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GX推進法改正のポイントは?ESG投資との関係を含めわかりやすく解説
GX推進法改正のポイントは?ESG投資との関係を含めわかりやすく解説

GX推進法改正のポイントは?ESG投資との関係を含めわかりやすく解説

20時間前に公開
提供元:横内美保子

GX推進法の改正によって、2026年度から日本初の法的な「排出量取引制度」が整備されます。
それにともない、一定規模以上の企業にはこの制度への参加が義務づけられ、企業の脱炭素への取り組みは企業価値に直結するテーマとなります。
また、 GX推進法改正は、環境問題を重視するESG投資と密接な関係があります。

本記事では、そもそもGXとはどのようなものかについて解説し、GX推進法やその改正のポイントを整理します。
そのうえで、その内容がESG投資とどのように結びつき、企業評価にどのような影響を与えるのかを分かりやすく解説します。


GXはなぜ必要なのか

そもそもGXとはどのようなもので、なぜ必要なのでしょうか。
経済産業省の説明をみていきましょう。


GXとは

「GX」とは「グリーントランスフォーメーション(Green Transformation)」の略です。石油や石炭などの化石燃料にできるだけ頼らず、環境にやさしいクリーンなエネルギーを使う社会へと変えていくこと、そしてその実現に向けた取り組みを指します。*1

現在、私たちが生活したり、豊かな暮らしを送ったりするために使っているエネルギーの多くは、化石燃料によってまかなわれています。
しかし、化石燃料を使うと、二酸化炭素を大量に排出してしまいます。この二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスが、地球温暖化を引き起こす大きな原因となっています。

そこで、 化石燃料に頼るのではなく、太陽光や水素など、自然環境への負荷が少ないエネルギーの利用を広げることで、二酸化炭素の排出を減らしていこうという考え方が生まれました。
さらに、こうした取り組みを新たな産業や成長のチャンスにつなげ、社会や経済の仕組み全体を変えていこうとする動きが「GX」です。


GX推進の背景

現在、世界中で国や企業、市民が協力し、地球温暖化の原因となっている温室効果ガスを減らす取り組みを進めています。

その取り組みのひとつが「カーボンニュートラル」です。
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの「排出量」と「吸収量」を差し引きゼロにする、つまり全体として増やさない状態にすることを意味します。

2025年2月の時点で、期限付きカーボンニュートラルを表明している国や地域は140以上、世界全体のGDPの約7割を占めています。*2
日本も国として、2050年までに「カーボンニュートラル」を実現することを、国際社会に約束しています。*1

この約束を実現するためには、エネルギーの使い方や産業のあり方など、社会の仕組みそのものを大きく変えていく必要があります。
さらに、こうした取り組みを新たな経済成長のチャンスと捉え、産業の競争力を高めていくことも重要です。

こうした考えのもと、 経済や社会の仕組み全体を変革していく取り組みがGXなのです。


意識変革の必要性

温室効果ガスの削減やカーボンニュートラルに向けた取り組みやそのためのルールづくりは、現在、ヨーロッパ(EU)が世界をリードしています。
ただし、まだ世界共通のルールがすべて決まっているわけではなく、どの国が主導権を握るのかをめぐって、各国が競い合っている状況です。

日本企業は、低炭素やカーボンニュートラルに関する技術力や、環境分野への投資において世界トップクラスの実力を持っており、日本国内にとどまらず、世界全体のカーボンニュートラルの実現に貢献できる大きな可能性を秘めています。
今後は日本独自のやり方に閉じこもるのではなく、日本から世界に向けて、GXに関するルールや仕組み、日本企業の優れた技術を積極的に発信・提案していくことが重要です。

また、国全体でGXを進めていくためには、企業や政府だけでなく、私たち生活者の理解と協力が欠かせません。
環境に配慮した商品を選んだり、そうした商品やサービスを提供する企業を応援したりするなど、日々の選択や行動、ライフスタイルそのものをGXに向けて変えていくことも大切です。


「GX推進法」とは

こうした状況のもと、政府は2023年、GXの実現に向けて「GX推進法」(正式名「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」)を制定しました。*3

