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自動車整備士が不足している原因は?影響や解消策も解説
自動車整備士が不足している原因は?影響や解消策も解説

自動車整備士が不足している原因は?影響や解消策も解説

2026/01/01に公開
提供元:Money Canvas

自動車整備士の求人は増えているのに、なかなか人が集まらない——。
ディーラーや整備工場の現場では、そんな声がここ数年とくに強くなっています。

一方で、日本の自動車保有台数は約8,300万台と高い水準で推移しており、車検・点検・修理のニーズは底堅いままです。*1 *2

クルマ社会を支えるインフラともいえる自動車整備士の人手不足は、今後のカーライフや地域経済、ひいては関連企業のビジネスにも大きな影響を与えうるテーマです。

この記事では、自動車整備士の人手不足が深刻化している背景や、実際に起きている影響、今後の見通しまで、押さえておきたいポイントを整理して解説します。


自動車整備士の人手不足が深刻化している

現在の自動車整備業界は、 「車は増えているのに、それを診る自動車整備士は十分に増えていない」という深刻な需給ギャップに直面しています。
現場では「車検の予約が取りづらい」「一人あたりの作業負荷が重い」といった声が多く聞かれますが、その背景には明確な数字の裏付けがあります。

まず、整備対象となる「車の数」は8,305万台(2025年8月時点)と、依然として高い水準にあります。*2

それに対し、現場で整備作業を担う「整備要員」は402,025人にとどまり、そのうち整備士資格を持つ人は333,047人しかいません。
整備関係従業員数(562,869人)自体はここ数年で微増傾向にはあるものの、膨大な車両数を支えるには十分とはいえず、慢性的な人手不足が続いているのが現状です。*1


自動車整備士の人手不足になっている理由

人手不足の理由は、大きく分けると「入口」と「出口」の2つの問題があります。

入口では、自動車整備士をめざす若年層が減少し、出口では、せっかく資格を取っても途中で業界を離れてしまう人が少なくありません。詳しく解説していきます。


自動車整備士をめざす人が減っている

ここ十数年、 自動車整備士養成校の入学者数は減少傾向にあると言われています。*3

背景には、以下のようないくつかの要因が重なっています。

①賃金水準が相対的に高くないイメージ

JASPA調査によると、整備要員の平均年収は約426万円で、ディーラー勤務に限ると約509万円となっています。*1
近年は人手不足を背景に賃金改善の動きもみられますが、「きつい仕事のわりに給与水準が高くない」というイメージが、進路選択の段階でマイナスに働いている面があるようです。

②いわゆる「3K」のイメージが根強い

「きつい・汚い・危険」という旧来のイメージがいまだに残っており、オフィスワーク志向の若者から敬遠されがちです。
実際には工具や設備の進化により作業環境は改善していますが、認知が追いついていない部分もあります。

③資格取得に時間と費用がかかる

国家資格である自動車整備士(2級・3級など)を取得するには、指定の養成施設で学ぶか、実務経験を積んだうえで試験に合格する必要があります。
学費負担や勉強時間の確保が必要なことから、「まずは手軽に働き始めたい」という若年層のニーズと噛み合いにくい面があります。

④クルマ離れと価値観の変化

若年層のクルマ離れも影響しています。
そもそも自動車に強い関心を持つ人の母数が減っているため、「クルマが好きだから整備士になりたい」という従来型の動機だけでは、十分な志望者を確保しにくくなっているのです。

これらの結果、ハローワークや求人サイトで「自動車整備 求人」を検索すると、常に多くの募集が出ている一方で、応募者がなかなか集まらない状態が続いています。

採用側は「未経験歓迎」「資格取得支援あり」など条件を工夫していますが、他業種との人材獲得競争は厳しさを増しています。


自動車整備士の離職率が高い

せっかく整備士になっても、 現場に定着せずに辞めてしまう人が多いことも深刻な課題です。
その背景には、大きく分けて「労働環境の厳しさ」と「将来像の描きにくさ」という2つの要因があります。

