FOMCは、米国の金融政策を決定するための会合です。経済ニュースなどで「FOMC」という言葉を聞くことはあっても、その意味や重要性がよくわからない人もいるのではないでしょうか。
本コラムでは、FOMCの基本的な仕組みや株価・為替に与える影響、今後の見通しなどを解説します。
FOMC(Federal Open Market Committee)とは、FRB(米連邦準備制度理事会)が開催する米国の金融政策を決定する会合です。「連邦公開市場委員会」とも呼ばれます。*1
FRBは米国の中央銀行制度における最高意思決定機関で、日本における日本銀行(日銀)にあたる存在です。*2
そしてFOMCは、日銀が開催する金融政策決定会合にあたります。*3
FOMCはFRB理事7名と地区ごとの連邦準備銀行総裁5名の最大計12名で構成され、年に8回開催されます。
会合では、通貨供給量や政策金利(FF金利)の誘導目標などが決定されます。会合後に発表される声明文、会合の3週間後に公表される議事録は今後の金融政策の判断材料となるため、市場関係者から特に注目されています。
FOMCの開催日程は、FRBのホームページで公開されています。2024年と2025年の開催日程は以下のとおりです。
出典)FRB「Federal Open Market Committee」
FOMCで決定される政策金利の上げ下げ(利上げ・利下げ)は、株価や為替に次のような影響を与えます。
一般的には、政策金利が下がると株価は上がりやすくなり、政策金利が上がると株価は下がりやすくなります。金利と株価には、以下のような関係があるからです。
出典)なるほど!東証経済教室「会社の株価の決まり方」
そのため、FOMCで利上げや利下げが決定されると、それを受けて米国の株価が動く可能性があります。
また、日本の株価は米国の株価に連動する傾向にあります。
FOMCでの決定内容を受けて米国の株価が変動すれば、日本の株価も連動して同じように動く可能性があるでしょう。
高金利の通貨で運用したほうが多くの利益が見込めるため、お金は金利が低いほうから高いほうへ流れる性質があります。*4
米国で利上げが続くと、投資家は円よりも金利が高い米ドルで運用する傾向が強まるため、円を売ってドルを買う動きが進み、円安米ドル高となります。反対に、米国で利下げが進むと円高米ドル安が進行します。
このように、米ドル円相場は日米の金利差に影響を受ける傾向にあります。為替は株価にも影響を与えるため、FOMCだけでなく、日銀の金融政策の動向にも注目する必要があるでしょう。
米国の政策金利の推移は以下のとおりです。
出典)FRB「Economy at a Glance - Policy Rate」
ここでは、2020年以降のFOMCの決定内容について見ていきましょう。
新型コロナウイルス感染拡大を受けて、FRBは2020年3月3日に臨時のFOMCを開催し、0.5%の緊急利下げを決定しました。臨時会合での利下げは約11年半ぶりです。*5
さらに、同月15日にも臨時のFOMCを開催し、1.0%の追加利下げを決定します。*6
半月で政策金利を1.5%引き下げる大幅利下げとなり、政策金利の誘導目標は0.00%~0.25%となりました。
FRBは、2022年3月に開催したFOMCで0.25%の利上げを決定しました。2020年3月から続けてきたゼロ金利政策は解除され、政策金利の誘導目標は0.25%~0.50%となりました。*7
新型コロナからの経済正常化、ロシアによるウクライナ侵攻などを背景としたインフレ抑制のため、金融緩和から金融引き締めに転じたかたちです。*7
その後も継続的に利上げが実施され、2023年7月のFOMCでは政策金利の誘導目標が5.25%~5.50%となりました。誘導目標は、2001年以来22年ぶりの高水準です。*8
FRBは、2024年9月17日、18日に開催したFOMCで0.5%の大幅利下げを決定しました。これにより、政策金利の誘導目標は4.75%~5.00%となりました。
利下げは2020年3月以来4年半ぶりで、FRBの金融政策は大きな転換点を迎えたといえるでしょう。*9
利下げに踏み切った背景として、物価上昇が落ち着き、インフレの要因となっていた人手不足に改善の兆しが見られたことが挙げられます。
2024年11月6日、7日に開催されたFOMCでは、0.25%の追加利下げが決定されました。2会合連続の利下げで、政策金利の誘導目標は4.50%~4.75%となりました。*10
今回の利下げは、インフレ率の低下傾向が続いていることを踏まえたものです。会合後の記者会見で、FRBのパウエル議長は「全体として、われわれの目標である(インフレ率)2%に大きく近づいた」と述べ、インフレ抑制に自信を示しました。
2024年11月の会合後の記者会見で、FRBのパウエル議長は「あまり急に利下げするとインフレの改善が妨げられる。(中略)引き続き会合ごとに判断していく」と述べています。景気や物価の動向次第ではありますが、基本的には今後も利下げ傾向が続くでしょう。
一方で、2024年11月の米大統領選挙でトランプ氏が勝利したことで、トランプ氏が掲げている追加関税や減税などの政策がインフレを加速させるとの見方もあります。インフレが再加速することがあれば、FRBは高い金利水準を維持しなければならないため、今後の方向性が不透明となるでしょう。
FOMCは、米国の金融政策を決定するためにFRBが開催する会合です。景気や物価の動向を判断しながら、政策金利の上げ下げなどが決められます。
FOMCの決定内容は、株価や為替に影響を与えます。株式や投資信託で資産形成に取り組むなら、FOMCの動向を注視しておきましょう。
本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
最終的な投資判断、金融商品のご選択に際しては、お客さまご自身の判断でお取り組みをお願いいたします。
出典
*1 三菱UFJモルガン・スタンレー証券「解説!知っておきたい経済指標」
*2 Money Canvas「アメリカFRBの利上げ・利下げは日本にどう影響する?」
*3 日本銀行「米国や欧州の金融政策決定会合の枠組みを教えてください。」
*4 Money Canvas「日米金利差はなぜ注目される?為替や株価との関連性をわかりやすく解説」
*5 日本経済新聞「2020年3月3日 FRB、臨時会合で利下げ」
*6 日本経済新聞「FRBが1%緊急利下げ ゼロ金利に、量的緩和も再開」
*7 JETRO「米FRB、政策金利0.25ポイント引き上げ、2022年利上げは7回見込み、前回3回見込みから大幅増」
*8 JETRO「米FRB、政策金利を0.25ポイント引き上げ、インフレ抑制に向け金融引き締めを維持」
*9 NHK「米FRB 0.5%の利下げ決定 利下げは4年半ぶり」
*10 NHK「米FRB 0.25%利下げ インフレ率の低下傾向ふまえた判断に」