2024年は、国内消費者物価指数(CPI)が前年比2.5~3.0%の上昇となりました。特にエネルギー価格や食品価格の上がり幅は大きく、私たちの家計を直撃しました。
2025年に入ってもこの物価高が続くのでは、とみる向きもあり、急激なインフレに不安を抱く方も多いかもしれません。
本記事では、2024年の物価上昇の原因をわかりやすく解説するとともに、2025年の物価動向の予測と、家計管理や資産形成に役立つポイントを詳しく紹介します。
はじめに、物価高に関する各用語の意味をおさらいしておきましょう。
まず「インフレ(インフレーション)」とは、 商品やサービスの値段が上がり、お金の価値が相対的に下がることをいいます。
たとえば、100グラムあたり200円で売っていた牛肉がインフレによって値上がりし、100グラムあたり300円になったとすると、1,000円で買える牛肉の量は減ってしまいます。これが、「商品の価値が上がり、お金の価値が下がる」の指す意味です。
一般的にインフレ下では、商品やサービスを買いたいと思う人(需要)が増え、売る側が提供できる商品・サービスの量(供給)を上回ります。売る、買うといった経済活動が活発になるため、お店や企業はより多くの利益を得られます。
そこで働く従業員の給与が上がれば、さらに消費が盛んになり、市場に回るお金が増えて景気が良くなるでしょう。
ところが、原材料費の高騰など、インフレの要因が単なる需要の増加とは別にある場合、インフレは社会に対してネガティブな影響を与えかねません。
商品やサービスの価格が上がっても、「買いたい」という需要がなければモノは売れません。企業の利益が増えなければ従業員の賃金も上がらず、商品やサービスの値段だけが上昇していくため、家計は苦しくなるばかりです。
このように、景気が停滞しているにもかかわらずインフレが生じることを「スタグフレーション」と呼びます。
次にCPIとは、 家庭で購入する商品・サービスの価格動向を測るための指標で、総務省が毎月公表しています。
食料品や衣料品、電気やガスなどの公共料金、通信費などが含まれます。
コロナ禍が明けて需要が回復し、経済活動が活発になったことにともない、食品やエネルギーを中心に大幅な価格上昇が続いています。
日本銀行が2024年9月に実施した「生活意識に関するアンケート調査」でも、1年前と比べて「景況感が悪くなった」と回答した人は55%以上にのぼり、「良くなった」と回答した人はわずか6.9%でした。
現在の暮らし向きについても50%以上の人が「ゆとりがなくなってきた」と答えたほか、物価が上がったと感じている人の80%以上が「どちらかといえば困ったことだ」と感じています。*1
また、厚生労働省の「令和6年賃金引上げ等の実態に関する調査」では、9割以上の企業が「従業員の賃金を引き上げた」あるいは「引き上げる予定だ」と回答していますが、実質賃金指数は2024年11月まで4ヵ月連続マイナスで推移しており、急激な物価高に対して賃金の伸びが追いついていないのが現状です。*2
実質的な可処分所得が減り、「物価高がいつまで続くのか」という消費者の不安が高まっているのが現状です。
次に、2024年の動向を振り返りながら、物価に影響を与えた要因について解説します。
1つ目の要因は、 原材料費の高騰です。
コロナ禍からの経済回復にともなって世界的に需要が増加したこと、そしてロシアによるウクライナ侵攻や米中の貿易摩擦が、サプライチェーン(製品の原材料や部品調達、流通、販売に至る一連のプロセス)の混乱を生じさせているとみられています。
特にウクライナ侵攻はエネルギー資源や穀物の供給に影響を与えており、輸送コストの上昇に加え、穀物を原料とする食品や、食肉、乳製品などの価格高騰にもつながっています。
さらに、 人手不足によってサプライチェーンが停滞し、市場への供給が追いつかない状態も要因の一つです。
円安ドル高の傾向が続いていることも、物価高を押し上げる要因です。
アメリカは、コロナ禍への対応として導入していた実質的なゼロ金利政策を2022年3月に解除しました。
日本は2024年3月にマイナス金利政策を解除しましたが、依然として日米金利差は存在し、アメリカの金利が日本よりも高い状態が続いています。
この状態では、ドル建て資産への需要が高まるため、円を売ってドルを買う傾向に振れます。円安ドル高の状態では、 輸入品にかかるコストが増加するため、さまざまな商品・サービスの価格に転嫁されるようになりました。
コロナの収束によって、日本国内では観光・飲食・イベントなどの内需の回復が急拡大しました。
先述した円安ドル高の為替相場もインバウンド需要を後押ししており、特に小売業やホテル業界では、ニーズの高まりを受けて値上げの動きが広がっています。
続いては、2024年の各市場における値上げ動向をチェックしていきましょう。
ロシアによるウクライナ侵攻や、中東地域における紛争拡大の懸念などによって、原油価格は押し上げ傾向となりました。
政府のガソリン補助金(燃料油価格激変緩和補助金)制度が導入されているため小売価格は安定傾向でしたが、前年に比べると1リットルあたり5~10円程度高い状態で推移しています。*3
また、電気代やガス代も、天然ガスや石炭といった燃料の輸入価格上昇に連動して値上がりしました。
2024年、生鮮食品を含む総合CPIは3%前後と、異例の伸びがみられました。*4
特に、小麦や大豆など、多くの食品に用いられる輸入原材料の国際価格高騰や円安の為替相場が、値上げの要因となりました。