①過酷な労働環境と身体的負担

整備の現場は、重いタイヤや部品を扱う体力勝負の側面があります。加えて、空調設備が整っていない工場も多く、夏は暑く冬は寒いという環境負担が無視できません。
また、車検シーズンなどの繁忙期には残業が常態化しやすく、「土日に休みが取りにくい」といった事情から、結婚や子育てなどのライフステージの変化に合わせて他業種へ転職する人が後を絶ちません。

②高齢化とキャリアパスの不安

JASPAの調査によれば、整備要員の平均年齢は47.4歳と高齢化が進んでいます。一方で、女性整備士は全体の3.2%(10,567人)にとどまっており、多様な人材を受け入れる体制づくりも課題です。*1

さらに、現場で経験を積んだ後のキャリアパスが見えにくいことも、離職率を高める要因になっています。
工場長などの管理職ポストには限りがあるため、「長く働き続けても給与が上がりにくい」という将来への不安が、30代〜40代の中堅層が現場を離れる引き金となっているのです。


自動車整備士の人手不足を解消するための対策

こうした状況を受けて、 業界全体でさまざまな対策が模索されています。

ここでは、代表的な取り組みを紹介します。


DX(デジタル化)による作業効率化

故障診断機やタブレットを活用した点検結果の入力、整備履歴の一元管理など、デジタル技術を取り入れることで、事務作業や情報共有の負担を減らす動きが広がっています。

車両側でも、コネクテッドカーや遠隔診断機能の普及により、「事前に故障傾向を把握して部品を手配しておく」といった効率的な整備が可能になりつつあります。


賃金や労働環境の改善

人材獲得競争が激しくなる中で、基本給の引き上げや賞与の増額、残業時間の削減、有給休暇の取得促進など、待遇改善に取り組む企業がふえています。

JASPA調査でも、整備要員の平均年収は前年度比2.0%増の4,257.9千円と、じわじわと改善が進んでいます。*1


資格取得やスキルアップの支援

企業が受験費用を負担したり、勤務時間内に講習を受けられるようにするなど、整備士資格の取得・上位資格へのステップアップを後押しする制度も広がっています。

EVや先進運転支援システム(ADAS)に対応した「特定整備」に関する研修など、新技術へのキャッチアップを支援する仕組みも重要になっています。


女性・シニアの活躍推進

体力をあまり必要としない軽作業や、受付・サービスアドバイザーなどのポジションを組み合わせることで、女性やシニアが働きやすい環境づくりを進める企業もふえています。

女性整備要員は約1万9千人と、少しずつではありますが増加傾向がみられます。*1


職場ブランディングの強化

SNSでの情報発信やインターンシップの受け入れ、工場見学会の開催など、「かっこいい整備士像」や「最新技術に触れられる職場」であることをアピールし、若年層の興味を喚起する取り組みも行われています。


自動車整備士の人手不足がもたらす影響

自動車整備士の人手不足は、現場だけの問題ではありません。
車利用者や、地域経済に与える影響について見ていきましょう。


整備サービスの遅延・予約の取りづらさ

車検や法定点検の予約が希望日に取りづらくなったり、故障時の修理完了までに時間がかかるケースがふえます。

繁忙期には「代車が足りない」といった問題も発生しやすくなるでしょう。


整備品質の低下リスク

一人あたりの担当台数がふえれば、作業時間を確保しにくくなり、ヒューマンエラーがふえるリスクも高まります。

ベテラン整備士が引退しても、十分な人数の後継者が育っていなければ、難易度の高い故障診断や電子制御系のトラブル対応が滞る可能性があります。


企業経営への影響・廃業リスク

人手不足が深刻な場合、「仕事はあるのに人が足りず受けきれない」という状況になり、売上機会の損失につながります。

帝国データバンクの調査では、2024年度の自動車整備業の倒産・休廃業・解散件数は合計445件と過去最多を更新しており、その背景要因の一つとして人手不足が指摘されています。*4


利用者負担の増加

人件費や採用コストの上昇は、最終的に工賃(技術料)の引き上げという形で利用者にも跳ね返ります。

JASPA調査でも、整備要員1人あたりの年間整備売上高は前年度比5.2%増と、価格・単価の押し上げ傾向がうかがえます。*1


自動車整備士の人手不足は今後解消される?

