
2026年1月、長期金利の指標となる10年国債(新発10年国債)の利回りが一時2.350%まで上昇し、1999年2月以来、約27年ぶりの水準と報じられました。*1
しかし、「10年国債の利回りが上昇した」「長期金利が上がった」と聞いても、それが日々の暮らしや家計とどう関係するのか、すぐにはイメージしにくいかもしれません。
10年国債の利回りは、長期金利の指標として住宅ローンの固定金利などを決める際の基準のひとつになります。
そのほかにも、預金金利の動きや株式市場へも影響をおよぼすため、その仕組みを理解しておくことが重要です。
10年国債とは、日本政府が発行する国債のうち、満期(償還期限)が10年に設定されているものを指します。
国が資金を調達するために発行し、投資家は利息を受け取りながら、満期時に元本が返ってくる仕組みです。
ニュースで取り上げられる「10年国債の利回り」は、その国債を購入した場合に1年間あたりどの程度の収益が見込まれるかを示す指標です。市場価格が動けば利回りも変わります。
この10年国債の利回りは、日本の「長期金利」を示す代表的な目安とされています。
長期金利は、住宅ローンの固定金利など私たちが資金を借りる際の金利水準にも影響することがあります。このため、「10年国債の利回り」は注目されているのです。
2026年1月、10年国債の利回りが一時2.350%まで上昇し、約27年ぶりの水準に達しました。*1
そもそも日本では、1990年代後半以降、金利が低い状態が長く続いてきました。
とくに2016年以降は、日銀が「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、短期金利と長期金利を操作目標として示し、国債買入れを通じて金利形成に影響を与える枠組みを運用してきたと説明しています。*2
こうした低金利環境のもとで抑えられてきた10年国債の利回りが2%台になったことは、家計にとっても無視できない変化です。
住宅ローンの固定金利は10年国債の利回りに連動するため、利回りが上昇すれば、新たに借り入れる場合の金利も上がる可能性があります。*1
一方で、預金・債券などの利息がふえる可能性もあります。
利回りの上昇を一面的に捉えるのではなく、家計への影響を整理して考えることが大切です。
10年国債の利回りは、市場での取引を通じて日々変動します。
その動きは主に、①国債の需給のバランス、②日銀の金融政策、③物価の動向などに影響を受けます。
国債の価格は「買いたい人」と「売りたい人」のバランスによって決まります。
国債は価格が下がると利回りが上がり、価格が上がると利回りが下がるという逆相関の関係にあります。
たとえば、購入価格が100円から99円へ下がると、その分だけ利回りが高くなるという仕組みです。
需給が変化する背景は多様です。
財政状況への懸念が広がると国債が売られやすくなる傾向があります。
ほかにも、海外金利の動きや大口投資家の売買動向、国債の発行計画なども需給に影響を及ぼす要因となります。
国債市場には、日銀の金融政策も強く影響します。
日銀は2016年以降、国債を大量に買い入れることで、長期金利を低い水準に抑える政策を続けてきました。国債を多く買えば、市場での需要がふえるため、価格は上がりやすくなります。その結果、利回りは低下しやすくなります。
一方で、こうした買い入れの方針が見直されたり、政策の枠組みが変更されたりすると、利回りが動くことがあります。
長いあいだ低金利が続いてきた日本では、政策の転換があると、金利水準が見直されやすい点も特徴といえます。
物価の上昇(インフレ)も主要な要因です。
インフレが進むと貨幣価値が目減りするため、長期間固定された利息を受け取る債券には、より高い利回りが求められるようになります。
実際に、総務省統計局によれば、2025年平均の消費者物価指数の総合指数は前年比3.2%上昇しました。*3
物価上昇が広がる局面では、将来のインフレを見込んで長期金利が上昇しやすくなる点も押さえておくと良いでしょう。
10年国債利回りの上昇は、家計の借入コストや保有資産の値動きだけでなく、企業の資金調達や景気にも影響を及ぼします。
影響の度合いは、ローンの有無や選択している金利タイプ、保有資産の内容などによって異なります。
住宅ローンの固定金利は長期金利に連動しやすいため、10年国債利回りが上昇すると、固定金利の上昇要因となる可能性があります。
実際に住宅金融支援機構のデータ(2026年2月分)では、長期固定型ローンの金利が2%台で推移していることが確認できます。*4
金利差が返済額にどの程度影響するのか、試算してみると、以下のとおり月額で約15,394円の差が生じます。
【前提】借入3,000万円・35年返済
総返済額では約646万円の差となるため、金利の変化が家計に与える影響は少なくありません。
一方、変動型ローンは主に短期金利の影響を受けるため、長期金利が上がったからといってすぐに同じ幅で上昇するとは限りません。
金利タイプごとに何が連動しやすいかを分けて捉えることが重要です。
住宅ローンの金利が上がると、住宅や自動車などの大きな買い物の判断が慎重になり、消費が抑制される可能性があります。
ローン負担が増えれば自由に使えるお金が減り、支出を控える動きが出やすくなるためです。
利回り上昇は、保有資産の評価にも影響します。
債券は利回りが上昇すると市場価格が下落します。そのため、保有している債券や債券型投資信託の評価額も下がることがあります。
特に残存期間が長いほど、金利変動による価格への影響を受けやすい傾向があります。
なお、利回り上昇は「新しく発行される債券の利回りが高くなる」ことを意味するため、新しく債券を購入する際は有利に働く面もあります。
株式は一般的にはマイナス影響とされますが、株価は企業業績や為替、景気など多くの要因で動くため、単純に結びつけることはできません。
金利上昇は企業の資金調達コストを押し上げ、設備投資や事業拡大に慎重になる可能性があります。
企業の投資が減少すれば景気の回復が鈍り、結果として雇用や賃上げにも影響が及ぶかもしれません。
このように10年国債利回りの上昇は、家計や保有資産、将来の収入見通しにも広く関わるテーマといえます。
10年国債利回りが2.350%まで上昇したというニュースは、長期金利の水準が変わり得る局面に入ったことを示しています。*1
利回り上昇は、固定型住宅ローンの金利、債券価格、さらには消費や景気に波及する可能性があり、暮らしへの影響は一つではありません。
重要なのは、自身の家計にどの程度影響するのかを整理することです。
たとえば、住宅ローンが固定か変動か、保有資産に債券や債券型投資信託が含まれるか、物価上昇に対して手取りがどう増減しているか、といった点で影響は変わります。
金利上昇局面では、固定費と資産の両方に変化が出やすいため、家計全体の構造を点検するきっかけとして捉えると理解が深まるでしょう。
本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
出典
*1 テレビ朝日「長期金利 一時2.350%まで上昇 27年ぶり水準 財政悪化懸念で売り強まる」
*2 日本銀行「金融市場調節方針の変遷を教えてください。」
*3 総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)平均 (2026年1月23日公表)」
*4 住宅金融支援機構「最新の金利情報:長期固定住宅ローン【フラット35】」