生鮮食品の価格高騰は天候不順による供給不足も大きく関係しているため、引き続き気候変動の影響が懸念されます。
コロナ禍明けの需要増により、飲食・宿泊施設などは軒並み値上げとなりました。
特にサービス業は深刻な人手不足が続いており、人材の囲い込みには賃上げが避けられない状況となっています。
人件費の上昇を価格に転嫁する動きが強まっていることも、消費者の負担増につながっているのです。*5
2024年は、暮らしのさまざまな場面で物価の上昇を実感した方が多かったかもしれません。
大企業を中心に賃上げの動きは広がりつつありますが、今後の物価にも注目したいところです。ここでは、2025年の物価推移の予測を紹介します。
日銀「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」でも、 おおむね2%前後の物価上昇を予測しています。
そのなかで原材料価格の高騰を起因とする値上げの動きは落ち着くものの、物価高を上回る賃上げに連動して、 ゆるやかな物価上昇が続く可能性に言及しました。
併せて、日銀は2%前後の物価上昇を持続的かつ安定的に実現するための金融政策を運営していくと発表しています。*6
物価の動向には国内要因だけでなく、海外要因や地政学リスクも大きく影響します。「地政学リスク」とは、国と国との対立や地域紛争、資源をめぐる問題など、世界の地理的・政治的な状況がもたらすリスクのことを指します。
たとえば、ある地域で紛争が起こって物流ルートが遮断されると、燃料や食品の流通が滞り、物価が急激に上昇する可能性があります。
さらに、大国同士の関係悪化により関税が引き上げられたり、輸出入が制限されたりすれば、世界規模で経済活動に影響が及びます。
こうした国際的な緊張や変動は、物価だけでなく、わたしたちの生活全般に影響を与える可能性があるのです。
現在も為替相場の変動や世界的な需給の動向、国際関係の緊張継続など、世界経済の先行きは不透明で不確実な状態が続いています。
物価の上振れ、下振れとなるリスク要因が多いため、注視していく必要があるでしょう。
実質賃金が減少していることからも、賃上げのメリット以上に物価高の影響を強く感じている家庭は多いかもしれません。
インフレ時代の今、私たちはどのように暮らしを守り、資産を形成していけばよいのでしょうか。
最後に、これからの家計管理や資産形成のポイントをご紹介します。
日々の暮らしを見直して、 無駄な買い物や消費がないかをチェックしてみましょう。
あらかじめ献立を決めて必要なものだけを購入する、無理のない範囲でエアコンの温度を調整する、 エコな家電や照明に買い替えるなど、少しの工夫でもコスト削減につながります。車を運転する場合は、急な加速や減速を控える、渋滞を避けるなどのエコドライブがポイントです。
また、変動金利の住宅ローンを利用している場合は、金利上昇のリスクに注意しましょう。
インフレが急速に進むと、実質金利がマイナスの状態になる場合があります。実質金利とは、名目金利(見かけの金利)から物価上昇率を差し引いたもので、実質的な利息の価値を表します。
実質金利がプラスの場合、銀行にお金を預けて利息を受け取るほうがいわば「得」ですが、実質金利がマイナスになっている場合、お金の価値が実質的に目減りしてしまいます。
インフレ対策としては、 預貯金の価値が下がらないよう、投資信託や株式、債券などバランスよく資産を配分して資産形成を図ることが有効です。配当利回りやインフレ耐性のある銘柄に注目する投資スタイルもあります。
政府は、経済対策としてすでに減税政策などを実施しています。日々の生活の中では、各種決済サービスなどで実施されるポイント還元策や節電プログラムなどを積極的に活用することが、足元のインフレ対策につながります。
併せて、資産運用を検討するなら NISAやiDeCoといった非課税投資制度の活用も効果的です。
物価上昇のスピードはやや落ち着きをみせていますが、2025年以降も物価は緩やかな上昇傾向が続くとみられています。
インフレ対策としては、支出そのものを見直すとともに、ポイント還元策などを利用し、物価上昇による影響をなるべく抑えることが重要です。
インフレが長引くリスクに備えるには、NISAやiDeCoをはじめとする投資制度の活用も有効です。政府の経済政策や動向に注目しながら、無理のない範囲で資産形成を始めましょう。
本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
本コラムの内容は、特定の金融商品やサービスを推奨あるいは勧誘を目的とするものではありません。
最終的な投資判断、金融商品のご選択に際しては、お客さまご自身の判断でお取り組みをお願いいたします。
出典
*1 日本銀行 「生活意識に関するアンケート調査」(第99回<2024年9月調査>)の結果」
*2 厚生労働省 「賃金引上げ等の実態に関する調査:結果の概要」
*3 一般社団法人建築物価調査会 「2024年下期における石油産業と今後の展望(一般社団法人日本エネルギー経済研究所)」
*4 総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 2024年(令和6年)11月分(2024年12月20日公表)」
*5 株式会社矢野経済研究所 「外食市場に関する調査を実施(2024年)」
*6 日本銀行 「経済・物価情勢の展望(2024年10月)」