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いまさら聞けない「ふるさと納税」その仕組みや手続き、寄附先として人気がある自治体は?
いまさら聞けない「ふるさと納税」その仕組みや手続き、寄附先として人気がある自治体は?

いまさら聞けない「ふるさと納税」その仕組みや手続き、寄附先として人気がある自治体は?

2023/07/27に公開(最終更新:2024/03/11)
提供元:Money Canvas

年収や寄附額に応じて所得税や住民税の一部が控除されるふるさと納税。自治体によっては、控除以外にも、地元の返礼品やサービスを受けられるなど様々なメリットがあるため、近年ふるさと納税を行う人が増加しています。


実際、2022年度のふるさと納税の受入件数(全国計)は約5,184万件と、過去最多を更新しました。*1


一方、ふるさと納税をこれから始めたい方にとっては、その仕組みや確定申告の方法など、分からないことも多いかと思います。

そこで今回は、ふるさと納税を始めたい方向けに、ふるさと納税の仕組みから確定申告等の手続きの流れ、寄附先として人気のある自治体を紹介します。



ふるさと納税とは

ふるさと納税とは、自分の選んだ自治体に寄附を行った場合に、寄附額のうち2,000円を越える部分が、所得税と住民税から控除される制度のことです(図1)。*2


ふるさと納税とは図1 ふるさと納税における所得税・住民税の控除

(出所「ふるさと納税の概要」総務省)


ふるさと納税の寄附先は、自身の生まれ故郷だけが対象ではありません。お世話になった自治体や応援したい自治体など、ふるさと納税を実施している全ての自治体を寄附先として選ぶことができます。但し、自分が住んでいる(住民票登録している)自治体へふるさと納税した場合、寄附の返礼品を受け取れません。

ふるさと納税の受入額及び受入件数は、制度開始以降増加傾向にあります(図2)。*1


ふるさと納税とは

図2 ふるさと納税の受入額及び受入件数の推移(全国計)

(出所「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和4年度実施)」自治税務局市町村税課)p.2


実際、2021年度の受入額は前年度比約1.2倍の約8,302億円、受入件数は前年度比約1.3倍の約4,447万件と、過去最多を更新しました。


税金控除の仕組み

ふるさと納税の魅力の一つは、ふるさと納税として寄附した金額が、自身の年収や額に応じ所得税と住民税から控除されるという点です(図3)。*3


ふるさと納税の税金控除の仕組み

図3 税金控除の概要

(出所「税金の控除について」総務省)


例えば、所得税からは、「(ふるさと納税額-2,000円)×所得税の税率」という計算式によって算出された額が控除されます。

所得税の税率は、納税者の課税所得の増加に応じて高くなるように設定されています。例えば、2022年4月1日時点で、課税所得が330万円から694.9万円までの納税者の税率は20%となっています。*4

なお、控除の対象となるふるさと納税額には上限があります。具体的には、総所得金額等の40%が上限です。*3


次に、住民税からの控除は、「基本分」と「特例分」から成り立っています。まず、「(ふるさと納税額-2,000円)×10%」という計算式で算出された額が「基本分」です。

所得税からの控除と同様に、住民税についても、控除の対象となるふるさと納税額には上限があり、総所得金額等の30%までとなっています。

「特例分」についてですが、この「特例分」が住民税の所得割額の2割を超えない場合と超える場合によって計算式が異なります。


2割を超えない場合には、「(ふるさと納税額-2,000円)×(100%-10%-所得税の税率)」という計算式で算出された額が「特例分」になります。一方で、2割を超える場合には、「(住民税所得割額)×20%」という計算式によって算出されます。*3


寄附金の使途を選べるふるさと納税

生まれ育った自治体や応援したい自治体の特定の取り組みに対して寄附を行うことができるという点も、ふるさと納税の大きな魅力の一つです。実際、ふるさと納税を行った本人が寄附金の用途を指定できる寄附先も多くあります。*5

例えば、沖縄県那覇市では、寄附金の使い道を5つの区分から指定できます。具体的には、自治・防災や保健・福祉、教育・文化、観光、環境などの幅広い分野から、寄附の使途を選択できるようになっています。*6

ふるさと納税の流れ

ふるさと納税の流れは、ふるさと納税ワンストップ特例を申請した場合とそうでない場合で、手続きの流れが異なります。*7


ふるさと納税ワンストップ特例を申請した場合の流れ

ふるさと納税ワンストップ特例は、確定申告の不要な給与所得者等がふるさと納税を行う場合、確定申告を行わなくてもふるさと納税の寄附金控除を受けられる仕組みです(図4)。*8


ふるさと納税ワンストップ特例

図4 ふるさと納税ワンストップ特例の概要

(出所「制度改正について(2015年4月1日)」総務省)


ふるさと納税先の自治体数が5団体以内の場合に申請できる制度で、ふるさと納税先の自治体へ申請書を提出すれば、ふるさと納税を行った翌年度分の住民税が減額されます。

なお、本特例を活用すると、所得税からの控除は行われません。その代わりに、その分を含めた控除額の全額が、翌年度の住民税の減額という形で控除されます。*7

また、2022年度中にされた寄附から、一部の自治体においてマイナンバーカードを利用したワンストップ特例のオンライン申請が可能となっています。


ふるさと納税ワンストップ特例を申請しない場合の流れ

ふるさと納税ワンストップ特例を申請しない場合、手続きの流れは本特例を申請した場合と異なります(図5)。*3


ふるさと納税ワンストップ特例

図5 ふるさと納税ワンストップ特例を申請しない場合の流れ

(出所「税金の控除について」総務省)


