金融商品の中でも比較的安全性の高い債券は、投資初心者からの人気も高い商品です。
そこで今回は、債券の仕組みや銘柄の選び方、メリット、債券投資の注意点について解説します。
債券とは、国や企業などが資金調達のために発行する有価証券のことです。同じ債券でも発行元によって名称が異なり、国が発行する債券を「国債」、企業が発行する債券を「社債」といいます。*1
債券には様々な種類があり、仕組みも異なります。利付債という定期的に利払いが行われる債券を例に見ていきましょう。投資家は、国や企業などの発行体に代金を支払うことで、債券を保有できます(図1)。*2
図1 債券(利付債)の仕組み
(出所「債券投資のはじめ方」三菱UFJモルガン・スタンレー証券)
債券保有後、投資家は発行体から定期的に利子を受け取ることができ、当該債券の保有期間が満期(償還)となると、元本(額面金額)が戻ってくるのが、債券の基本的な仕組みです。
後述するように、利子のない割引債と呼ばれる債券もありますが、利付債のように定期的な利払いのある債券では、投資家のリターンとなる金利について理解することが大切です。
金利は、景気の影響等によって上下します。景気が良くなると企業は設備投資を積極的に進めるため、資金需要が大きくなり金利が上がります。より高い金利を支払ってでも設備投資を行って生産量を増やしたいと思うためです(図2)。*2
図2 景気と金利の関係
(出所「債券投資のはじめ方」三菱UFJモルガン・スタンレー証券)
一方で、景気が悪くなると金利は下がります。これは、製品の需要が減退し、設備投資の需要が少なくなるためです。
金利は、債券価格にも大きな影響を与えます。具体的には、金利が上がると債券価格は下がり、金利が下がると債券価格は上がります。*3
例えば、金利1%の10年国債の保有期間中に、金利2%の10年国債が額面100円で新規に発行されると、金利2%の国債のリターンが高いため、金利1%の国債を100円で購入する人はいなくなります。その結果、金利1%の国債は途中換金する場合には、100円より安い価格で取引せざるを得なくなります。
一方で、保有期間中に金利が1%未満の10年国債しか発行されなければ、金利1%の10年国債の魅力が最も高いということになるため、需要が多くなり、債券価格が上昇します。
債券は、その発行体や利子の受け取り方などによって、様々な種類に分類できます。ここでは、2つの分類方法によって債券の種類を紹介します。
発行体で見ると、債券は主に公共債と民間債、外国債券の3つに分けられます*2
公共債は、国や地方自治体、政府関係機関・特殊法人などが発行します。
公共債の中でも代表的な債券が国の発行する国債で、流通量が多いため売買しやすく、安全性が高いといった特徴があります。
民間債は、特定の金融機関や一般企業が発行する債券です。一般企業が発行する社債の中には、株式と交換可能な転換社債型新株予約権付社債もあります。
債券には、通貨や発行場所、発行体のいずれかが外国である外国債券もあります。
外国債券には、外国国債や外国政府機関債など外国の中央政府が発行するソブリン債、世界銀行など公的な国際機関が発行する国際機関債、外国の事業会社などが発行するクレジット外債があります。
投資家にとっては、どれだけ利払い等が期待できるかというリターン面を見ることも大切です。利子の受け取り方で見ると、債券は利付債と割引債に大別されます。
利付債とは、保有期間中に定期的に利払いが発生する債券のことです。満期を迎えるまでに年2回ずつ利子を受け取るものが一般的で、国内債券の多くがこのタイプです。なお、利付債は、満期になると購入時点の額面金額で元本が戻ってきます(図3)。
図3 利付債の仕組み
(出所「債券投資のはじめ方」三菱UFJモルガン・スタンレー証券)
一方で、表面上は利子が付かない債券を割引債と言います。割引債は額面金額から一定額を差し引いた価格で購入でき、満期になると額面金額分を受け取ることができます(図4)。
図4 割引債の仕組み
(出所「債券投資のはじめ方」三菱UFJモルガン・スタンレー証券)
