特定3疾病とは、がん(悪性新生物)、心疾患、脳血管疾患のことをいいます。これらの3疾病は日本人の死因の約50%を占めている、とても身近な病気です。特定3疾病に無駄なく備えるために、それぞれの病気や治療の特徴を解説し、必要な保障を選ぶポイントをお伝えします。
特定3疾病とは、がん(悪性新生物)、心疾患、脳血管疾患を言います。厚生労働省が発表した2021年の統計によると、日本人の死因の1位ががん(悪性新生物)で26.5%、2位が心疾患で14.9%、3位が老衰で10.6%、4位が脳血管疾患で7.3%となっています。3位の老衰を除いたこれらの特定3疾病で亡くなった人の割合は、全体の48.7%で全体の約半数となっています。
つまり、日本人の約半分の人が、特定3疾病で亡くなっています。
出典:厚生労働省「令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況」p10
がん(悪性新生物)は日本人の死因1位の病気です。正常な細胞の遺伝子に傷がついてできる異常な細胞のかたまりのうち、悪性のものを「がん(悪性新生物)」といい、無秩序に増え続けながら周囲に染み出て広がり(浸潤)、身体のあちこちに飛び火して転移します。一方、良性腫瘍は、細胞のかたまりではありますが、浸潤や転移をせずにゆっくりと増えていきます。
がん(悪性新生物)は、発生する臓器などにより、名前が付けられています。発生した場所や進行具合によって、治療法や治療の難易度が異なります。図表2は、がんの罹患率の順位と、死亡率の順位を示しています。罹患率の高い場所が必ずしも死亡率が高いわけではないことが分かります。
出典:国立研究開発法人がん研究センター 「最新がん統計」
心疾患とは、心臓の病気の総称です。がんに次いで日本人の死亡率2位の疾病となっています。心疾患は、心臓の働きに何かしらの異常が起こり、血液循環が上手くいかなくなることでおこります。
心疾患のおもな種類には、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、不整脈、心不全などがあります。
動脈硬化や血栓などにより心臓に血液を送る冠動脈の血流が悪くなり、心筋に十分な血液が届かず酸素不足になることで起こります。血流が悪くなって心筋に必要な酸素が不足する病気を「狭心症」、血管内に血栓ができて、冠動脈が完全につまって心筋が壊死する病気を「心筋梗塞」と言います。どちらも胸の痛みなどの発作が起きますが、心筋梗塞では、激しい痛みが長時間続きます。
不整脈は、脈が遅くなったり、速くなったり、脈が飛んだりと、脈が一定ではなくなる状態を言います。健康な人でも過労やストレスが原因で不整脈の症状が一時的に表れることがありますが、基礎心疾患がある人や、動悸や胸の不快感、息切れやめまい、失神などの強い自覚症状がある場合には注意が必要です。
心不全は、心臓のポンプ機能が低下して、全身に血液を送れなくなる状態をいいます。急性心不全では呼吸困難などの激しい症状が急激に起こりますが、慢性心不全の場合には進行がゆっくりで、少しずつ身体機能が低下していきます。
脳血管疾患(脳卒中)は、脳の血管に関する病気の総称です。おもな種類には、脳の血管が詰まる「脳梗塞」、脳の血管が破れる「脳出血」や、脳の血管の一部に動脈瘤ができて破裂する「くも膜下出血」があります。
おもな症状には、このようなものがあります。
脳血管疾患(脳卒中)の症状は、ある日突然現れることが多いのですが、前触れとして、頭痛、めまい、舌のもつれ、手足のしびれなどが起こることもあります。これらのサインに気づいたら、早めに受診することをお勧めします。
がん(悪性新生物)、心疾患、脳血管疾患の特定3疾病の治療には、このような共通点があります。
厚生労働省の「令和2年(2022)患者調査」によると、調査対象となったすべての疾病の平均在院日数が32.3日だったのに対して、脳血管疾患では77.4日でした。これは、脳血管疾患の場合には、手足のまひや言語障害などが残りやすく、投薬や注射による薬物療法、手術などの治療が終わった後も、身体機能を回復するためのリハビリテーションが続くためであり、退院してからも必要に応じてしばらくリハビリテーションは継続します。
