2024年スタートの新しいNISAについて、その制度やメリットを耳にする機会が増えてきました。新しいNISAの話題を機に、お金の知識や資産運用に興味を持った人も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、マネーリテラシーを高めたい人に最適なファイナンシャルプランナー資格について解説します。
人生100年時代といわれるように、日本の平均寿命は伸び続けています。1990年に男性75.92歳、女性81.9歳だった平均寿命ですが、2040年には男性83.27歳、女性89.63歳と、50年で約8年延びると推計*1されています。
60歳で定年退職を迎えたとして、女性であれば定年から約30年のリタイア生活があります。長く生きることを想定した資産計画の重要性が増してきているのです。
さらに2022年4月からの高校学習指導要領改訂*2では、金融や経済に関する内容の拡充が行われました。今や高校生も家計管理や社会保険制度、資産形成を学校で学ぶ時代になりました。*3
平均寿命や学校教育の変化からも、マネーリテラシーは生活や人生設計の中で欠かせない、重要なスキルであることがよくわかるのではないでしょうか。ではここから、具体的なマネーリテラシーの身に着け方について考えてみましょう。
ファイナンシャルプランナー(以下、FP)と聞くと、家計や資産の管理計画をする人というイメージを持つのではないでしょうか。仕事として家計や資産の相談に乗るFPですが、相談に対応するための幅広い知識は、FPを仕事としない人にも大いに役立つものです。
FPの知識を体系的に身に着けるためにおすすめなのが「FP3級技能検定」です。FPの資格では最も入門レベルの検定であるものの、人生において関わる可能性の高いお金の知識を網羅的に身に着けられる国家検定です。
検定を実施している機関はきんざい(金融財政事情研究会)と日本FP協会です。いずれも現在はFP3級の試験をCBT方式(コンピュータで試験を受ける方式)としており、受験できる回数が増えて挑戦しやすくなっています。*4
FP3級技能検定の学習範囲はどのような内容で、どのように日々の生活に役立つのでしょうか。日本FP協会が公表している試験範囲*5をもとに分野別に確認してみましょう。
何歳でどのようなライフイベントを予定していて、それにはどの程度のお金がかかるのか、また、何歳の時点でどれくらいの資産を持っているか、シミュレーションしたことはあるでしょうか。
FP3級ではまず、そのシミュレーションから学びます。今のペースで支出を続けると、10年後、20年後に資産がどのようになっているのか具体的に把握でき、生活費の見直しや余剰資金の活用を検討できるようになります。
また、健康保険や雇用保険、年金といった社会保険制度の全体像も学習します。
給与明細に記載されている社会保険料ですが、どのように使われているのか、自分の生活にどう役立っているのか考えたことはあるでしょうか。社会保険制度を学ぶことで、もしものときや将来的に受けられる給付がわかり、すぐに使える手元資金の必要額や民間医療保険を検討する手がかりにもなります。
リスク管理の単元では、生命保険や損害保険について、必要な金額の計算やその種類、特徴を勉強します。
生命保険を検討するとき、そもそもどれくらいの保障に加入するべきなのか、定期保険と終身保険のどちらが良いか、といった悩みを持ったことはないでしょうか。保険の種類だけでなく、保険加入によって税金が減る仕組みなども学ぶため、総合的に考えて自分に合った商品選択ができるようになります。
景気動向指数や日銀短観をニュースで耳にする機会はあるものの、自らの資産運用に活かすのは難しいものです。
FP3級の試験範囲では、このようなマーケット指標やマーケットの変動に影響する金利や為替、投資信託や債券といった金融商品の基礎知識を身に着けます。そして、それらの金融商品にかかる税金についても学びます。
新しいNISA制度の開始を受け、預貯金ではなく、投資信託や株式の購入を検討している人もいるのではないでしょうか。
金融資産運用の単元では、新しいNISAの制度や購入する商品の考え方を基本から体系的に学べます。それによって、NISA制度のメリットがよくわかり、さらに商品のリスクの違いや値動きの傾向を理解できるため、自分に適した商品選びができるようになります。
これから資産運用を始めたい人は、必要な知識が凝縮されたこの単元から勉強してみるとよいでしょう。実生活ですぐに使える知識であるため、学習のモチベーションにも繋がります。
会社員であれば多くの場合、毎年11月頃に生命保険料控除や配偶者控除のため年末調整を提出しているはずです。タックスプランニングの単元では、これらの控除の仕組みや、所得税や住民税等の算出方法を学びます。
給与明細に記載される所得税や住民税がどのような計算のもとで決まったのか理解できるようになるほか、医療費控除などの節税方法を見逃さないスキルも身に着きます。
住宅購入を検討している人に大いに役立つ範囲は不動産の単元です。不動産に関する法令や税金、住宅ローン控除について体系的に学ぶため、住宅購入に際して必要となるお金の目安がわかるほか、税金を低く抑える方法も身に着けることができます。
住宅販売や仲介の不動産会社も、必要資金や税金の説明をしてくれますが、前提となる知識があるかないかでその理解度は大きく変わります。住宅購入を考え始めた段階で、FP3級レベルの知識を持っておくと、あらかじめ購入にかかる総額の見積もりができ、購入時の賢い節税にも活用できるでしょう。
相続は誰にでも起こりうるものですが、家族の中でも少し話題にしにくいテーマです。FP3級の範囲を学ぶと、相続人は誰か、相続税の対象となる資産は何か、相続税がどれくらいかかるのか、といった相続の基本がわかり、将来に備えることができます。
また、贈与についても非課税になる金額や非課税となる特例を学ぶため、親や子どもも含めた資産計画を考えるヒントになります。
それぞれの単元で学習する内容から、FP3級の学びが、どのように日常生活や人生の資産計画に役立つかイメージできたのではないでしょうか。生きる上で必要なお金に関する知識が凝縮された検定であり、応用的・発展的な知識もFP3級の基礎知識があることで理解しやすくなります。
また、FP3級は検定試験であるものの、検定の受験・取得はせず、試験範囲を学習するだけでも人生のお金にまつわる基礎知識を十分に身に着けることができます。その場合は、関心の高い範囲や今の自分に必要な範囲から勉強し、ライフステージに合わせて新たな範囲を学ぶ進め方も効果的です。
マネーリテラシーを高めたい人にとって、FP3級は体系的に効率的に知識を身に着けられる検定です。気になった人は、日本FP協会のホームページや書店にあるFP3級の参考書を見て、学習イメージを掴んでみてください。
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本稿執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意下さい。
出典
*1厚生労働省「平均寿命の推移」
*2金融庁「高校向け 金融経済教育指導教材の公表について」
*3金融庁「高校生のための金融リテラシー講座」
*4日本FP協会「3級FP技能検定 試験要綱」
*5日本FP協会「3級 試験範囲」