この法律は、2022年2月にGX実行会議で取りまとめられた「GX実現に向けた基本方針」に基づいて、以下の5点を定めたものです。*4


(1)GX推進戦略の策定・実行

GXを総合的かつ計画的に推進するための戦略(脱炭素成長型経済構造移行推進戦略)を策定し、戦略を適切に見直す。


(2)GX経済移行債の発行

脱炭素へ向かう設備・技術投資を支えるため、移行債(特別な債券)を発行する。2023年以降の10年間で20兆円規模。


(3)成長志向型カーボンプライシングの導入

成長志向型カーボンプライシング構想とは、GX投資への先行的な支援とカーボンプライシングを効果的に組み合わせることで、2050年カーボンニュートラルの実現という国際公約を達成しつつ、産業競争力の強化と経済成長の両立を目指す政策です。*5

カーボンプライシングとは、簡単に言えば「CO2の排出にお金の価値をつける仕組み」です。*6
何の制度もなければ、企業が事業活動によってCO2を排出しても、直接的な費用はかかりません。そのため、企業が自発的に排出量を減らそうとする動機は生まれにくいでしょう。

しかし、地球温暖化を防ぐためには、CO2の排出削減が欠かせません。そこで、 CO2を多く出すほどコストがかかる仕組みをつくり、排出量を減らす行動を後押しするのがカーボンプライシングです。

この仕組みは、EUをはじめ多くの国で、企業の脱炭素化を進めるための有効な手段として導入されています。日本でも、2023年7月に閣議決定された「GX推進戦略」に基づき、カーボンプライシングとして「排出量取引制度」と「化石燃料賦課金」の2つを導入することが決まりました。

GX推進法では、以下のように明記しています。*4


  • 化石燃料賦課金:2028年度から、化石燃料の輸入事業者などに対して、CO2量に応じた負担金を徴収する。
  • 排出量取引制度:2033年度から、発電事業者に対してCO2の排出枠(量)を割り当て、その量に応じて「特定事業者負担金」を徴収する。

(4)GX推進機構の設立

経済産業大臣の認可のもとGX推進機構を設立し、民間企業のGX投資支援、化石燃料賦課金・特定事業者負担金の徴収、排出量取引制度の運営を行う。


(5)進捗評価と必要な見直し

実施状況を定期的に評価し、必要に応じて計画を見直す。


「GX推進法」改正の概要

2025年5月28日、「GX推進法」を改正する法律(「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律及び資源の有効な利用の促進に関する法律の一部を改正する法律」)(以下「改正法」が成立し、2025年6月4日に公布されました。*7
改正法は、一部の規定を除き、2026年4月1日に施行される予定です。
その概要をみていきましょう。


改正点

改正点は以下の4点です。*8


  • 排出量取引制度の法定化
  • 資源循環強化のための制度の新設
  • 化石燃料賦課金の徴収に係る措置の具体化
  • GX分野への財政支援の整備

以上のうち、カーボンプライシングに関連する「排出量取引制度の法定化」にフォーカスして、より詳しくみていきます。


排出量取引制度

「排出量取引制度」は企業ごとのCO2排出量に「枠」を設け、その排出枠の過不足を企業間で取引する制度です。*6
改正法により、2026年度から一定規模(10万トン)以上のCO2を排出する企業はこの制度への参加が義務化されました。*8
これに該当するのは、製鉄や石油、自動車、化学などの大手300~400社ほどになる見込みです。*6

また、前述のとおり、2033年度から、発電事業者に対してCO2の排出枠(量)を割り当て、その量に応じて「特定事業者負担金」を徴収するというGX推進法も適用されます。*4


化石燃料賦課金の徴収・特定事業者負担金

「化石燃料賦課金」は、化石燃料(石油、石炭、天然ガス等)の消費によって発生するCO2排出量に応じて賦課される制度で、2028年度から導入されることが決まっています。*6
対象となるのは石油会社など化石燃料の輸入事業者などです。

今回の改正では、「化石燃料賦課金の執行のために必要な支払期限・滞納処分・国内で使用しない燃料への減免などの技術的事項を整備する」とされています。*8


改正法とESG投資

では、改正法とESG投資とはどのような関係があるのでしょうか。


ESG投資の重要性

ESGとはEnvironment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の単語の頭文字をつなげたもので、ESG投資とは、環境や社会に配慮して事業を行っていて、適切なガバナンス(企業統治)がなされている会社に投資することを指します。*9