まず、ワンストップ特例申請をせずにふるさと納税を行うと、寄附を証明する受領書が寄附先の自治体から発行されます。この受領書は確定申告に必要なので、大切に保管しておくことが重要です。*7

その後、ふるさと納税を行った翌年の3月15日までに、住所地の所轄の税務署で確定申告を行う必要があります。その際に、受領書など寄附を証明する書類の添付も求められます。

確定申告を行うと、ふるさと納税を行った年の所得税から控除されます。源泉徴収等で既に所得税を納めている場合には、他の控除の状況などを考慮した上で、還付金として戻ってきます。また、所得税に加えて、住民税も翌年度分が減額される形で控除されます。


確定申告の進め方

先述したように、ふるさと納税ワンストップ特例を申請しない方は、税務署への確定申告が必要です。

確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までに生じた所得額と所得税額を計算し、源泉徴収された税金等がある場合には、その過不足を精算する手続きのことです。*9

国税庁HPの「確定申告書等作成コーナー」で確定申告書を作成し、期限内に受領書と併せて提出することで、控除の適用を受けられます。

なお、マイナンバーカードをお持ちの方は、ウェブ上での手続きが可能なe-Taxや、マイナポータル連携による自動入力機能も可能です。詳しくは、国税庁HPをご覧ください。

ふるさと納税の返礼品とは

寄附後にもらえる返礼品も、ふるさと納税の大きな魅力の一つと言えます。自治体ごとに地域の特産品やサービスが豊富に用意されており、寄附者は返礼品を自由に選ぶことができます。

ふるさと納税の寄附先として人気の自治体は、総務省の調査資料に掲載されています。例えば、2022年度におけるふるさと納税の受入額の多い20団体は、以下のようになっています(図6)。*1


ふるさと納税の返礼品

図6 ふるさと納税受入額が多い団体(2022年度)

(出所「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和4年度実施)」自治税務局市町村税課)p.11


人気の自治体は、どのような返礼品を取り揃えているのでしょうか。今回は、北海道紋別市と宮城県都城市について見ていきましょう。


北海道紋別市における返礼品

2021年度、ふるさと納税受入額が最も多かった紋別市。紋別市は、「紋別市ふるさと納税総合サイト」を開設しており、多種多様な返礼品を掲載しています。*10

具体的には、オホーツク海産のホタテやいくらなどの海産物を取り扱っています(図7)。*11


北海道紋別市における返礼品

図7 紋別市における返礼品例

(出所「オホーツクの流氷と自然を守る寄附金。」紋別市)


また、海産物以外にも、ミルクジャムや米などの農畜産物や工芸品なども取り扱っています。*10

このように、地元の特産を活かしつつ、様々なニーズに対応できるというラインナップの豊富さも、寄附が多く集まる要因と言えるでしょう。


宮崎県都城市における返礼品

2021年度、紋別市に次いで2番目にふるさと納税受入額が多かった都城市。都城大弓(だいきゅう)と呼ばれる伝統工芸品から、肉や焼酎など様々な特産品を返礼品として取り扱っています。*12

また、市内に立地する企業と連携し、ゴルフクラブを返礼品とするなど、特色ある返礼品が数多く存在します。

さらに、都城市は、実績や企画が優れた返礼品を表彰する「都城市ふるさと納税返礼品アワード」を開催するなど、ふるさと納税促進に向けた取り組みを積極的に行っています(図8)。*13


7

図8 「都城市ふるさと納税返礼品アワード2022」最優秀賞受賞返礼品

(出所「都城市ふるさと納税返礼品アワード2022」都城市ふるさと納税振興協議会)


まとめ

税金の控除や返礼品など様々なメリットがあるふるさと納税。一方で、寄附先の財源となるため、地域の社会貢献にもつながります。

ワンストップ特例申請のおかげで、控除できる税金に違いはあるものの、手続の手間も少なくなっています。

「税金の控除を受けたい」

「返礼品を受け取りたい」

「お世話になった自治体に貢献したい」

という方は、ふるさと納税を検討してみてはいかがでしょうか。


本稿執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。


出典
*1自治税務局市町村税課「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和4年度実施)」p.2, p.11
*2総務省「ふるさと納税の概要」
*3総務省「税金の控除について」
*4国税庁「No.2260 所得税の税率」
*5総務省「よくわかる!ふるさと納税」
*6那覇市「那覇市ふるさとづくり寄附金 活用事業について」
*7総務省「ふるさと納税の流れ」
*8総務省「制度改正について(2015年4月1日)」
*9総務省「ふるさと納税をされた方へ ふるさと納税の控除の仕組み」
*10紋別市「紋別市ふるさと納税総合サイト」
*11紋別市「オホーツクの流氷と自然を守る寄附金。」
*12都城市「ふるさと納税特設サイト」
*13都城市ふるさと納税振興協議会「都城市ふるさと納税返礼品アワード2022」

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