logo
Money Canvas(マネーキャンバス)
back icon
clear
back icon
「フェアトレード」とは コーヒーを例に理解を深め、投資を通じて問題解決に取り組もう!
「フェアトレード」とは コーヒーを例に理解を深め、投資を通じて問題解決に取り組もう!

「フェアトレード」とは コーヒーを例に理解を深め、投資を通じて問題解決に取り組もう!

2024/08/29に公開
提供元:清水沙矢香

わたしたちが普段口にしているコーヒーやチョコレートなどは、その多くが途上国で生産されていることを、みなさんご存じのことでしょう。

一方でこれらの農産物を生産する途上国は、労働者が極端な低賃金しか得られていなかったり、児童労働が広がっていたりするという現状があり、先進国と途上国との格差をますます広げる要因になっていると言えます。
また、温暖化をはじめとした環境問題も世界的に大きな課題です。

わたしたちが企業の株式などに投資するとき、その選び方はさまざまですが、これらの社会問題を解決する事業へ投資をするという選択肢もあります。
どのようなものなのか見ていきましょう。


コーヒー1杯から農家が得る収入は?

2008年に、コーヒー農家の困窮について描いた「おいしいコーヒーの真実」というドキュメンタリー映画が公開されました。

私たちがお店でコーヒーを飲むまでには、豆が生産され、加工され、お店に到着し、お店で淹れてもらう、という形でそれぞれの人々の働きがあり、その度に経費や賃金が発生します。

しかし、その取り分は非常に偏ったものになっています。


4

コーヒー1杯で農家が得られる利益

(出所:「フェアトレードで世界を変えよう NGO・企業・市民がつくる、貧困のない世界」外務省NGO研究会)


わたしたちが330円を支払っても、そこから途上国の農家が得られる金額は3円から9円と全体の1~3%でしかなく、利益のほとんどは小売業者や輸入業者のものになっているという状態です。

また、農園の作りすぎは、水不足につながるなど生産地の環境にも影響を及ぼします。

例えば綿花は栽培に大量の水を必要とします。ジーンズ1本を作るのには1キログラムの綿を使いますが、1キログラムの綿を生産するには1万リットル以上の水が必要とされています*1。
これは1人の人間が10年間に飲む水の量に匹敵します。

綿はインドや中央アジアなどもともと水資源に乏しい、水が貴重な国や地域で盛んに栽培されており、過剰な水の利用が行なわれると、川や湖沼の水位が下がり、地域の野生生物や人の生活に被害を及ぼすことになります*2。

途上国だけが大きな負担を強いられるこれらの格差を是正するため、途上国の生産者に適切な賃金を支払い、生産地の環境にも配慮した取引をする、というのが「フェアトレード」の考え方です。「公正な貿易」という意味です。


フェアトレードのはじまりと貧困の現実

フェアトレードのはじまりは第二次世界大戦後の1946年にあるとされています*3。

アメリカの救援開発NGOでボランティアをしていた女性がプエルトリコの貧しい女性たちを助けるため、刺繍製品を持ち帰り、バザーを開いて売りはじめました。
その後欧州などにも同じような活動が広がっていきます。

しかし1970年代頃からグローバリゼーションや価格競争が加速する中で、先進国と途上国の不公平な関係性は強まっていきます*4。
途上国の生産者は優位な立場にある先進国の企業から「買いたたき」に遭う、という構図ができてしまったのです。

そこから途上国の貧困に対する世界的な取り組みは続いているものの、新型コロナウイルスのパンデミックにより「極度の貧困状態(=1日1.9ドル未満で生活する人)」の割合は再び増えています。
国連は、2030年には世界の貧困率が7%(約6億人)になると予想しており、SGDsが目的とする貧困撲滅の目標は達成できない、との見解を示しています*5。

また、貧しい家計を支えるための児童労働も深刻化しています。

ILO(=世界労働機関)が2021年に発表した報告書によれば、児童労働に就労する子どもの数は世界全体で1億6,000万人と推計されています*6。
とくに5歳から11歳の幼い児童労働者が大幅に増え、全体の半分強を占めるまでになっているともしています。
また、全体の7割にあたる1億1,200万人が農林漁業に従事しているとみられています。


わたしたちがフェアトレードを支援する方法は?