ESG投資を重視する流れが世界的に広がっている状況では、ESGを無視した経営をしている企業は今後の資金調達が難しくなってくるでしょう。
多額の資金を必要としている企業にとって、大口の機関投資家に投資対象として選んでもらえないのは一大事です。

そのため最近は、各企業はESGを意識した事業に取り組み、その状況を積極的に情報公開するといった動きが続いています。

下の図1は、国内企業によるグリーンボンドの発行実績です。*10
グリーンボンドとは、太陽光や風力発電など、「グリーン」とされるプロジェクトへの資金を調達するために発行される債券のことです。*11



0

図1 国内企業等によるグリーンボンドの発行実績(2025年11月14日時点)

出典)環境庁「グリーンファイナンスポータル」(2026年1月20日アクセス)


2014年から2023年までは増加傾向にありましたが、2024年から減少に転じていることがわかります。


改正法とESG投資

前述のようなGXの推進に向けた取り組みには、今後10年間に150兆円規模のファイナンスが必要です。*11

それを実現するための大きなカギが改正法です。
改正法には、「排出枠取引の円滑化と適正な価格形成のため、GX推進機構が排出枠取引市場を運営」することが明記されています。*8
また、この排出枠取引市場には、金融機関・商社など制度対象者以外の事業者も一定の基準を満たせば参加が可能となっています。

近年注目されているESG投資では、企業がどれだけ環境問題に真剣に取り組んでいるかが重視されます。
排出枠取引市場が整うことで、CO₂排出量という環境負荷が「価格」という形で表れ、企業の環境対応が経営や利益にどう影響するのかが分かりやすくなります。


その結果、 環境への配慮を進めている企業は、将来のコストやリスクが小さい企業として評価され、ESG投資の資金が集まりやすくなるでしょう。

このように改正法はESG投資に大きな影響を与えるのです。


おわりに

GX推進法の改正により、日本でも法的な排出量取引制度が本格的に導入されます。
特に一定規模以上の企業にとっては、CO₂排出量の管理や削減が、コストや収益、さらには企業価値そのものに直結する時代が始まります。

環境負荷が価格として見えるようになることで、脱炭素に積極的な企業ほどESG投資を呼び込みやすくなる構造が構築されつつあるのです。

GX推進法改正への対応状況が企業の持続可能性や中長期的な成長力を測る重要な指標となり、投資判断において今後ますます重視されていくことになるでしょう。



本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
本コラムの内容は、特定の金融商品やサービスを推奨あるいは勧誘を目的とするものではありません。
最終的な投資判断、金融商品のご選択に際しては、お客さまご自身の判断でお取り組みをお願いいたします。

出典
*1 経済産業省 METI JOURNAL ON LINE「知っておきたい経済の基礎知識~GXって何?」(2023年1月17日)
*2 経済産業省 近畿経済産業局「カーボンニュートラル関連政策について ―省エネ・J-クレジットなど―」(2025年11月5日)p.4
*3 経済産業省「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」
*4 経済産業省「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案【GX推進法】の概要」
*5 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「日本におけるカーボンプライシング制度の動向と将来価格見通し」(2025年6月20日)
*6 経済産業省 METI JOURNAL ON LINE「「排出量取引制度」って何?脱炭素の切り札をQ&Aで 基礎から学ぶ」
*7 参議院「議案状況>脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律及び資源の有効な利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案」(2025年6月4日)
*8 経済産業省「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律及び資源の有効な利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案の概要」
*9 三菱UFJ銀行「投資の新トレンド「ESG投資」とは?環境や社会に配慮する企業が成長する」
*10 環境庁「グリーンファイナンスポータル」(2026年1月20日アクセス)
*11 財務省「金融庁におけるサステナブルファイナンスの取組み GXファイナンスを中心に」(2025年2月7日)p.4, 8


横内 美保子
よこうち みほこ

博士(文学)。総合政策学部などで准教授、教授を歴任。専門は日本語学、日本語教育。高等教育の他、文部科学省、外務省、厚生労働省などのプログラムに関わり、日本語教師育成、教材開発、リカレント教育、外国人就労支援、ボランティアのサポートなどに携わる。パラレルワーカーでもあり、ウェブライター、編集者、ディレクターとして分野横断的な取り組みを続けている。

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