logo
Money Canvas(マネーキャンバス)
back icon
clear
back icon
【弁護士が解説】旧紙幣はいつまで使えるの?使えなくなる可能性は?
【弁護士が解説】旧紙幣はいつまで使えるの?使えなくなる可能性は?

【弁護士が解説】旧紙幣はいつまで使えるの?使えなくなる可能性は?

2025/07/03に公開
提供元:阿部由羅

旧紙幣は発行から時間が経ったり、新紙幣が発行されたりしても使えます。かなり古い旧紙幣でも使用することができます。

ただし、券売機や自動販売機などについては、機械の仕様によって旧紙幣が使えないケースがあります。また、旧紙幣を「タンス預金」にしておくことには、盗難・災害・インフレなどのリスクもあります。
さらに、「旧紙幣が使えなくなるから両替してあげる」などと言って旧紙幣を預けさせ、そのまま持ち去る詐欺も報告されているので十分ご注意ください。

本記事では、旧紙幣の取り扱いに関する法律のルールや注意点などを解説します。


紙幣(日本銀行券)に関する法律

日本で流通している紙幣の正式名称は「日本銀行券」といいます。日本銀行券は、「日本銀行法」という法律を根拠として発行されています。

日本銀行法では、日本銀行券について以下の事項を定めています。*1


『(日本銀行券の発行)
第四十六条 日本銀行は、銀行券を発行する。
2 前項の規定により日本銀行が発行する銀行券(以下「日本銀行券」という。)は、法貨として無制限に通用する。

(日本銀行券の種類及び様式)
第四十七条 日本銀行券の種類は、政令で定める。
2 日本銀行券の様式は、財務大臣が定め、これを公示する。

(日本銀行券の引換え)
第四十八条 日本銀行は、財務省令で定めるところにより、汚染、損傷その他の理由により使用することが困難となった日本銀行券を、手数料を徴収することなく、引き換えなければならない。

(日本銀行券の製造及び消却)
第四十九条 日本銀行は、日本銀行券の製造及び消却の手続を定め、財務大臣の承認を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 第七条第四項の規定は、前項の承認について準用する。』


日本銀行券の種類は「一万円、五千円、二千円及び千円」の4種類と定められています(日本銀行法47条1項、日本銀行法施行規則13条)。

日本銀行券の様式は、財務大臣が告示により定めて公示します(日本銀行法47条2項)。発行する紙幣の切り替えは、この財務大臣の告示によって行われています。

最近では、2024年7月3日に一万円札・五千円札・千円札が刷新されました。*2
偽造防止などの観点から、日本銀行券は不定期に刷新されています。


旧紙幣はいつまでも使える|ただし機械が受け付けないケースもある

日本銀行法46条2項では、日本銀行券が法貨として無制限に通用する旨を定めています。
これは、日本銀行券に「強制通用力」を認めた規定です。

日本銀行券は無制限の強制通用力を持つので、支払いのため一度に何枚でも使うことができます。
提示された側は原則として、日本銀行券の受け取りを拒否することができません。

強制通用力を持つ日本銀行券は、現在発行中の券種に限りません。
過去に発行されていて、現在は発行されていない日本銀行券にも強制通用力が認められています。したがって、旧紙幣はいつまでも使うことができます。

日本銀行のウェブサイトでは、強制通用力が認められている有効な日本銀行券の券種が掲載されています。
「現在発行されていないが有効な銀行券」の項目を見ると、旧紙幣が現在でも通用していることが分かります。*3

ただし、券売機や自動販売機などの機械の中には、旧紙幣に対応していないものがあります。
未対応の機械に旧紙幣を入れても、そのまま戻ってきてしまいます。

また、旧紙幣は現行紙幣に比べて偽造防止の技術が未熟であるため、本物かどうかを見分けにくいのが難点です。
偽札の受け取りを防ぐ観点から、旧紙幣での支払いを拒否している店舗もあるのでご注意ください。


旧紙幣をタンス預金にしておくことのリスク

旧紙幣に愛着がある、新紙幣に交換するのが面倒などの理由で、旧紙幣を「タンス預金」にしている人がいるかもしれません。

しかし、旧紙幣をタンス預金にしておくことには以下のようなリスクがあるので、銀行に預けたり投資に回したりすることをお勧めします。


盗難・災害

旧紙幣を自宅で保管していると、物理的に滅失してしまうリスクがあります。具体的には、盗難や災害によって旧紙幣が失われてしまうことがあり得るので注意が必要です。

盗難や災害による滅失のリスクを防ぐには、旧紙幣を銀行に預けるなどの対策が考えられます。


インフレ

旧紙幣でも現行紙幣でも、タンス預金にはインフレによって価値が下落するリスクが伴います。

特に最近では物価高が進行しており、明らかにインフレの傾向が見られます。今は1万円で買える物も、10年後にはおそらく1万円では買えないでしょう。
1万2000円、あるいは1万5000円になっているかもしれません。
しかし、タンス預金の1万円は、10年経っても1万円のままです。同じ1万円でも、10年後に買えるものは少なくなっている可能性が高いと考えられます。

インフレによって貨幣価値が下落するリスクを防ぐには、投資を行うことが有力な対策となります。
株式や投資信託、不動産などの資産は、インフレに合わせて価値が上昇する可能性が高いためです。

投資にはリスクが伴いますが、短期投資よりも長期投資の方が損失のリスクを抑えられます。
最近ではNISAが使いやすくなるなど、長期投資に取り組みやすい環境が整っているので、自分に合った方法を探してみましょう。


旧紙幣に関する詐欺に要注意

「旧紙幣が使えなくなるので、新紙幣への交換が必要です。預けてもらえれば代行します」
などと言って、旧紙幣をだまし取ろうとする詐欺被害が発生しています。

前述のとおり、旧紙幣はいつまでも使うことができます。したがって「旧紙幣が使えなくなる」というのは嘘です。旧紙幣をだまし取ろうとする詐欺には十分ご注意ください。


旧紙幣を新紙幣に交換する方法

旧紙幣から新紙幣への交換は、日本銀行の本店および支店の窓口で受け付けています。日本銀行で交換する場合は、手数料はかかりません。*4

また、民間の銀行でも旧紙幣から新紙幣への交換を受け付けていることがあります。ただし、交換枚数の制限が設けられている場合や、手数料がかかる場合があるので注意が必要です。

そのほかにも、一度銀行に預けてから引き出すなどの方法によって、旧紙幣を新紙幣に交換することができます。


まとめ

旧紙幣はいつまでも使うことができますが、古すぎる旧紙幣は機械が受け付けないケースがあります。
また、旧紙幣を手元に置いておくと、盗難・災害による滅失やインフレなどのリスクがあります。


長年使ってきた愛着などから旧紙幣を残しておきたい場合は、上記のようなリスクに十分注意すべきです。
心配であれば、銀行に預けることや投資に回すことを検討しましょう。



本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
最終的な投資判断、金融商品のご選択に際しては、お客さまご自身の判断でお取り組みをお願いいたします。

出典
*1 e-GOV法令検索「日本銀行法」
*2 国立印刷局 新しい日本銀行券特設サイト「2024年7月3日 お札が変わりました」
*3 日本銀行「その他有効な銀行券・貨幣」
*4 日本銀行「本店・支店・国内事務所」


阿部 由羅
あべ ゆら

ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。

関連コラム
もっとみる >
scroll-back-btn