こうした中で、フェアトレードの取り組みを進めている企業も多くあります。わかりやすい事例としては、商品に「フェアトレード」を明記し、認証ラベルを示し販売しているケースです。

フェアトレードマークには2種類あります。ひとつは「国際フェアトレード認証ラベル」というもので、原料が生産されてから、輸出入、加工、製造の全ての工程で国際フェアトレードラベル機構が定めた基準が守られていることを証明します。


5

国際フェアトレード認証ラベル

(出所:「認証ラベルについて」フェアトレード・ジャパン)


もうひとつは、「国際フェアトレード原料調達ラベル」というものです。
こちらは、さまざまな原料を使う商品の場合に、マークのタブに記載されている原料はフェアトレードとして調達されている、ということを示しています。


6

国際フェアトレード原料調達ラベル

(出所:「認証ラベルについて」フェアトレード・ジャパン)


消費の現場でわたしたちがこれらの製品を積極的に購入することがフェアトレードへの支援につながりますが、それだけではありません。

資産運用の場面で、フェアトレードや各種社会問題の解決を手助けする方法もあるのです。


「SDGs債」とは?

資産形成としてさまざまな金融商品が販売されていますが、その中に「SDGs債」と呼ばれるものがあります。

企業や自治体などは資金調達にあたって「債券」を発行しますが、SDGs債は通常の債券とは異なります。

SDGs債の場合、ひとつには集めたお金の使い道が環境問題や社会問題の解決につながる事業に特定されているというタイプのものがあります。
あるいはSDGsに関連した明確な事業戦略、問題解決に対する貢献度合いの指標を明確にし、それを実現するための債券といった一定の原則のもとで発行されています。

企業や自治体はさまざまな活動や事業をしていますが、その中でもSDGsに関する部分に期待して投資できる、という形です。

SDGs債に対する注目度は近年高まっており、日本国内での発行額、発行件数は大幅な伸びを示しています。


7

SDGs債の発行額および発行件数(2024年は3月末時点の数字)

(出所:「SDGs債の発行状況」日本証券業協会)


投資先をどのような基準で選んだら良いかわからない、という場合、SDGsという観点から金融商品を探すというのもひとつの考え方でしょう。


SDGs債の種類

SDGs債には、おもに次のような種類があります*7。

・グリーンボンド:企業などが環境問題の解決のためのプロジェクトに必要な資金を調達するために発行する債券

・ソーシャルボンド:企業などが衛生・福祉・教育など社会課題の解決のためのプロジェクトに必要な資金を調達するために発行する債券

・サステナビリティボンド:グリーン、ソーシャル双方のプロジェクトに必要な資金を調達するために発行する債券

・サステナビリティ・リンク・ボンド:お金の使い道は限られてはいないが、企業などが設定したサステナビリティに関する指数を達成するために必要なお金を調達するために発行する債券

・トランジションボンド:企業などが温室効果ガス排出削減に移行する(トランジション)長期戦略の実行に使うお金を調達するために発行する債券

SDGs債の最大の特徴は、「何の事業に使われるか」が明確なものがあるという所です。

実際に事業内容を確認して投資できるといった仕組みを利用して、社会問題解決に貢献できるSDGs債も投資先のひとつの候補に入れてみてはいかがでしょうか。



本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
最終的な投資判断、金融商品のご選択に際しては、お客様自身の判断でお取り組みをお願いいたします。

*1「UN Forum says Fashion Industry an Environmental Emergency」国連欧州経済委員会/WWD
*2「コットンって環境に悪い?サステナブルファッション視点でのコットンの生産と利用」WWFジャパン
*3「フェアトレードの歩み」国民生活センター
*4「フェアトレードとは?意味や必要性、現状、気になる課題を一から解説」朝日新聞SDGs ACTION
*5「End poverty in all its forms everywhere」United Nations
*6「世界の児童労働者数1億6,000万人に、この20年で初の増加」ILO
*7「SDGsに貢献する金融商品について」日本証券業協会


清水 沙矢香

2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。
社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。
取材経験や各種統計の分析を元に多数メディアに寄稿中。

関連コラム
もっとみる >
Loading...
scroll-back-btn