短期的には 「すぐに状況が好転する」可能性は低いと見られています。

JASPA調査によると、整備要員の平均年齢は47.4歳です。
これは、今後10〜20年の間に多くのベテラン整備士が定年を迎え、現場を去っていくことを意味します。*1

少子高齢化の現状も踏まえると、単なる「人数合わせ」での解決は困難でしょう。

しかし中長期的には、技術革新によって「整備のあり方」そのものが大きく変わる可能性があります。

①EV・電動車の普及による変化

EV(電気自動車)はエンジンや変速機を持たないため、オイル交換などの従来型メンテナンスは不要になります。
作業の手間は減りますが、一方で高電圧バッテリーや電子制御に関する高度な知識が不可欠となり、「整備士に求められる質」が変化します。

②AI診断・DXによる効率化

車両の自己診断機能(OBD)やAI故障予測の進化により、「壊れてから直す」から「壊れる前に予知する」スタイルへ移行します。
単純作業が自動化される分、整備士はより複雑な判断や高度なスキルに集中することになります。

③働き方の多様化

DXによる省人化や負担軽減が進めば、女性やシニア層も働きやすい環境が整っていきます。
ただし、こうした設備投資が全国の中小工場に行き渡るまでには時間が必要であり、当面は人手不足感が続くと予想されます。

状況を整理すると、業界は「量(人数)の不足は続きつつ、質(スキル)の重要性が増す」という転換期にあります。

この環境変化のなかで、以下の分野は中長期的な成長テーマとして注目に値します。


  • 整備現場向けのDXツール・クラウド管理システム
  • EV・ADAS(先進運転支援システム)対応の教育・資格ビジネス
  • 整備人材のマッチングやアウトソーシングサービス

人手不足という課題は、裏を返せば、それを解決するテクノロジーやサービスへの巨大な需要が存在することを意味するのです。


自動車整備士の人手不足時代とどう向き合うか

自動車整備士の人手不足は、今後もしばらく続く見通しです。

しかし、この状況を単にネガティブな「リスク」として恐れる必要はありません。視点を変えれば、私たちの行動を変えるきっかけにもなります。

ドライバーとしては、愛車という資産の価値を維持するために、車検や点検を早めに予約し、突発的なトラブルや出費を防ぐことがこれまで以上に重要になります。

一方で、投資やキャリアの視点で見れば、この「不足」こそがチャンスです。
現場の効率化を助けるDXツールや、EVなどの新技術に対応できる人材・サービスの価値は、今後ますます高まっていくでしょう。

「課題がある場所には、新しい市場が生まれる」という原則は、この業界でも例外ではありません。
自動車整備士の人手不足というニュースを、単なる業界の話題として聞き流すのではなく、ご自身の生活や資産形成に関わる重要なシグナルとして捉え、賢く付き合っていきましょう。



本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
本コラムの内容は、特定の金融商品やサービスを推奨あるいは勧誘を目的とするものではありません。
最終的な投資判断、金融商品のご選択に際しては、お客さまご自身の判断でお取り組みをお願いいたします。

出典
*1 日本自動車整備振興会連合会「令和6年度 自動車特定整備事業者の実態調査結果の概要」
*2 一般財団法人 自動車検査登録情報協会「自動車保有台数」
*3 内閣府「規制改革実施計画 関連資料集(自動車整備人材の確保)」
*4 帝国データバンク「「自動車整備業者」の倒産・休廃業解散動向(2024年度)」

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