済なしで、金利が年1.00%から年1.25%へ上がった場合の返済額を試算しました。*6
0.25%の上昇でも、残債が大きいほど負担は増えます。
ただし、5年ルールがある契約では、金利上昇後すぐに表の金額だけ返済額がふえるとは限りません。
適用金利、残り期間、返済方法を入力して、自分の条件で試算することが大切です。
変動金利の基準金利は、短期プライムレートなどを参照して見直されます。
参照する金利や見直し時期は金融機関ごとに異なるため、政策金利が同じ幅で上がっても適用金利の動きは一律ではありません。*4
金融機関のWebサイトには、新規借入向け金利が掲載されている場合があります。
表示された低い金利だけで判断せず、自分に適用されている金利や優遇幅、次回の見直し日を契約書やマイページで確認しましょう。
全期間固定金利で返済中の人は、原則として現在の適用金利や返済額は変わりません。
一方、新たに固定金利で借りる人や、当初固定期間の終了が近い人は影響を受けます。
変動金利は政策金利の影響を受けやすい一方、全期間固定金利は借入時に返済終了までの適用金利が確定します。*5
7月上旬には、10年物国債利回りが2.85%まで上昇し、約30年ぶりの高水準となる場面がありました。*7
新機構団信付きのフラット35の2026年7月資金受取分では、返済期間21年以上35年以下、融資率9割以下の最頻金利が年3.14%です。*8
全期間固定金利は完済までの返済額を確定できますが、借入時の金利は変動型より高い傾向があります。
金利が下がっても返済額は自動的には減らないため、安心感と当初負担の両方を比べる必要があります。
5年固定や10年固定は、固定期間の終了後、その時点の金利で変動型または固定型を選び直します。
期間終了時の金利が借入時より高ければ、その後の返済額がふえる場合があります。
固定金利期間選択型は、固定期間の終了後、原則として変動金利に移行し、商品によっては再度固定金利を選べます。*5
返済額の見直し方法は商品によって異なるため、満了の数ヵ月前には、終了日、適用予定金利、手続き期限を確認しましょう。
変動金利と固定金利のどちらが適しているかは、将来の金利動向だけでは決まりません。
住宅ローン残高や返済期間、収入の安定性、教育費などの支出予定も含めて考える必要があります。
金利が上がっても家計に余裕を持って返済できる人は、当初金利を抑えやすい変動金利が選択肢になります。
一方、返済額の変化を抑えて長期の家計計画を立てたい人は、固定金利を検討しやすいでしょう。
金利の低さだけでなく、「返済額が増えても家計を維持できるか」「返済額をどこまで確定させたいか」という視点が重要です。
変動金利から固定金利へ借り換えると、固定期間中は金利上昇による返済額の変化を抑えられます。
ただし、借り換え先の固定金利が現在の適用金利を上回る場合は、毎月返済額や総返済額がふえることがあります。
借り換えでは、保証料、印紙税、登録免許税、司法書士報酬などの諸費用がかかります。*9
金利上昇への不安だけを理由に借り換えるのではなく、現在の住宅ローンを続けた場合と、諸費用を含めた借り換え後の総返済額を比較しましょう。
近い将来に住宅を売却する予定がある場合は、借り換え費用を回収しきれないこともあります。
手元資金に余裕がある場合は、返済増加に備えて現金を確保するほか、繰り上げ返済で元金を減らす方法も選択肢です。
ただし、生活予備資金まで返済に回すと、病気や失業などの急な支出に対応しにくくなります。
また、期間短縮型の繰り上げ返済により、最初の返済月から短縮後の最終返済月までの償還期間が10年未満になると、その年以後は住宅ローン控除を受けられなくなります。*10
借り換え効果が得られやすい条件として、一般に次の目安が挙げられます。*9
これらの条件を満たすほど、借り換えによる利息の軽減額が諸費用を上回りやすくなります。
ただし、あくまで目安であり、実際の効果は住宅ローン残高、返済期間、金利差、諸費用によって変わります。
比較する際は、団体信用生命保険の保障内容や審査条件、住宅ローン控除、繰り上げ返済の予定なども含め、借り換え後の総負担を確認することが大切です。
利上げ局面では、将来の金利を当てようとするより、自分の契約と家計への影響を確認することが先決です。
借入残高、適用金利、残り期間、金利タイプを確認します。
変動型では金利と返済額の見直し時期、5年ルール・125%ルールの有無を確認します。
当初固定型では、固定期間の終了日と終了後の優遇幅が重要です。
現在の金利から0.25%、0.5%、1.0%上昇した場合を試算します。*6
毎月の増加額だけでなく、年間負担や教育費、車の買い替えなどと重なる時期にも返済できるかを確認しましょう。
試算結果をもとに、貯蓄や固定費を見直します。
毎月返済額が増えても赤字にならないか、予定している教育費や修繕費を確保できるかまで確認しましょう。
繰り上げ返済は利息軽減につながりますが、手元資金を減らしすぎると、病気や失業などの急な支出に対応しにくくなります。
生活防衛資金を残したうえで、繰上返済、金利タイプの変更、借り換えのどれが家計に合うかを比較することが大切です。
利上げの影響が表れる時期や大きさは、契約によって異なります。
変動型では金利が上がっても返済額がすぐに変わらない場合があり、当初固定型では期間終了後に負担がふえることがあります。
まずは残債、残り期間、適用金利、見直し時期を確認し、複数の金利上昇パターンで試算しましょう。
今後の金利を正確に予測することは難しいため、返済額が増えても生活や将来の資金計画を崩しにくい状態を整えることが大切です。
本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
本コラムの内容は、特定の金融商品やサービスを推奨あるいは勧誘を目的とするものではありません。
最終的な投資判断、金融商品のご選択に際しては、お客さまご自身の判断でお取り組みをお願いいたします。
出典
*1 日銀 「金融市場調節方針の変更について」
*2 住宅金融支援機構 「住宅ローン利用者の実態調査結果<住宅ローン利用者調査(2026年1月調査)>(概要)」
*3 総務省統計局 「2020年基準 消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)5月分」
*4 住宅金融支援機構 「2025年度 住宅ローン貸出動向調査結果」
*5 国土交通省 「住宅ローンの常識が変わる!?」
*6 住宅金融支援機構 「住宅ローンシミュレーション」
*7 ロイター 「長期金利が2.85%に上昇、30年ぶり水準更新 国債先物はマイナス圏」
*8 住宅金融支援機構 「最新の金利情報:長期固定住宅ローン【フラット35】」
*9 一般社団法人 全国銀行協会 「Q. 住宅ローンが負担になっています。軽減策はありますか?」
*10 国税庁 「繰上返済等をした場合の償還期間」