なお、利付債に付いている利子をクーポンと呼ぶこともあるため、クーポンがない債券として、割引債は「ゼロクーポン債」と呼ばれることもあります。*4
利付債、割引債のほか、両者の特徴を併せ持つディスカウント債と呼ばれる債券もあります。ディスカウント債は、利付債よりも低い利率となる代わりに、発行時の価格が額面金額よりも低く設定されており、満期になると額面金額分を受け取ることのできる債券です。*5
債券銘柄を選ぶ際には、事前に確認すべきポイントがいくつかあります。
債券は、満期まで保有すれば元本が戻ってくる金融商品ですが、途中で換金する場合には、金利変動などの影響を受けて債券価格も変動します。*6
また原則として、満期までの期間が長い債券ほど利回りが高くなります。そのため、債券価格と金利の関係を理解したうえで、投資目的に沿った運用期間を決めておき、債券銘柄を選択することが重要です。
運用期間のほか、収益性と安定性のどちらを重視して発行体を選ぶかも購入時のポイントとなります。*6
債券の利回りは、発行体の信用力(利払いや元本返済の安全性)によって異なります。信用力が低ければ低いほど、利回りは高くなる傾向にあります。
このような信用力を測る指標として、格付けという指標があります。格付けは債券の信用力をアルファベットなどで示したもので、様々な格付け機関によって調査・公表されています(図5)。*2
図5 格付けの表示例
(出所「債券投資のはじめ方」三菱UFJモルガン・スタンレー証券)
債券投資を行う際には、このような指標を活用して銘柄を選択することが重要です。
債券投資には、様々なメリットがあります。まず、利付債であれば定期的に利子を受け取ることができます。*7
満期前の途中換金は一般に時価で行われますが、時価が取得価格を上回っている場合には、売却益を得ることもできます。
さらに、発行体によっても異なりますが、例えば国が発行する日本国債は1万円から購入でき、手軽に始められます。*8
債券投資には様々なメリットがありますが、金融商品としてのリスクに留意しましょう。
途中換金の際に時価が取得価格を上回っている場合には売却益を得られることは先述のとおりですが、下回っている場合には元本割れとなる可能性があります。*2
また、外国債券投資の場合は、為替変動リスクに留意しましょう。
保有する外国債券の通貨が円に対して弱く(円高)になると、投資家にとって(評価)損失となります(図6)。*9図6 為替変動リスクとは
(出所「外国債券投資のリスク」三菱UFJモルガン・スタンレー証券)
さらに、債券を発行する国や地域の政治経済情勢により、元本割れや売却できないリスクが生じます。
外国債券投資は、このようなリスクも考慮して国や地域を決めることが大切です。
ここまで紹介してきたように、投資初心者にとってメリットも多い債券は、魅力的な金融商品の一つです。
債券投資の際は、価格変動リスクや為替変動リスクなど様々なリスクに留意する必要があることもわかりました。*9
リスク軽減には、投資先やタイミングを複数に分ける分散投資の方法も有効です。
国債などの国内債券で安全資金を確保しつつ、リスクのとれる資金があれば高い金利が期待できる外国債券に配分するのも良いかもしれません。*10
また、自身で選びきれない場合や、入手が難しい債券などは、債券型投資信託を活用するのも一つの方法と言えるでしょう。*1
出典
*1三菱UFJ銀行「債券型投資信託とは?メリット・デメリット、株との違いなどを解説」
*2三菱UFJモルガン・スタンレー証券「債券投資のはじめ方」
*3三菱UFJアセットマネジメント「解説:価格変動の要因」
*4三菱UFJモルガン・スタンレー証券「ゼロクーポン債(ゼロクーポンさい)」
*5国税庁「ディスカウント債の評価」
*6三菱UFJモルガン・スタンレー証券「債券銘柄の選び方」
*7三菱UFJモルガン・スタンレー証券「主な金融商品の特徴」
*8財務省「個人向け国債」
*9三菱UFJモルガン・スタンレー証券「外国債券投資のリスク」
*10三菱UFJ銀行「【初心者向け】分散投資の方法3つと大切な理由を解説!」