がん(悪性新生物)の平均在院日数は19.6日ですが、退院後も通院しながら抗がん剤治療を継続することが多くなっています。また、心疾患の平均在院日数は24.6日ですが、退院後も心臓の機能を回復して日常生活を送れるようになるまでには、リハビリテーションにしばらく時間を要します。
通常の医療保険に加入していれば、特定3疾病でも入院給付金や手術給付金の支払いを受けられます。ただし、治療期間が長く、退院後もリハビリテーションや通院治療が必要な特定3疾病の場合、医療費が高額になる可能性があります。
厚生労働省の調査によると、調査対象のすべての疾病の平均的な1件当たりの入院費は54万8,773円、入院外では1万2,452円でした。それに対して、特定3疾病の1件当たりの医療費は、以下の通りです。
出典:厚生労働省「医療給付実態調査/報告書 令和2年度」より、協会けんぽ(一般)の金額を抜粋しています。
一方で、健康保険の適用外となる費用もあります。差額ベッド代は、入院中に個室や少人数部屋を利用した場合にかかる費用で、保険の適用外となります。また、厚生労働大臣が指定した先進医療を受けた場合には、その技術料については保険適用外となるため、個人で全額負担することになります。例えば、がん(悪性新生物)の先進医療のひとつである陽子線治療の技術料は1件当たり264万9,978円、同じく重粒子線治療の技術料は1件当たり318万6,609円となります。[注1]
[注1]厚生労働省「先進医療A 令和3年6月30日時点における先進医療にかかる費用」より筆者が1件当たりの技術料を計算
特定3疾病に対する備えを手厚くしたいと思ったら、幅広い病気やケガによる入院や手術に備えられる「医療保険」に加えて、特定3疾病に手厚く備えられる「特定3疾病保険」の備えも検討しましょう。選ぶポイントについて解説します。
保険の基礎知識オススメ記事3選はこちらで紹介しております。
がん(悪性新生物)、心疾患、脳血管疾患のいずれかの病気で保険会社が定める所定の状態になった場合に、一時金が支給されます。
選び方のポイントの一つに、がん(悪性新生物)と診断されたときに一時金が支給される「がん一時給付金(がん診断給付金)」があります。このうち、がんが上皮内に留まって転移の可能性がほとんどない「上皮内新生物」に対してもがん(悪性新生物)と同額を支払う保険会社がある一方で、支払額を減額する保険会社や、支払い対象外とする保険会社もあります。どういった条件で一時金が支給されるのか、検討の際には確認しておきましょう。
特定3疾病のいずれかになった場合の、一時金の受け取り回数についても注目してみましょう。同一の診断一時金を一生涯で何度でも受け取れる保険会社がある一方で、一生涯で1回のみとしている保険会社もあります。1年あたりの支払い回数と、一生涯での支払い回数の両方を確認しましょう。
心疾患、脳血管疾患のいずれかで一時給付金の支払いを受けるためには、病名が診断されるだけではなく、保険会社が定める所定の症状が一定日数続くことが支払い要件となっていることが多くなっています。この日数や所定の要件は保険会社ごとに異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。
一方、がん(悪性新生物)の場合には、すぐにがん一時給付金を請求できます。そのため、多くの特定3疾病保険やがん保険では、がんについては加入してから90日(保険会社によっては日数が異なる場合もある)の免責期間が設けられています。この免責期間中にがんと診断されても、がん一時給付金の支払い対象外となるので注意しましょう。
特定3疾病とは、がん(悪性新生物)、心疾患、脳血管疾患のことを言います。この3疾病で日本人の死因の5割を占めていることから、誰にでもなる可能性のある病気と思っていいでしょう。特定3疾病は、退院してからもしばらく通院やリハビリが続くことが多く、医療費も高額になりやすい傾向があります。特定3疾病で所定の状態になったときに一時金が受け取れる保険を備えておくと、手厚く備えられます。なお、類似の保険でも保険会社ごとに保障は異なります。保険料だけでなく、一時金の支払い回数や、上皮内新生物への支払いなどについてもあらかじめ確認しておきましょう。